【数日後~冒険者でにぎわっている酒場】 日頃のスライム退治にも慣れ、生活出来る程度にはお金を稼げている貴方。 白猫とは報酬は半分で分けているが、何故か彼女の方が余裕があるようで時々ご飯を奢って貰ったりする日々を過ごしている。 2日や3日に1度、少女に用事があるとスライム狩りを休む日もあったが、そういった日は訓練や休日としながらも貴方の日常は順調に回っていた。 この日も白猫と一仕事を終え、一緒に夕飯を貴方はとっていた。 ……だが、食事内容は彼女の方が一品多く食事内容もより美味しそうだった。 同じ仕事の同じ報酬のはずなのに、何となく不平等だと感じて頬を膨らませていると白猫がそれに気付く。 「ん、どうかしたの不満そうな顔してるけど? ははぁん……? 成る程、同じ稼ぎのはずなおに私の方がお金の周りがいいのが不思議なの?」 頷く貴方に少女は、少しだけ困ったような顔をする。 どう答えるべきか、一瞬悩んだ様子でそれから思い直したように貴方の顔を見つめてくる。 「まぁ私の方が長く冒険者している訳だし、ほかにも色々お金稼ぎの方法がね……っと 貴方だって、スライムが出易い場所の情報とか安全な狩り方とか私から聞いてやってるんだし他の新人よりは随分恩恵はある方なのよ?」 そう言ってくすり彼女が笑う。 言われなくても確かに随分世話になっているなと思う。 冒険者になっても、危険の割にうまく稼げず結局消えていく人間が出るのは良くある話だと聞いたことがある。 彼女から色々レクチャーを受けている自分は、それを考えればかなり恵まれているのは間違いないだろう。 だがそれを考えるとお互いに作業量は同じになるようスライム狩りをしているとはいえ、彼女の情報や経験による利益の方が多くなりすぎるのではないだろうか? もっと自分の作業量を増やすべきなのではないかと思った貴方が彼女にそう提案すると、少女は小さく苦笑し首を振った。 「いいわよ、そんなの。 私は……貴方がいるだけで、結構救われている所あるしね」 そんな言葉を返されて、覚えがとんと沸いてこず貴方は首を傾げた。 どのへんがそうなのか、を聞いてみようと彼女に声をかけようとした時……離れた席から男が近づいてきた。 装備からして、貴方よりも経験のある冒険者のように見えた。 野性味のあるというには鋭すぎる……敵視するように視線を貴方に向けながら、白猫に近づいていく。 「おう、白猫……。。 おめぇ今晩どうなんだよ? 最近、妙に新人くんと組んでてつき合いが悪いって声上がってるぞ? 何だ、新しい男がそんなに具合が良かったのか、あ~ん?」 男の様子は明らかに友好的とは言えなかった。 ほんの一瞬……白猫の眉が上がったような気がしたが、すぐに困ったような曖昧な笑みの中に隠れ見えなくなってしまう。 「あー……あはは、ごめんなさい♪ この子は別に関係ないわよ、ちょっと最近疲れ気味だったから……ほら! 私、冒険者として活動出来るの好きだから……それでちょっと張り切っちゃってて♪」 申し訳なさそうに、自分が悪いと白猫が頭を下げる。 男はそれを見ながらふんっと鼻で笑い、彼女が下手に出ていることに優越感でも感じているようだった。 明らかに白猫を下に見ている様子が、どうにも貴方には気に入らなかった。 「ならいいけどよ……今晩、いけんだろ? お前が回数減らしてるせいで、他の連中も我慢出来ねぇって奴が出て来てるんだ 場は用意してやるからよ、お詫びとしてつき合うよ……なぁ?」 拒否は許さないとばかりに男は白猫に詰め寄る。 よく見れば男の背後、少し離れた場所に何人か男たちが立ちこちらを見ている。 仲間……なのだろうか? その近くに女性もいるが、そのどちらともがあなたを睨むか白猫を睨むか。 様子を伺うようにして険しい目付きをしていた。 白猫も様子を察したのだろう。 少しだけ考えるような間をおいて、男の言葉に頷いた。 「えぇ……分かったわ 私の都合で勝手に休んでしまっていたようなものだし喜んで、受けさせてもらいます♪」 にっこりと、自分から進んでと言った様子で頷く姿を見て男たちは歓声をあげる。 「はは、そうこなくっちゃ! さすが白猫だぜ! 今まで色々世話してきてやったかいがあるってもんだ! なぁっ!! ……で、そのガキはどうすんだよ?」 下卑た口調で笑った男の顔が、突然貴方の方を向く。 状況が分からず戸惑う貴方に、白猫がさっと間に入り込む男の視界を遮る。 「彼は関係ないでしょ? あくまで私と貴方達とのお楽しみなんだから♪ それとも、なぁに? 数日空いただけで、こんな新人に見られてないと楽しめないようにでもなっちゃったの?」 白猫の口から、貴方を蔑むかのような言葉が聞こえて来た。 驚き彼女を見返して…その横顔を見て分かってしまった、彼女が緊張しているということに。 理由は分からないがあなたは今、彼女に庇われているのだろう……。 男はその様子を不愉快そうに見ていたが、白猫が腕にしなだれ掛かかりその小さな膨らみを押し付けるようにすると相好を崩し、納得したのか席を離れていった。 白猫の了承を得たと聞き男達は湧き上がっていたが、彼らの近くにいた女達が最後まで険しい顔をしていた。 男が去り、気まずい沈黙が貴方と白猫の間に広がる。 白猫はそれを誤魔化すように妙に明るい声で貴方に話し掛けてきた。 「……そういう訳だから、ちょっと用事をすませてくるわ♪ ひょっとしたら明日は、休みになるかもだけど心配しないで? 明後日にはすぐ冒険者として、また動けると思うから一緒に出かけましょ♪」 男達が聞こえていないのを確認し、白猫はあなたを見て微笑む。 その笑顔はとても優しそうでいつも通りの頼れる彼女という顔をしていた。 だがあなたには彼女が見せたその笑顔が張り付けただけの感情を薄く薄く引き伸ばし、顔に貼り付けた嘘の顔に思えて仕方がなかったのであった……。