【酒場での出会い】 新人冒険者となった「あなた」は依頼を受けるために依頼が張り出される酒場に向かっていた。 酒場についたあなたが、数多くある依頼からどれを受けたらいいのかと迷っていると、他の冒険者の女たちからは避けられ、男からは下品な声をかけられ慣れ慣れしく触られながらそれおを笑顔でかわしている一人の少女が目に入った。 身軽さを大事にしているのか、金属ではなく革で出来た鎧を着ている。 その割には、腰には先が大きく膨らんでいる金属の棍棒であるメイスや液体の入った瓶を幾つも下げていた しかし、何よりも目を引いたのは彼女の長い……ランプの光を受けて輝く銀の髪。 背丈は貴方の胸ほどの大きさだろうか? 透き通るような青い目や、女性的な豊かさに乏しい体付きなのもあって儚げな美しさを感じさせた。 少女の容姿もあり、なんともなしに気にかけていると……ふと気付いた時には掲示板から依頼が消えていた。 残ったのはスライム退治などの初心者向けのものばかり。 分相応だし仕方ない、とそれに手を伸ばした所で……銀の少女と手が重なる。 「なに……貴方? 私に何か用なの? 悪いけど冒険者の仕事の時はソッチの話は受けるつもりないの……諦めて貰えないかしら?」 突然の言葉にあなたが何を言っているのかわからないと不思議そうにしていると、訝しげに少女は貴方の装備を見てふいに気づく 「あら? 貴方……新人の冒険者なのかしら? ひょっとして私のこと……知らない?」 正直にあなたがこくんと頷くと、少女は 「自意識過剰だったかしら……」 と小さく呟き、恥ずかしそうに顔を伏せる。 一人俯く少女に、あなたは手を差し伸べた。 分よりは先輩の様子もある彼女と一緒に、”冒険”がしてみたいと、ふとそう思ったのだ 先ほどの様子から少し気になっていた相手だった……というのもあるかもしれない。 自 手を差し伸べられた少女はそれに驚き、途端訝しげに顔を顰め警戒するように距離を取る。 「……あなた、本当に私のこと知らないの?」 理由はさっぱり分からないが、どうやら少女は自分がある種の有名人だと思っているようだ。 新人であるあなたには理由がさっぱり分からず、素直に頷いて見せた。 少女は平然と頷く様子に怪しみながら、 「……スライム狩りは多少痛い目を我慢すれば新人一人でもやれないことはないわよ? わざわざ二人でやるようなものには思えないけれど?」 残っていた張り紙の1枚を取り、あなたに見せながら首を傾げる。 それを聞いて、あなたは 「気が乗らなければ別に一人でもいい。 ただ、じぶんは初心者で出来れば誰かの助言が欲しいし貴女も……一人だったようだから」 と告げた その言葉に少女は驚いたような顔をしてあなたの顔をじっと見つめた。 暫くそうしていてから、ふっと彼女の小さな唇の端が綻び、笑った 「つまりモンスターを一度も倒したことのない本当の意味で”童貞"だから、 自分のことも心配だし、同じ立場に見えた私も心配だったからって?」 思わぬ言葉を聞いたとばかりに、くすくすと少女楽しそうに笑い続ける。 内心を見透かされたような形のあなたは、すこしばかり恥ずかしくなり耳を赤くしそっぽを向いた。 そうしてひとしきり笑って満足したのか、少女はこちらをみて一つ頷き、 「いいわ、一緒にいきましょう! ”冒険者”として期待されるのって、珍しいしね 一緒に行ってあげるわ、新人くん♪」 そう笑い、今度は少女があなたに向かって手を差し伸ばした。 「私は……そう、ね 白猫……えぇ、白猫って呼んで頂戴」 差し出された小さな手を握り返しながら、あなたが獣人のような動物みたいな尻尾や耳などないのに何故猫…っと不思議な顔をする。 その様子に、少女がまたくすりと笑う。 「そのうち嫌でも分かるわよ……きっとすぐにね」 肩を竦める笑う少女の顔に何故か暗い陰が過ぎったような気がして……それが妙に気に掛かった。