シーン2・経緯 「はい、はい……判りました。それでは失礼いたします……大島君、少し良いかな?」 【恵理】 「二年前の私は企画営業を担当していました。うちの会社は社員数20名になるかどうかという、小規模なソフトウェア会社です。主にセキュリティ管理のノウハウや支援ツール開発。その他にはデータ整理の手伝い等を担当しています。決して大きくはありませんし、大儲け……とは言えませんが、それなりに上手くやっていたと思います」 「悪いんだけど、今から言う資料と過去開発物を集めてくれるかな? うん、そう。梶原さんの所に持って行かなきゃいけないから。後、打ち合わせ用の資料を送るから、それを4部書き出しておいて。大至急ね」 【恵理】 「当時、旦那は私の部下でした。新卒として入ってきた彼は私よりも年下で、最初は初めての部下であるという事もあって緊張していましたが彼自身、素直な性格でしたし、よく懐いてくれました。その事もあってか私にとってはまるで弟が出来た様な気持ちでした」 「それと……うん、会社が終わったらいつものところでね……ふふ、うん。私も楽しみにしてる」 【恵理】 「そんな彼と男と女として、深い仲へとなるのにはそれほど時間がかからず……彼が入社してから一年もする頃には私達は付き合ってました。当然、社内恋愛ですのでそれほどおおっぴらには出来ませんでしたが、それでも私にとっては一番充実していた時期でした」 「うん、それじゃ纏まったら持ってきて、よろしくね……さてと。良し、こっちも資料、用意しないとね」 【恵理】 「また、私と彼の二人で『ある』会社のセキュリティ管理も任されていました。その日は新しいプログラムの導入と、その説明の為に担当の会社へ出向して説明をする予定でした」 「…………ん、これで良いかな……後は抜けが無いかを見て……はい? あ、田原部長……何でしょうか?」 【恵理】 「そんな忙しい時に声を欠けてきたのは田原部長でした。私はこの人が苦手でした……年齢は当時36歳で、奥さんと離婚したばかりの時期でした。別に離婚した人がどうこう、なんて言うつもりはありませんが……その前から、彼は私に対して何かとちょっかいを出してきていたのです」 「はい、今日はこれから梶原さんの所へ説明をしに……いえ、申し訳ないですが今日は先約がありまして……申し訳ありません。はい、またの機会によろしくお願いいたします」 【恵理】 「まだその時は午前中。そんな時に終業後に飲みに行かないか、と誘われました……彼だけを責めるつもりはありません。私も直前に似たようなことをしていた訳ですから……ですが、彼は何度も私に対してそういうプライベートな付き合いを要求してきました」 「……はぁ……どうしよう……」 【恵理】 「当時、最大の悩みはその事でした。旦那が入社する前に一度だけ誘われるままについていった事がありました。その時は私がそれほどお酒が強くないと知った上で、田原部長は私に散々お酒を飲ませようとしてきました……潰れる前に同僚の女の子に連絡をして来て貰ったので事なきを得たのですが、そうしていなかったらどうなっていたか……あまり考えたくはありません」 「……あ、ご、ごめん……うん、大丈夫。資料はもう纏め終わってるから、今すぐそっちに送るわ。ちょっと待っててね」 【恵理】 「旦那に相談するという事は考えられませんでした。彼はとても素直で純粋で……逆に言えば、そんな事を言えば自分の立場が悪くなるのも構わず、部長に文句を言いに行こうとしたでしょうから……ええ、旦那は良い人なんです。とても……」 【恵那】 「ただ、大なり小なり会社内での人間関係で悩むのは当たり前です。私の知り合いにはそれこそ、不倫で身を破綻させてしまった人も居ましたから……それに比べれば何て事は無い。そもそも、私がしっかりと要求を断れば良いだけ……そう、思っていたんです」 ;シーン転換 ;2〜3秒間 シーン3・豹変 ;二週間ほど時間経過しています 「え……はい、はい……判りました。すぐに向かいますっ」 【恵理】 「問題が起きたのはそれから二週間後でした。追加のプログラムを入れ、ようやく少し楽になった矢先でした。相手の会社からの電話がありました」 「田原部長、すいませんが私、これから社外に出てきますので……はい、申し訳ありませんが後の事はよろしくお願いいたします」 【恵理】 「トラブルが起き、早急に相手の所へ向かわなければならないため、田原部長に後を任せて私は一人で会社を出ました……旦那はその時、ようやく休みを取れるようになったので、休日出勤の分も含めて私が休むように彼に言っていたんです。付き合っているとはいえ、後輩ですから……それに彼が物凄く頑張っていたことはそばにいた私が一番よく判ってましたし」 「お疲れ様です、梶原さん……はい、大変申し訳ありませんでした……早急に復旧しますので……それで状況はどうなっているのでしょうか?」 【恵理】 「相手の会社につき、状況を改めて詳しく聞いてみると、社内のデータが流出してしまったという事でした。幸い、それは古いデータだったおかげでそれほどの問題にはならなかった物の、システム的な穴があるのですぐに対処して欲しいという事でした」 【恵理】 「その日はほとんど一日をかけて、その場でプログラムを確認し、修正していました。最初はどうしてこんな事が起こるのか? デバッグの段階では一切起きなかった様な状況に私は困惑していましたが……」 「……え……あれ……え?」 