先、輩。 もう、三時になりましたよ……? ちゅっ。先輩が離してくれないから。こんな時間になっちゃいました……。 う。おっしゃる通りです! おねだりしていたのはわたしの方なんですが……一度言ってみたかったんです! だって、すごいラブラブカップルみたいじゃないですか!? こんなに……何回も何回もしちゃうなんて。 わたしたち、えっちですね……。 はい。わたしが先輩のこと、えっちにしちゃいました! うふふ。夢だったんです。夜と朝。それどころか昼と夕方の境目もわからなくなるくらい、ただ、お互いのことだけを見つめて過ごす……! 漫画みたいじゃないですか。 本当ですか? やっぱり、一度は憧れますよね。こういうの……! あ。そうですね! ここまでお腹鳴らなかったの、奇跡。ご飯にしましょう! 後あの、先輩。わたし、今の季節すごく好きな道があって。 ご飯食べたら、ちょっとお散歩しませんか? ……はあ。涼しい。風が気持ちいいですね。先輩。 はい。お気づきでしたか! この道。この季節になると、色んなおうちで、色とりどりのバラが咲くんです。 それを、一本の線でつなげて。一人でこっそり『バラの道』って呼んでるんです。 ……いつかお付き合いする人ができたら、この道を一緒に歩いて。 『きれいだね』って言うのが夢だったんです。 『ふたりで、バラの咲く道をお散歩する』。 『してみたいことリスト』あんなに色々書いたんですけど。 本当は。リストには書かなかったこれが、一番の夢でした……。 でも、ちょっと前までは、それは無理かなって思ってました! わたし、先輩に会うまでは。 自分からクラスメートに話しかけるのもできない弱虫だったから……。 仮に恋人ができたとしても『お花なんて興味ないよ』って言われるのが怖くて。きっと言えなくて。ずっと夢のままで終わるんだろうって。そう思ってたんです。 でも違いました。わたしは今、先輩とここにいる……。 先輩。わたしが今、ここに立っていられるのは。 色んなことに勇気を出せたのは、全部あなたのお陰です。 あなたがいたから、わたしはここまで歩いて来ることができました。 先輩は、わたしの光です。 先輩と出会った頃。毎日何も楽しいことがなくて。ただ時間が過ぎるのを待ってたわたしは。お店のあの席で、あなたの背中をただ見つめていました。 どうしたら、あなたのそばに行くことができるのか。どうしたら、あなたと肩を並べるような人間になれるのか……それが、辛い時、苦しい時。わたしが頑張るための道しるべでした。 そして、今はこう思っています。ずっと、あなたと一緒にいられる人になりたい……。 先輩。この花の咲く道を。おうちから、駅まで続くこの道を、ずっとわたしと一緒に歩いてくれませんか。 おばあちゃんになっても、同じものを見て『きれいだね』『すてきだね』って言える。そんな二人になりたいです。 わたし、先輩のこと、絶対幸せにします。背は、伸びないかもしれないんですけど……今は残念なところも、将来的には全部直して、きっと釣り合う恋人になってみせます。 だから、あっ……。 先輩、あの。人が見てます。 というかここは人のおうちの前です。いっ……いいんですか……? はい……! ありがとうございます。先輩がいいなら、わたしももう少し、このまま……。 うっ……ぐすっ……せんぱーい……嬉しいですぅ。 ひ『人前で、いちゃいちゃする』。絶対無理でしょと思って書けなかったんですけど、これも夢だったんです……。ありがとうございます……。 はい。『してみたいことリスト』ほんとに書き漏れだらけです。 はい! しましょう! 帰ったら一緒に……これからの話……したいです。 ……ぐす。それに、この道も、まだ続きがあるんです。 わたし……あの角の家に咲いてるピンクのバラが、一番好きなんです。 先輩。いきましょう。わたし達、ずっと。ずーっと一緒です! 【1565文字】