【草原2人の冒険シーン】 飛びかかってくるスライムを、少女はメイスで迎え打つ。 小さな拳くらいの大きなの半透明の塊が、地面から飛び上がり襲ってくるのを身を捻って白猫がかわす。 狙いを外し地面に降りた所を、頭に向かってメイスを振りかぶりズドンと一発ぶち込むのだ。 狙うべき時に狙い、それ以外の時は避けるのに集中する……白猫曰く、それが狩りのコツとのことだ。 時間はかかるし効率的とは言えないのだろうが、その作業には手慣れた安定感があった。 あなたが感心していると、少女がこちらを振り返り 「何をぼーっと見てるのっ! ほら、パーティーくんだんだからあなたもやるの! 要領は私を見て、分かったでしょう?」 振り返り告げられた少女の言葉にあなた頷き、買ったばかりの中古の剣をを構えスライムを待つ。 ……数瞬、風と草の揺れる音だけが聞こえる空間が広がる。 次の瞬間、がさりっという音があなたの耳に届いた。 攻撃がくる! そう思った貴方がとっさに横に飛び……どごんっ!! スライムが跳ねるよりも前に動いてしまったあなたに、方向を変え見事に飛びかかってきたスライムに見事にぶつけられてしまう。 勢いで尻餅をつきそうになるが、どうにか堪え体勢を立て直す。 また飛びかかろうと構えるスライムに向かい必死に剣を振り下ろし、攻撃を当てる。 ぶちゅんっ! という、弾力を持って跳ね返そうとする感触と鈍くなりながら刃が入っていく感触を味わいながら抜かせまいと必死に刃を潜り込ませる。 「ぴぎゅっ! ぴぎぎぎぎぎぃぃぃ!?」 慌てるスライムを力任せにかき回し、ぐりぐりと左右に必死に揺らしてスライムのコアに当たるよう必死に抉り回していると、 ようやくコアにぶつかったのかスライムは動きを止め水が崩れるかのようにぐじゅりと地面にその体を崩していった。 「ふ、ふふ……くすくす、ご……ご苦労様♪」 汗だらけになって格闘していた様子をずっと眺めていたのだろう。 銀の髪を風に揺らしながら少女は愉快そうにこちらを見て笑っていた。 汗や泥にまみれて格闘していた貴方は、荒い息を吐きながらそんなに笑わなくてもいいだろうにっと、不機嫌そうな顔をしてしまう。 実際、彼女ほどスマートに出来なかったとしえも最初の狩りでスライムを倒せたのだ。 褒められてもいいぐらいではないだろうか、そんな疑問が頭に沸いてくる。 あなたの不満が伝わったのだろう。 まだ愉快そうに顔をほころばせていたが少女が貴方の下にやってきて、顔についた泥を腰のポーチから布を取り出し拭ってくれる。 ハンカチが触れる瞬間土の匂いに混じって、少女の花のような香りがふっと鼻を擽っていくのを感じた。 「ふふ、ごめん……ごめんなさいってば♪ 笑っちゃいけないのは分かってたんだけど、あなたがすごい必死だったから……ふふふ♪」 これでも笑いを堪えているのだろうか? 手を口元に当てて、口の端をひくひくさせながら少女が言う。 「でも、うん♪ 初めてにしてはよくやった方よ? しっかり倒して見せたんだし、お疲れさま……よく頑張ったわね」 少女は布で泥を落としながら、まだ息の荒いあなたに向かい労いの言葉を掛けてくれた。 なんだか姉に初めて手伝いを成功させ、誉めているかのようなムズムズした気持ちになり貴方はは顔を赤くしそっぽを向く。 少女は、それを見てまたくすりと笑い、 「さっきのは動き出しが早すぎたわね もうちょっと、スライムの姿をしっかり見て跳ねるって思ってから動いても十分間に合うわ 次は、もう少ししっかり見てから動いてみなさい?」 っと、先ほどの反省を教えてくれた。 言われてみればと確かにその通りだ。 あなたが頷き返すと、少女は貴方の様子に嬉しそうにに笑顔を返す。 「じゃあ、スライムのコアを回収して次にいきましょう? 今度はまた私がやるから、タイミングとかもう一度よく見ておいて」 白猫の言葉に貴方が頷くと、少女はまたメイスを構え少し離れた場所で警戒に入る。 こうして、交互に繰り返しながらその日はスライムを20匹ほどは狩った。 結局、彼女の方が多く狩る結果になってしまったが交代で休みながらだからいつもよりずっと長く狩れたと白猫は喜んでいた。 精算の結果は1日の生活費としては節約してぎりぎり及第点といったお金にしかならなかったが、初日だということを考えれば上々だろう。 夕暮れの中用事があるからと清算を済ませそそくさと別れようとした白猫に向かいあなたが、 「また、明日っ!」 そう少女に言葉をかけた時の驚いたような、意外そうな顔をしていたのが……妙に印象的に残った。 暫く返事はなかったがゆっくりと歩き出しながら背中越しに、 「……また、暇だったらね?」 そう返しくれた少女の声に少し明るい色が混じっている気がした。 気のせいかもしれないが、貴方をそれを信じて満足そうに頷くと一人帰路に着いたのであった。