■プロローグ (独白風で) 彼氏と彼女。 今の関係になれるまで…私にしては、長〜い我慢の時間だった。 気づいた時には、隣に住んでて、お風呂にも入れば、プール遊びもする、いつも一緒で、泣いたり笑ったり、家族ぐるみで遊びに行ったり、まるで同い年のきょうだいみたい…そんな、人の知らない事まで知ってる仲。 俗称、幼なじみ。 そんな、なぁなぁの間柄から、きちんと恋人になるって、なかなか難しいと思う。 ほら、漫画でも小説でも…ね。 偉大な先輩たちが証明済みってわけ。 どっちからするのが正しい…なんて決めてたら、どっちも言わないまま…それは嫌だったから、私から告白したんだ。 いつも、他の人からの評価は大人しい娘。 そんな私だけど…ちょっと想像してみて…私以外の誰かが、ずっと隣にいて、どんどん知らない先に歩いていってしまう…私はそこから置き去りにされちゃうって思ったら、怖くて悲しくて、叫んでた。 家の二階、窓の向こう、空を挟んだ向かいが、自分たちの部屋なんて、よくある場所から、好きって叫んでた。 そしたら…俺も、なんていうから…言ってくれたから。 私は一生分の勇気つかっちゃったかもしれないから…いつか、そういうのをびしっと見せてくれるのかな。 うーん…いつかの未来で、見せてくれるんだろうか。 む、娘さんを、ごにょごにょ…とかって。 …と、今は風邪で休んでた今日の宿題プリントやらを届けないと。 これはお隣さんの勤め…。 じゃあ私の…彼女としてのものは…。 今日…こんな日に休んじゃって、残念がってそうだけど…私はちょっと嬉しいかな。 (インタフォン鳴らす) (独白終わり、以下、普通に) こんにちはぁ…。 あれ…おばさん出てこない…買い物でも行ったのかな。 (ドアを開ける) 玄関空いてる…お邪魔しまぁす。 田舎って言っても、不用心だなぁ…まぁ…ウチも似たような感じだけど。 (靴脱いであがる) んっ…と…風邪だもんね…自分の部屋、かな。 こういう時は、勝手知ったる間取りで助かるね。 突き当たり、階段を上へっと…。 (廊下をちょっと進み、階段を上がっていく) ■主人公の部屋 (ノック) ねぇ、いる? 起きてるぅ? おーい…。 学校から預かったプリント持ってきたんだけど…おばさんいないから、あがってきたよ。 (返事がある、ドア開ける、室内へ歩み入る) 風邪、どう…って、何…ベッドで寝転んでゲームなんかしてる…調子悪いんじゃないの? え、もう治ったって…風邪ってそんな簡単に治らないよ。 治ったとみせかけて、治りかけが一番注意しなきゃいけない時だよ。 うーん、今日に限って、さぼりってわけじゃないだろうし…あぁ、朝は咳も出てたし、ホントに熱があったんだ…そうかそうか。 じゃあないと、おばさんが休ませてくれるわけないもんね。 この季節だし、寝冷えでもしちゃったのかな…それとも暖房のせいで乾燥しちゃったかなぁ。 加湿器とか、濡れタオル干すとか、対策してる? (ベッドの端に座る) そ、そういえば、今日はさ…。 あ、うん、そうそう、誕生日、だよね。 うん、わかってる、わかってる…おめでとう。 あと、バレンタイン…うん、まぁ学校では結構盛り上がってたけど。 誕生日とバレンタインが一緒なの、そんなに嫌かなぁ…あ、でも確かに…おばさん、小さい頃から一緒にすますからねって、特別に何かあげたりしてなかったね。 まぁ私も学校でのバレンタインとか関係ないし…。 って、何…そんな、わかりやすく落ち込むかなぁ…か、関係ないって言ったのは、その…(語尾弱めにもごもご)もぉ…すぐ拗ねるんだから。 ん〜、じゃあ、その…病み上がりだし、誕生日だし…何かひとつ言う事きいてあげるから。 何か、して欲しい事ある? ケーキとか、そういうのは、お家でいろいろするでしょ。 