;バシャバシャと泳いでいる水音 「ぷぁ、ふぁーっ! ん、はぁ……はぁ、ふぁ……んぅ、はぁ……んっふっふっふっ……よーやく到着したみたいだね? はいはい、何をどう言ってもあたしの勝ちは勝ち。インストラクターだと思って甘く見てたでしょ、ジュースは君のおごりだからね」 「んっふっふっふっ……さっきの事もあるし、ちょっとはお灸を据えないとね。ねぇねぇ、どんな気持ち? 女の人に負けちゃうってどんな気持ち? ……こ、こういう時だけ年下っぽくするの、反則!」 「ま、からかうのはこれくらいにしてぇ……実際、タイムは結構縮んでると思うよ? うん、これだけのペースって結構すごいと思う……もう、褒めてるんだから、素直に受け取りなさいっての」 「まーね、目標に聞いてたタイムにはさすがにねぇ……てか、なんでこんな無茶なタイムなの? そりゃ、実現不可能って訳じゃないだろうけど、かなり本気でやらないと難しいと思うよ? うちの選抜候補の子と変わらないタイムだしね」 「……へ? えーっと彼って確か選抜候補の子よね? なんでどう思うか気になるの? え、えーっと……わ、判ったわよ、ちゃんと答えるって……ただ、その……人に言わないでよ。あたしだってインストラクターって立場があるからさ」 「……しょーじき、ちょっと苦手かな。なんていうか、その……年下だし、生徒さんだからこっちもある程度は大目に見るけど、おふざけが過ぎるっていうか、胸とか触られた事もあるし……嫌いとまでは言わないけど、苦手かな……」 「あ、でも、水泳に関してだけは別よ? 本気でやってるのも判るしね。実際、次の選抜コースは多分彼に決まりでしょうね……ま、しょうがないわよ。こればっかりは実力勝負の世界だからね」 「それにほら……大山先生居るでしょ? そうそう、選手コースのね……む、ムキムキマッチョってあだ名だったんだ……え、えーと、あの人が気に入っちゃっててね……あははは、良い人なんだけどねぇ。水泳以外の事はあんまりってタイプだから……そ、それでもすごい人なのよ? 実際、あの人の指導でオリンピック候補にまでなった子もいるしね」 ;↑の矢印がある部分は不自然に声をうわずらせる感じで 「……え゛……い、いや、その……そ、そうよぉ↑? その、き、キスとかっていうのは、あの人とし……シタンデスヨ?」 「(ああああ、なんで意地を張っちゃうの、ていうかなんでそういう事聞くの!? うわ、わ……なんかすっごく不機嫌になってるし……あああ、なんで訂正しなかったの、あたし……うう……馬鹿だ……意地っ張りの大馬鹿ものだぁ……)」 「そ、そんな事は良いの! とにかく、目標タイムにはまだまだ遠いんだから、本気で狙うんならもっと練習しないと……え……あ、う……ま、また? その……ふん、良いわよ? ただ、さっきみたいなタイムで勝とうなんて、無理に決まってるけどねっ」 「(ま、またご褒美の話が出た……もしかして……じゃないよね、きっとさっきみたいに……えっちな事、言い出すつもりだ)」 「ハンデ? ……さすがに25m先行してとか言ったら無茶だけど……あたしはバタフライで君が自由形? うん、良いわよ」 「ええ、良いって言ったの。まぁ、普通にやったんじゃ勝ち目ないから勝負にすらならないし……というか、君の平均記録、あたしのバタフライの平均記録より遅いしね」 「ふふふ、まー、良い勝負になるんじゃない? あたしも本気出して楽しめるしね。まぁ? それでもあたしの勝ちだろうけどねっ」 「んふふふ、ちなみに君が負けたら練習後のジュースとセットでたこ焼きでも買って貰うから……ま、それくらいで勘弁してあげるから安心なさい、ふふ……あたしが負けたら? ふ、ふん、そんな事ありえないし、その時は何でもしてあげるわよっ」 「それじゃ、行くよ……タイマーの準備よし、と……ホイッスルは省略ね……teke your mark……」 ;プーというブザー音 ;飛び込み音 ;泳ぐ音 ;フェードアウト