〜隠しおまけ小説〜 【第0話 実の妹の描く未来】  勝算なんてなかった。  だけどいま告白しないと、もう二度とそんなチャンスは訪れないような予感がしていて……  気づけばわたしは、焦燥感に背中を押されるようにして、最初の一歩を踏み出していた。  周囲を見回す。  放課後の屋上に、ほかの生徒の姿はない。  今から、この場所に……彼は来る。  わたしは彼と、ふたりきりになる。  そしてわたしは、彼――  ――血の繋がったお兄ちゃんに、愛の告白をするのだ。  早まる鼓動をどうにかしようと、深呼吸を繰り返す。  けれど、鼓動は収まるどころか、さらに激しく早鐘を打ち始める。  無理だ。もう一人の自分に、そう言われているみたいだった。  実の妹の告白なんて受けてもらえるわけがない。  兄妹関係に亀裂が入って、それで終わりだ。わたしには想像がつかないような、もっとひどいことになる可能性だってある。  …………それでも。  それでもわたしは、前に進むことを選ぶ。  ほんのわずかな可能性にも、必死に縋りつく。  お兄ちゃんと二人で幸せになる未来を、諦めたくないから。  ふいに、蝶番の軋む音が聞こえた。  ……もう後戻りはできない。覚悟を決めて、顔をあげる。  屋上の鉄扉が、ゆっくりと開かれた――。 (Track01に続く)