子どもの頃は、お互いの誕生日に、お家でパーティしてお呼ばれとかしてたけど…当たり前になって薄れちゃってるし…この歳になって、改めてっていうのも…。 な、なんでもいいよ…その…無理なのじゃなかったら。 (少し間) ん…え、み、耳かき…? 私に、耳かきしてもらいたいの? うぅ…なんか変なお願いだなぁ…んん…まぁ、その…いいけど…。 か、彼女に耳かき…だから…うううう…わ、わかった、から。 ■耳かきパート1(左) うん、耳かき、してあげるから。 えっと、耳かき棒は? あ、机の上ね。 (机の上からとる) ん、あった。 じゃあ、その…ど、どうやってすれば…へ、ひ、膝枕! そ、そんないきなりハードルが…ううう…確かに何でもって…わ、わかったよぉ…。 うう…こんな事でどきどきが…あぁ、何でもないから…ええと、私がもっとベッドの端に深く腰掛けて…は、はい…どうぞ…。 (頭をのせられる) んんっ…なんか、髪の毛がくすぐったい…タイツはいててもくすぐったいのっ…うう…もぉ、耳かきするから。 ええと、どっちから…んんっ…もぞもぞ動くから…はいはい、こっちからね。 (耳かき開始) ん、もちろん、だけど…誰かに耳かきするの初めてだから…できるだけじっとしててね…私も慎重に、するから…。 (耳かき音かぶせ、んっなどは漏れる吐息です) んっ…んん…んっ…え、静かすぎるって…もぉ、私だって初めてだから緊張しながらやってるの…まったく…甘えん坊なのか何なのか…はいはい、注文の多い彼氏だなぁ。 んっ…ずっと下向いてると、眼鏡がずれちゃうな…。 直しながらしないと…。 えーと…何か話せばいいのね…うーんと…学校…今日、バレンタインだったから、男子も女子も、みんなすっごいそわそわしてたよ。 んっ、んんっ…って、落ち込まないでよ…(聞こえないくらいの小声で)私なんか相手いなかったんだし…(元に戻す)あ、いや…そうそう、あの二人妖しいって、前に話してたでしょ。 ほら、私の後ろの席の隣同士…そうそう、授業中いつも何かやってるふたり。 今日ね、帰りに偶然見かけて…ん、えっと、あの公園…帰り道の途中にあるやつね。 あそこにふたりで入っていくの見てね…あ、あとなんかつけてないって、偶然見えたの、偶然。 んっ、んんっ…ふぅ…いやまぁ…自転車とめて見ちゃったんだけど…何してたって…ぅう…な、何でもないけど、チョコ、そうチョコみたいな包みを渡してたの! 見つめ合ったり、もじもじしたり、一緒に並んでブランコに座ったり。 見てる私まで、何かどきどきしちゃった…。 そうそう、予想通りだったねぇ…って話。 あー、あぁ…うん…そっか…思い出しちゃった。 うん…私たちがあのふたりの事ウワサしてたみたいに、私たちも…結構前に…そうそう、もっと小さい頃、学校でいろいろ言われたよねぇ。 毎日一緒に帰ってる、好きなものは何でも知ってる、休みの日は一緒に遊んでる…お隣同士で家族ぐるみなら、全部当たり前の事だったのに。 んんっ、んっ…あ、そうそう、お弁当箱が色違いで同じ柄っていうのもあった。 あれなんか、お母さんたちが一緒に買い物行って、これでいいやって選んできたんだもん、私たちにはどーしようもないのにね。 別のクラスになった時、まだ私が友達って感じの子もいない時に、教科書借りに行って…お礼の手紙でもってかいてたら、それが見つかっちゃってさ…ほんと、何でもないただのありがとうってだけだったのに、ラブレターだぁって大騒ぎになって…幼さって、何でもない事でも一大事になっちゃうもんだよね。 ほんと、どーでもいいことに、なんであんなに敏感だったんだろ…それとも、あれが子ども特有の天才的感性? そうそう、間違った方向だけど♪ あー、うーんと…あの時は…その…ごめんね。 