ネコのミーちゃんは生まれつき後ろの足を動かすことができませんでした。 なので、いつもミーちゃんは後ろ足をひきずりながら歩いていました。 ジャンプをすることもできません。 みんなと一緒に走り回ることもできません。 他のネコたちはそんなミーちゃんを見て、いつもからかっていました。 「お前なんで後ろ足ひきずってんだよ」 「ミーちゃんの歩き方、変なの」 「君、ネコのくせにジャンプもできないの?」 そんなことを言われる度にミーちゃんの心は傷つき、泣いていました。 ミーちゃんはいつも一人ぼっちでした。 ミーちゃんも一人でいることにいつの間にか慣れていました。 一人でいる方が楽だと、そう思うようになりました。 でも、友達と楽しそうに遊んでいる他の子を見てると、やっぱり羨ましくて、少し寂しい気持ちになりました。 ミーちゃんは誰とも話すことなく、毎日一人で過ごしていました。 ある日、ミーちゃんはいつものように後ろ足をひきずりながら歩いていました。 「おい、お前。ちょっと待て」 上の方から呼び止める声が聞こえてきました。ミーちゃんが声のした方を見てみると、そこには1匹の黒いネコがいました。 「お前か。変な歩き方をするネコってのは」 そう言うとその黒いネコはミーちゃんの目の前にヒョイっと飛び降りてきました。 「俺の名前はクロ。お前は?」 「ミー」 「ミーか。お前なんでそんな歩き方してんだよ」 クロは不思議そうな顔でミーちゃんに訊きました。 「動かせないの……」 悲しそうな顔でミーちゃんは答えます。 「なんで動かせないんだよ」 「分からない」 「ふ〜ん、そっか。まぁいいや、そんなことどうでも。俺、今遊び相手がいなくて暇なんだよ。お前ちょっと付き合え」 「えっ?でも、私後ろ足動かせないんだよ?」 「だからなんだよ。そんなの関係ねぇよ」 ミーちゃんは驚きました。そんなこと言われたのは初めてだったからです。 「私友達もいないし、みんなみたいにジャンプもできないし、速く走ることもできないよ?それでもいいの?」 「いいって言ってんだろ!しつこいな。それに、友達がいないなら作りゃいいじゃねぇか」 「無理だよ、そんなの……」 「そんなのやってみなきゃ分かんねぇだろ!やる前から諦めんな!」 「じゃあ、君は私と友達になってくれる?」 「あぁいいぜ、なってやるよ。今日から俺とお前は友達だ。な?楽勝だろ?」 ミーちゃんにも初めて友達ができました。ミーちゃんは嬉しくて、嬉しくて堪らず、その場で飛び上がりたい気分でした。 それからというもの、ミーちゃんは積極的に自分から話すようになり、友達も少しずつですが増えていきました。もちろんクロも一緒です。 そして、いつの間にか他のネコたちもミーちゃんの後ろ足のことを気にすることもなくなり、ミーちゃんは沢山の仲間たちに囲まれながらいつまでも幸せに暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし。