「僧侶が冒険終盤で手に入る面積が少ないのに防御力が高い防具をいやいや装備してくれるボイス」 (SE:ノック) ん?どなたですか? (SE:ノック) こんな夜更けに……いったい何の用ですか?(怪訝そうに) (SE:ドアが開く音) あら、勇者様でしたか、どうかしましたか? いくら勇者様でも女性の部屋に突然訪問するなんて……あまり関心しませんね。 プライバシーくらいは守ってほしいものです。 タンスとか平気で漁る勇者様には難しいかもしれませんが…… それで、なにか大切な用事でもあるんでしょうか? 仕方ありませんね、入っていいですよ。 とは言ったものの、一人部屋なのでスペースが……とりあえずベッドに腰掛けてもらっていいですか? 今日は大変でしたね……魔王の気配が近くなり……敵が強くなっているのをヒシヒシと感じます…… マシーン(機械の意味)の魔物なんてこっちが回復している間にニ回攻撃してきましたからね。嫌になっちゃいますね。 しかも前に戦った敵の色違いですよ。 魔王に近づくにつれ徐々に、昔戦った敵の色違いが多くなってますよね、どういう理屈でしょうか? 前に戦った魔物を青くしてこんぼう持たせた魔物いましたよね、どういうことでしょうか?魔王に近ければ近いほどこんぼうが支給されるのでしょうか? それとも支給はされているけれど、魔王城から遠くなるにつれて中抜きされ、届かなくなっているのでしょうか? とにかく、この先、もっと厳しい戦いになっていくわけですから……私も力をつけなければ……ん?どうされましたか? なにやら深刻な表情、やはり勇者様も、今後の冒険になにか思うところがあるのですね……え? ……まさか……そういうことですか……勇者様の気持ち……薄々気がついてましたけど……それでも私にも心の準備ってものが…… (照れてる感じで)つまり勇者様は……私のことが……すっ……好き…… (素に戻って)みたいな話ではないですよね。 なんですかそれ? その手に持ってるやつですよ。 紐みたいなやつ。厳密に言うと紐にちょっと布つけたみたいなやつ、これはなんですか? 荷造りでもするんですか?引っ越しのお手伝いですか? 昔、日雇いで引っ越しのバイトにいったことありましたが、あまりの力の無さに途中で社員さんに帰れって言われたの思い出して悲しくなりました。 仕方無しに牛丼食べて帰りましたよ。 で、その布の部分に名前でも書くんですか? 新しい便利グッズですか?この前行ったなんでも100ゴールドで便利なものが売ってる村ありましたし、そこで購入したのですか?そうそうダイソーの村。 まさかガムテープが100ゴールドで買えるなんてと感動したものです。 え?こっちに渡そうとしないでください、要らないです。要らない。 燃えるゴミならゴミ箱に入れてくださいよ。 まさかとは思いますけど……その紐みたいなやつ、防具じゃないですよね。 力強くうなずかないでくださいよ。 目を輝かせないでください。 薄々気がついてはいましたけど……最近勇者様、怖いですよ。 というか、気持ち悪いです。 で、これが防具だということは分かりましたけど、それをなぜ私に渡すんですか? 冗談ですよね、これを装備しろっていうんですか? おかしいでしょ、守備力ほぼ0でしょ? え?これで守備力高いんですか?どういう理屈ですか? 百歩譲ってこの布が頑丈で敵の攻撃を弾く(はじく)として、おヘソ攻撃されたらどうするんですか?流石に布が無い部分は守れませんよね。 あれですか?布の部分が移動するんですか?お腹攻撃されたら、布部分がスススッって移動してお腹を守ってくれるんですか?じゃあ大切な部分見えちゃいますよね、私ってあれですよ、聖職者だから結構そういうの厳しいですよ。 それで”カキーン”って感じで弾くならもうちょっと面積大きくていいでしょ、なんなら100倍くらいあってもまだ面積、足りないですよ。 渡さないでください、人の話聞いてますか? 端的に言いますね。こんな格好で出歩けません。 なに、目をパチクリさせてるんですか、そりゃそうでしょ。なにこっちが変なこと言った空気にさせようとしてるんですか。 「あれ、おかしいのは私のほうだったかなぁ……じゃあ装備も致し方なし……」とでも言うと思いましたか? あ、これ、説明書がついてますよ。 (SE:ペラッ) (ここからちょっと棒読み)(ここはパチモンの説明書みたいに誤字が多くなっています) 最新版・リピーター90割超え 圧倒的な大満足の声大多数 魔法のピキニ(ビキニじゃなくて”ピ”キニ) この装備は効率よく守る力(ちから)をあげるために作られたです。極めて健全な装備。だと言われた。 これを装備すると守る力が85アップグレードの上昇。 魔物が見とれて攻撃できなくなることある。との奇跡の声。 史上空前の防御力に、迅速に魔物なすすべなし。 (ここまで棒読み) (SE:破る音) え?なんですかこの不自然な説明書。 どこで買ったんですか?絶対なんか変な場所で買ったでしょ。 