手紙のとき! もぉ…。 んんっ、んっ…私、気が弱いから、何も言えなくて…みんなにっていうか、主に男子だけど、やいやい言われて、泣いちゃって、何も出来なくて…それなのに、ひとりで頑張ってくれて。 どうして、あんなに頑張れたんだろって、よく考えてたなぁ。 え…す、好きだったからって…んんっ? そ、そんな小さな時から、私のこと…ちゃんと…んんっ!(咳払い) て、手元がくるいそうだったじゃない。 んもぉ…はい、こっちの耳はおしまい。 話ながらでも何とかなった…はぁ、ふぅ。 え、仕上げ? み、耳をふ〜ってする、のか…うぅ…確かにお母さんにもしてもらってた…。 わ、わかったから…はぁ、ふぅ…(深呼吸をして意を決す) (耳を吹く) (少し戸惑いがちに、強めに)ふぅ〜〜〜、ふぅ〜、ふぅ〜〜〜。 え、強いって…もぉ。 (弱めに)ふぅ〜、ふぅ〜、ふぅうう〜、ふぅ〜。 今度は弱いって…もぉ…ソムリエみたい。 (優しく、奥まで届くように)ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜♪ ふぅ〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜♪ ふぅ〜〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜♪ え、もう少し…仕方ないなぁ。 ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜♪ ふぅ〜、ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜〜、ふぅ〜♪ はい、こっちはおしまい。 耳かえよっか。 うん♪ ■耳かきパート2(右) んっ、じゃあ顔の向き変えて…あ、もぉ、ぐりぐりしないでよ。 頭の座りがって、んん…。 はい、もぉいいでしょ、ちゃんと耳が見えるし。 じゃあこっちも始めるから。 んっ、んんっ…そうそう…バレンタインに水差す感じで、先生が言ってたけど、テスト期間近いし、それが終わったら進路も考えろって。 んっ、んんっ…進路かぁ…早いなぁ…ついこの前、文系か理系かって選んだばっかりな気がしてたのに、修学旅行も終わったし、文化祭もとっくに終わったし。 季節って、ぎゅんぎゅん過ぎていっちゃうね。 あと、楽しい事って、何にしてもすぐ終わっちゃう気がする。 うん…学年あがったら、もう受験だしね…色々考えないと…私はこのまま、地元の国立狙いで行きたいなぁって思ってるけど、そっちは? んっ…んんっ…同じ国立で、理系。 だよね…うーん…でもダメだった時は…理系大学って、私立は地元にはないよ…それに理系って、実験とかですっごく忙しいんじゃない? 近くの私立も落ちちゃったら、どうするのよぉ…もっと遠くに行くの? それとも、浪人するの? んっ…それは、その時って…もぉ…確かに地元じゃなくても、近くなら通えない距離じゃないだろうけど。 一緒にいる時間は、今より減るし…うん…そりゃね、日本と外国、月と地球、みたいな距離ってわけじゃないし…うん…他の人と違って、帰る場所が、隣だもんね。 それに…今まで他の人たちに比べたら、私たち、一緒の時間ばっかりだったもんね…少しは…我慢できるかな。 ななな、泣いてなんかないもん! んんっ(眼鏡を直す)んっ…すれ違いが怖い…確かに、少しは、ね。 けど、このご時世、スマフォひとつあれば、どこでもつながれるよね。 すごいよねぇ…お母さんたちの時代なんて、何だっけ…ぽけ、べる? とかいう、数字しか送れないやつだったんだって。 今なんて、無料でビデオ通話がいつでもどこでもできちゃう。 