【恵理】 「そうなった状況、起きた現象を聞きながらもしかして、と思った場所を見てみると……納品前、私が確認した時には問題無かった部分に問題がありました……ええ、プログラムの一部が変更されていました」 「……あ、はい。すぐに……すぐに、直しますので……」 【恵理】 「意味が判らず固まっていましたが、いつまでもそうしている訳にはいきません。気づいた場所を直し、他にも同様に変わった場所が無いかを確認していきます。変えられていた場所は二カ所……そこは全て、後輩の彼が担当していた場所でした」 「……はい、ご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした……はい、後日改めて今回の事を整理し、提出させていただきますので……はい、はい……申し訳ありません……」 【恵理】 「なんとか応急処置が終わり、平謝りをしながら、私はどうしてこうなったのかと考えていました。おかしいんです、だって私も確認した場所で、その時は問題無く動いていたのに……普通に考えればわざわざ違う動きをするように……しかも、本来の目的とは別の動きになるように弄る訳がありません」 【恵理】 「……ただ、私は一つだけ……ある種の疑惑を抱えていました。もしも、誰かが故意にこの事を起こしたとしたら……? それは誰になら可能だろうか、と考えると……自然と、浮かび上がる人間が居ました……私の直属の上司でもある田原部長ですよ」 【恵理】 「そう思う理由は有ります。まず、そのプログラムの最終確認をし、相手に渡したのは田原部長であること。そして、田原部長は私と彼の付き合いを知っていましたから……嫌がらせ目的ではないかと思ったんです」 「…………お疲れ様です。はい、今戻ったところです……いえ、なんとか無事に修正はしてきましたが……梶原さんも凄くお怒りで……いえ、なんとか契約は続けて貰えるらしいのですが……はい、判っています。始末書は私が書きますので」 【恵理】 「会社に戻ると田原部長が居ました。既に夜の九時を回り、何事も無ければ普段はみんなが返っている様な時間に……私の中で疑惑はどんどん大きくなります。私は簡易報告をしながら、部長に釘を刺すという意味も兼ねて言ったんです」 「……ですから、誰かが故意にプログラムを改変したとしか……いえ、それは……確かに証拠はありません。ただ、私の持っている開発中のバックアップと照らし合せて貰えればすぐに判ると思うんです」 【恵理】 「当然、プログラムの開発時には複数のバックアップを取ります。いつデータが破損したり、そもそも作業をしているPCが壊れるかもしれませんから……だから、今回の事はただのプログラムの管理ミスではなく、何らかの意図がある誰かの仕業だと言いたかったんです。ですが……」 「……ちょっと待ってください。私が……彼を庇うためにそんな事をするというんですか!」 【恵理】 「ただ、そんな私に部長は『恋人の立場が悪くならないために、わざわざバックアップに細工をするなんて暇だねぇ』と言ってきたのです……確かに私と旦那は当時、既に付き合っていました。ただ、仕事の評価でそんな私情を交えた評価をした事は一度も……ありません」 「そんな事する訳無いじゃないですか! いくら部長でも、そんな事を言われる覚えは……っ……な、何をするんですかっ!」 【恵理】 「部長が立ち上がり、私の腕を掴みました。別に運動が得意なわけでも無いし、格闘技をしている訳でもありません。一度握られれば、力尽くで振り払うことは出来ません。部長は私を引き寄せ、耳元で囁きました。『俺がどうにかしてやろうか?』と……」 「……意味が判りません。どうにかって……どういう事ですか……っ」 【恵理】 「部長の言い分は単純でした。元々、梶原さんがうちの会社を選んでくれたのは、部長と同じ大学だったので、その縁からの採用でした。縁故採用、コネと言われれば当然、そうです……だから、俺が梶原を説得して、今回の事は大事にならないようにしてやると言い出したんです」 「それは……助かりますが……でも、本当に誰かがプログラムを弄ったんです! だから、きちんと調べて今回の事を調べて貰えれば……何ですって?」 【恵理】 「次に言われた言葉に、私は一瞬……何を言われたのか判りませんでした。ただ、言われた事を理解した瞬間、目の前がカー、っとなって……頭が熱くなっていました」 「……私が……私が今までやってきたのは……あなたのおかげだと言うんですかっ!!」 【恵理】 「今までだって、俺が回した仕事でやってきたんだ、お前は俺の言うとおりにすれば良いんだよ……それが彼の言い分でした。確かに……私は田原部長の部下ですから、ある意味間違ってません……間違ってませんが……別に何もしてなかった訳じゃない……っ」 「ちょ、やめ……やだ、やめてください……っ! 離して、離してぇっ!!」 【恵理】 「怒りを爆発させるよりも先に、部長が私を押し倒してきました。叫んでも、誰も居ません。暴れようとしても、手足を押さえ込まれて何も出来ません……何をされるか、その時には既に想像がついていました」 ;ちょっと長いのでここでファイル切り。シーン的には繋がっているので、間は1秒程度(連続で聞いて違和感が無い程度) 繧キ繝シ繝ウ�シ偵�サ邨檎キッ 縲後�ッ縺�縲√�ッ縺�窶ヲ窶ヲ蛻、繧翫∪縺励◆縲ゅ◎繧後〒縺ッ螟ア遉シ縺�縺溘@縺セ縺吮�ヲ窶ヲ螟ァ蟲カ蜷帙�∝ー代@濶ッ縺�縺九↑�シ溘�� 縲先�オ逅�縲� 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