;ガチャ 「……あら、見間違えかしら。まだ朝の七時前なのにいつもは寝ているまだ寝ている弟が私の部屋に来たわ」 「きっと夢ね。まったく、起きたつもりがまだ寝ていたなんて残念な話ね。でも、早く気づけて良かったわ。一日の大半を過ごして夢だと気づいたら徒労感も酷いでしょうしね、じゃあ、お休みなさい」 「……ふふ、冗談よ。本当に寝るわけ無いでしょう? おはよう。でも、私が起こしに行くより早く起きてくるなんて本当に珍しいわね。何かあったの?」 「……トイレで目が醒めた、ね。そんな理由だとは思わなかったわ……それでそんなに威張られても、褒めるような事じゃないでしょう、それ。せいぜい、その年になっておねしょをしなくて良かったわね、としか言いようが無いわ……まるで小学生ね、これじゃ」 「残念そうにされてもね、本当に褒めるような事じゃないし……ああ、はいはい、判ったわよ、もう。本当、子供なんだから……ほら、こっち来て、隣に座りなさい」 「ん……よく起きれたわね。えらいえらい。明日からもちゃんと朝は起きるのよ? そうじゃないとその内置いて行っちゃうんだから」 「……はい、これくらいで良い? 一応、付き合ってあげたけど早起きしただけでこんな風に褒められるっていうのは逆に切なくなったり、情けなったりしないの?」 「……そう、それくらいじゃ動じないのね。相変わらずの面の皮が厚いというか、マイペースというか……まぁ、良いわ」 「……で、何よ。さっきからジロジロ見てきて……何か顔についてる?」 「……朝のパジャマ姿が珍しいから、ね。確かにあなたが起きるときには私は着替えている事が多いものね…………皮肉のつもりで言ったんだけど、やっぱり通じないのね、もう」 「良いわ。ちょっとつついて落ち込ませようと思ったけど、あなたがそれくらいで落ち込む訳が無い物ね……だから、褒めているわけじゃないわよ?」 「とりあえず、そろそろ着替えから部屋から出て行ってくれないかしら? 早起きしたんだから、あなたは先にシャワーでも浴びてきたらどう?」 「……嫌だ、って……そんなに力強く言われるのは少し予想外だったわね。とはいえ、嫌だと言われてもね。あなたの目の前で着替えろとでも言うの?」 「……こくこく頷かないでくれる? そんなの、するわけ無いじゃない。お父さんとお母さん、まだ家に居るのよ?」 「あ、こら……急に抱きしめてくるのは、どういう了見? ん、ぁ……手、どこ触ってるのよ」 「ん、ちゅ……そのままキス、ね……まったく、どうしたのよ。早起きしたせいでまだ寝ぼけているの?」 「……お目覚めのキス、ね。あなたからそんな言葉を聞くなんてね……ああ、違ったわ。聞くのは何度もあったけど、大概は私にして欲しい、というお願いだったわよね?」 「あなたが『明日は姉ちゃんにおめざのキスするから!』と意気込んだ事は何度かあるけど本当に起きる事が出来たのは最初の一回だけだったわね。それ以外は結局、私が起こすまで寝てて……顔を背けないで、ちゃんと話を聞きなさい?」 「まぁ、どういう理由かは知らないけどそれが出来るだけの時間の余裕をあなたが作れたのは褒めてあげるわ。ちゃんと起きて偉いわね……さっきも言ったけど、皮肉なんだからそんなに嬉しそうな顔しないでくれる?」 「ふぅ……別に私だってあなたとこうする事は……嫌じゃないわ。でも、TPO、時と場所と場合を考えてやって貰いたいわ」 「忘れているかもしれないけど、一応言っておくわ。私とあなたは実の姉と弟、つまり姉弟(きょうだい)よ? 別にその事を悔いるつもりも、嘆くつもりもないけど……お父さんと母さんに言うにはまだ早いという事くらいは理解しているわよね?」 「……そう。ちゃんと判っているなら良いの。つまり、こういう状況を見られる訳にはいかないの……なんでって……それで二人に警戒されたら、二人きりになりづらいじゃない……嬉しそうに抱きつく前に、話を聞いて欲しいんだけど?」 「そう……そうよ。判っているはずよね、何度も話した事だもの。なら、すぐに私を離して自分の部屋に戻って学校に行く準備でもして……ん、ちゅるぅ……ちゅ……だから、話を聞きなさいってば……」 「……抱きしめていると安心する、ね。私はあなたの安心毛布じゃないんだから、そんな事を言われてもね……別に嫌な気はしないけど、せめて私も力を抜ける状況で言って欲しい物だわ」 「さ、もう良いでしょう? これくらいにしておきなさい、あんまりしつこいと怒るわよ?」 「……え、ちょっと……ん、ちゅるぅ……ちゅ……こら、手を押さえつけて……きゃっ」 「……ベッドに押し倒して、手を押さえ込むとか、本当にどういうつもり? 今なら冗談で済ませてあげるけど……あ、んぅ……」 「脇腹、撫でるの……やめなさい……気持ち良い訳じゃないわ、ただくすぐったいんだから……ん、ふふ……馬鹿、楽しくてじゃなくて、あなたがくすぐるから笑ってしまうだけで……ん、ちゅるぅ……ちゅ、ちゅぅ……んぁ、は……ふ、は……」 「……随分、積極的ね。ただ、どういうつもりかちゃんと教えて貰おうかしら……いきなり抱きついてきたり、キスしてきたり、人を押し倒したり……事と次第によっては、本当に怒るわよ?」 「着替えを手伝う? 結構よ、別に手伝って貰わなく経って、それくらい自分でも出来るわ……あ、こら、人の話を聞きなさ……ん、ちゅ……強引に、また……本当に、やめなさ……んぅ、ん……ちゅ、ちゅぅ……ちゅぱ、ちゅ……ちゅぅ……」 ;次のシーンは繋いでそのまま