あ、ちょっと怖い人はスマフォのGPSで相手の位置を探知してるとか行ってたし。 な、なにぶるるって…じっとしててよ、耳が怪我するよ。 んんっ…んっ…んーと、大学だって、真面目に授業出て、サークルは入るかわかんないけど、バイトはすると思うし、そうやって時間をきちきち使ってたら…その…よそ見するヒマはないかなって。 わ、私は大丈夫だよっ。 その、自分で言うのも何だけど、大人しいし、それほどかわいくないし、スタイルも控えめだし…目立つタイプじゃないから…危ない所へ近寄らなければ、そんな。 何もないって、言えるから。 でもそっちは、さ…その…かっこいいし…人と話すのだって得意だし…コンパとか行っちゃったら、モテるだろうなぁって。 んっ…そういうトコへいけば…大学みたいに広い世界だったら、私たちの小さな頃からの色々なんて、関係ないっ…飛び越えちゃうっ…みたいな人に出会う事だってあるかなって。 うううう、不安、なんだよぉ、少しはっ。 私はいっぱい勇気だして、こうなれて…それがなくなっちゃうのが怖いの。 だって、心って、一番不安定なものでしょ…形にはならないし、ほら、理系的にいったら、物質として存在しないもの。 合理的論理的、ではないでしょ。 そもそも恋愛が脳信号のエラーって、そんな話じゃないの。 さっき、私のこと、昔から好きって言ってたじゃない…それもただのエラー? ただの電気的反応だっただけ? それはそれって、むむむ、言ってる事が矛盾しまくり! そんな事で理系学生になれるのかな…もぉ…耳かき奥まで突っ込んじゃおっか。 あ〜、嘘うそ…そんな危ないことしないから。 鼓膜は破れても再生するっていうしね、うふふ…って、あーだから、嘘だって。 動かないでっ。 んっ、んんっ…こんな風にさ…色んな事を、隠さずに、もじもじせずに、全部話せるの…こんな私でいられる場所、ここしかないんだから。 ここ、だけなんだよ。 うー…専用膝枕じゃないの! ホントに、奥までごりっといっちゃおうか…。 はいはい、そんなにおそれないでよ…私、怖い娘じゃないんだから。 知ってるでしょ、それくらい…。 んっ…んんっ…まぁでも…ちょっと嫉妬深い…よくいえばヤキモチやき、かもね。 そのほうがいいの? 変なの…普通はさ、そういうの重いとか言われて、嫌われそうだけど。 重いついでに、私はさ…大学とか、すぐそばの未来だけじゃなくって、もっともっと先…何があっても、ふたりでいるっていう未来を見てるよ。 だからどうして欲しいとかはないよ…これは私の覚悟、みたいなものだから。 今まで一緒だったんだから、これからだって…きっとそれが叶うって、私は信じてる。 だから一緒に、信じてて…。 ね、激オモだよ? いいのかなぁ、いいのかなぁ…。 そのほうが深い愛みたいって…もぉ、もぉ…もぉ…そういう事…言うんだから。 んっ…だから、私は、ここにいたい…ずっと居たいって思っちゃうんだよ…。 そっか…そっか…一番の勇気じゃなくても、小さな勇気をたくさんくれるから…私…。 んっ…はい、耳かきはもう大丈夫! はいはい…こっちも仕上げね。 (耳を吹く、緊張はないので自然に) ふぅ〜〜〜、ふぅ〜、ふぅうう〜♪ くすぐったくないかな。 ふぅ〜〜、ふぅ、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜♪ ふふ、面白い…ぽかんって口あけちゃって。 