あ、この前寄ったアマゾーン王国で買ったんじゃないですか? アマゾーン王国は大きい国家が故(ゆえ)結構アレですよ、路地裏で怪しげな商品を安価で売ってたりしますよ。 かくゆう私も、アマゾーン王国で怪しげなモバイル魔力バッテリー買ったんですよね。 そしたら説明書に書かれてた魔力ほど貯めることができないわけですよ、モバイル魔力バッテリーって魔力の入る容量を偽装しててもみんなそれほど気が付かないから、そのまま気づかずに使うケース多いらしいですよ。 って、アマゾーン王国で買ったなら。この装備、安物じゃないですか! 絶対守備力85もないですよ、85って戦士さんが装備してる全身ドラゴンにつつまれたようなめちゃくちゃ頑丈な装備と一緒くらいですよ? そんなわけないじゃないですか! 絶対85も守備力無いですけどここはあると仮定しましょう。 絶対無いですけどね。 まあこれで防御力があがったとします。 上からなにか羽織ることはできますよね。っていうか普通に下着のかわりにできますよね。そのほうが防御力あがりますよね。 この上に布の服とか着れますよね。どうしれこれ単体で着せようとするんですか? えっ、泣いてる…… 泣かないでくださいよ。 勇者様はただただピュアな気持ちで、私の守備力が上がってほしい、その一心で購入してくれたということですか? 本当ですか? この前、魔法使いさんがカギを自由に開ける呪文を覚えた時「(少年ボイス)ねえねえ、いい呪文手に入れたね、なにに使う?なにに使おっか?よかったら開けてほしいカギあるんだけど、どうかな?っていうか僕にも教えて〜!」とかしつこく迫ってましたよね。 絶対何か覗くつもりでしたよね? それに道具屋で姿が消えて透明になる草が売ってたじゃないですか、、あれこっそり多めに買ってましたよね。バレてないと思ったんですか?なんに使うつもりですか?怖すぎますよ、鍵を自由に開けて透明とかもう邪悪すぎますよ。勇者様がやっていいことじゃないでしょ。 タンス漁るあたりも結構ダメだったけど「勇者様だからまあ……」みたいな空気でなんとかなってるんですから。ついに勇者様が透明になって鍵を開けだしたぞって噂になったらもう冒険どころじゃないですよ。 それを踏まえて、改めて聞きますね。 この布、本当にに守備力のことを考えて私に装備させたいんですか? いかがわしいこと考えてませんよね? えっ、また泣いてる…… ま、まあ若くして頑張ってるのは分かりますよ。 その若さでね、冒険は偉いですね。素晴らしいと思います。 あら、素敵な笑顔。 やっぱ勇者様はすごいですね、笑顔が似合います。 昨日は、大きいフォーク持ったやつ倒してましたもんね。 あの大きいフォーク持ったやつ倒せるなんて、偉いですね〜、偉い。 よっ!大きいフォーク持った魔物倒し名人! どうしましたか勇者様、なるほど、なるほど。分かりました。 はい、着ません(投げやりに) この流れならワンチャンいけると思いましたか? ダメです勇者様のやり口は知ってますよ。そうやって無邪気なふりをして魔法使いさんなんてもう……いえ、なんでもありません、もう冒険を始めた頃の魔法使いさんは戻ってこないんだなって……少しさみしくなっただけです。 それに戦士さんだって、冒険の当初は「(勇ましい声)あたいなんかと旅に出たいのかい?ははん、変わり者もいるもんだな!」とか言ってたのに……今じゃ……ううん、なんでもない……なんでもありません……私だけでもしっかりしないと…… 勇者様、いくら守備力があがっても、これを装備することはできません。 そもそも、こんな格好で出歩けるわけないですよね。 こんなん着てたら痴女ですよ、聖職者が痴女って結構洒落になりませんよ。回復魔法とかすんなり出なくなるかもしれませんよ。 回復するにはするけど、回復するたびに口の中が土の味するようになったなぁ……ってなりますよ。 涙をその防具で拭わないでください。 ハンカチ程度しか布の面積が無いって証明してるじゃないですか。 もう……じゃあもったいないんでここで装備するってのはどうですか? 流石にこれを装備して外には行けないですけどここで着るだけなら別にまあ…… 誰かに見られるわけじゃないし…… 勇者様がそれで喜ぶなら…… ってええ!?めっちゃくちゃうなずいてるじゃないですか!? ま、まあ確かにここで装備するくらいなら良いって言いましたけど……でも、それでいいなら、趣旨がおかしくないですか? 守備力が強いから装備しろって言ってたの嘘になりませんか? ……まあ、約束したものは仕方ないですね…… 勇者様そういう人ですし…… でもじゃあ着替えますからあっち向いててくださいね。 (SE:着崩れの音) (こっから少しムードというかおとなしい感じで) ど、どうですか……意外とその……その……悪くないでしょう? さすがにちょっと恥ずかしいですが…… いやその……なんだかこれ装備すると…… あ、こっち来ないでください…… ダメです……その…… 結局こうなるんですね…… 魔法使いさんも戦士さんも…… この手口で……? じゃあその……分かりました……分かりましたから…‥ 今夜は…… やさしくしてくださいね……