ふぅ〜〜、ふぅ、ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜〜♪ ふぅ〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜♪ ふぅ〜〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜〜、ふぅ〜〜♪ そんなに口あけてると、虫がはいっちゃうよ? ふぅ〜、ふぅ〜〜、ふぅ、ふぅ〜〜♪ ふぅ〜、ふぅ〜、ふぅ〜ふぅ、ふぅ〜〜♪ はいはい、最後に…ふぅ〜〜、ふぅ〜〜、ふぅ〜〜〜♪ ふぅ〜、ふぅ〜、ふぅ〜〜〜♪ ん、初めてにしては、うまくできたかな? ■エピローグ はい、耳かき終わったんだから、膝枕もおしまいなの。 んんっ、もうちょっとじゃないのぉ、はいはい、甘えん坊さん。 (体を起こしてもらう) ん、初めてだったし、ちょっと疲れちゃった…。 はいはい、頭外してねぇ。 だるかったらまた横になってればいいよ。 んしょ…あ、起きて並んで座るんだ。 ん…顔色は、もう大丈夫かな…(鼻を鳴らす)くんくん、すんすん…ちょっと汗のにおいするね…。 いや、くさいとかじゃなくって、やっぱり熱があったのは本当だったんだなぁって、思ったの。 ほら、熱の匂い、みたいなのあるじゃない。 ちゃんと後で着替えたほうがいいよ。 わーっ、あとで、あとでいいから! 今脱ごうとしないでっ! すぐ調子に乗る…そりゃ上半身とか見慣れてるけど、それは小さい時のお風呂やプールとか、そういう当たり前の時であって…い、今は…違うのっ。 あと、もう熱がないなら、シャワーは大丈夫らしいから、入ってもいいかもね。 ご飯もいっぱい食べてさ…いいなぁおばさんの料理おいしいもんなぁ。 え、食べていけって…そんないきなりだと、おばさんに悪いよ…準備とか一人分増えたら大変なんだよ? あ、カレーなんだ…じゃあその…およばれしちゃおっかな…。 う、うんっ(咳払い)! んぐんぐ(口ごもる)…え、風邪じゃないよ。 ん…んーと…(もじもじ)その…バレンタインだけど。 あ、関係ないって言ったのは、違うの、違うんだって…私には…今日学校で渡す相手がいないから…関係ないって言ったの。 わからないって…ホントに、理系の大学に入れるのかな…順序だてて考えたらわかるでしょ! 私の渡す相手…渡したい相手が学校休んでたからでしょ! だから…(バッグを漁る)こ、これ! ちょ、チョコレートだよ…バレンタインの…。 お母さんに手伝ってもらって、頑張ったんだから…残さずに、食べてよね。 とかして固めるだけだけど、それがすっごく難しいんだよ。 理系大学目指してるんだから、わかるでしょ…凝固点とか融点とか、分離とか…そうそう、温度管理がとっても難しいの。 ほら、それに…チョコって栄養満点だから、調子悪いのも、すぐになおっちゃうと思うし。 わ、ちょっと、そんな大声でありがとうとか叫ばないで! もぉ…そんな嬉しい、とか…むむ…(俯きでぼそりと)こっちが嬉しいじゃないかぁ。 よかった…頑張って、バレンタイン、手作りしてみて…。 ん、これで私のバレンタインは、やっと完了…かな。 休んでても、バレンタイン参加できてよかったね♪ 誕生日…誕生日は、耳かき、してあげたじゃない…拗ねないの。 もぉ…その…耳かきくらいなら、誕生日とか、特別な日じゃなくても、して欲しい時に、いつでもしてあげるから…。 あ、また、そんな大声で、やったぁとか言わないでよ…もぉ、恥ずかしいなぁ…(小声で)嬉しいけど…。 喜んでもらえたのは嬉しいけど…私も誕生日はまた別にって思ってたから…うーん。 (階下で玄関が開く音がする) あ、おばさん帰ってきた…私、お出迎えしよっと。 (立ち上がる) んー…誕生日…いっぱいくれた勇気のお礼…。 うん。 (腰を折って、素早く触れるだけのキス) んちゅ…。 耳かきも特別…だけど、もっと特別な誕生日プレゼント。 これからも、よろしくね♪ (ドアを開けて足早に出て行く) (了)