教会を訪れた途端、有無を言わせず懺悔室へと連れ込まれてしまった。 「しぃっ、イイコですからお静かに」 後ろから抱きすくめられ、耳元に囁かれる声に身体が震えてしまう。 「もうすぐ迷える子羊が、罪を告白したいとやってきますから」 「!?」 そう言われ慌てて振り解こうにも、身動き一つとれなかった。 懺悔室は薄暗く、仰ぎ見た神父様の表情が余計に読み取れない。 解るのは……その目が全く笑っておらず、底知れない闇を湛えているということだった。 何かに対して、怒っているのが伝わってくる。 「ふぅ……。あなたという人は、本当に罪作りな恋人だ」 「罪……って? わたしが、何……。」 言い返そうとしたが、コツコツと靴音が近づいてくるのが聞こえて、声を飲みこむ。 懺悔室は小部屋二つが隣り合い、仕切られている。小窓があるが布で隔てられ、お互いの顔が見えることは無い。 それでもわたしが、居合わせていい場所ではない。 あの嵐の日、狂おしいほどの衝動を抑えきれず、神父様を頼った事が思い出される。 途惑っているうちに扉が軋んだ音を立てて開き、閉まった。間近に感じる人の気配に、鼓動が跳ね上がる。 どうしよう。もう逃げ出せそうもない。ならば気配を殺して、やり過ごすしかない。もし気付かれでもしたら、一体どうなってしまうのか。 「神のいつくしみに信頼して、あなたの罪を告白してください」 神父様はいつものように、滑らかに促した。声だけ聴いていれば、心からの慈愛が込められていると、信じて疑わない事だろう。 ふいに背後から回された腕が緩んだ。同時に、声に負けないくらいの労りを見せて、胸から腰へと撫でられる。 「!?」 驚いて声を出してしまわぬよう、自らの口元を両手で押さえつける。たやすくブラウスのボタンが外されて、胸元が肌蹴る。 冷たい空気と一緒に滑り込んできた、大きな左手のひらに乳房をすくうように包まれた。 神父様の指が敏感な乳首をつまむ。優しく、でも、容赦なく捏ね上げられ、主張し始めた先端をからかうように、幾度も弄ばれる。 (あっ……いやぁ! そこ……っ、声がでちゃう……ダメっ! つ、爪立てちゃ、ダメぇ) 涙を滲ませながら止めさせるために、首を左右に振って見せた。 「さあ、どうぞ告白を。神はいかなる時も御そばにいて下さいます」 神父様はわたしの懇願など物ともせず、小窓越しの向こう部屋へ語りかけ、告解を進めて行く。 微かに聞こえてくる声は、年若い男性のようだった。思ったよりも声はくぐもって聞こえ、誰かを特定するのは難しく思えた。 それでも狭い村内、知人である可能性は高い。 わたしの焦りなど伝わっているだろうに、神父様はなおも執拗に追いつめてくる。 (あっ……んんっ、舐められるのよりも……刺激が強いよぉ) 時おり、イタズラを仕掛けてくるみたいに、きゅうっと抓られると体中を快感が駆け巡る。じんじんと熱を持って痺れて、ムズ痒い乳首を……神父様の舌でからみつくように、たっぷりの唾液で慰めて欲しい。いつものように、と身体が訴え出す。 それを証明するかのように、中心部が熱く火照ってたまらない。 わたしを見透かすように微かに笑って、今度は左手でスカートをまくりあげて、下履きの中にまで侵入してきた。すでに湿り始めていた蜜口を探し当てた中指が、蜜液をからめるようにしながら、脾肉を行き交う。 下肢に力が入らない……。がくがくと震えながら、太もも同士を擦り合せて耐える。 結果、指を深く銜え込むハメになり、自らおねだりしたも同然だった。 意識の向こう側で、男性の告白は続いている。どうやら想い人がいるのだが、どうしてよいか解らず、抑えがたい衝動だけが募って行くという。 罪というよりは、悩み相談に近いようだった。 かちゃりと音がして、神父様が十字架を手にしたのだと知る。 「そう、そうですか。想いは全て神に告白し、心の平穏を祈りましょう」 (ひっ……!) 神父らしく信者に声をかけて促しながら、あろうことか十字架を手にした右手も、同じように下肢へと入ってきた。 (あっ……! あっ、そんな……!) 信仰の証でもあるはずの十字架が、はしたなく蜜を生み出す下肢にあてこまれた。 左手で脾肉をかき分けながら、十字架と蜜を馴染ませるように、ぴったりと当てられる。 それを加減しながら、神父様はゆっくりとスライドさせ始めた。 (あっ……そこ、ダメぇ……こすっちゃ、いやぁ、イッちゃう) 密着した十字架の上部が蕾を、下部が蜜口をと交互に行き交う。フチが擦れながら引っかかって、背徳感のつきまとう快感を生み出してゆく。 身をのけぞらせれば、再び乳首も摘みあげられた。 (ああ……ああっ、もう、もう……。) 伝う体液のぬめりも手伝って、時おり十字架の下端が蜜口へとめり込んだ。 その度に、腰がビクつくのが止められない。 (お願い……早く、早く……終わって) 告解とこの甘い責め苦のどちらをそう望むのか、区別もつかないまま羞恥に耐えてきたが、もう限界だ。 あられもない嬌声を上げてしまわぬように、手で押さえつけながら唇を噛みしめる。 「――あなたの罪の告白は聞き届けられました。神はあなたに平穏な心を授けて下さるでしょう、アーメン。さあ、最後に一緒に祈りの言葉を捧げましょう。父と聖霊の御名において……。」 向こう側も、祈りの言葉に続く。 淀みなく祈り続ける神父様の手の動きが、全て止まった。 (ふぁっ!?) 気を抜いた次の瞬間、張りつめたモノをヒップに押し当てられていた。 怒張は蜜口をノックしつつも、貫かれる事は無かった。もどかしさのあまり、本能的にヒップを突きだしても、はぐらかされてしまう。 まるでこの勤めが終わるまでは、お預けだとでもいうように。ただワレメに密着させながら、悩ましく腰を押し当てられるだけでは、彼を求める気持ちが昂るだけだった。 蜜を溢れさせながら、疼く身体を持て余して涙がこぼれる。 やがて祈りの言葉は止み、向こう側から礼を述べ、扉の軋む音がした。靴音が遠ざかる。 終わったのだ。 「あっ……はあっ、はぁっ、っはぁ……。んんっ、はぁ、ああん」 押さえていた手を放す。お預けをくったままの甘美さに、呼吸は乱れたままで、甘ったるい悲鳴も続いた。 「あ……や、神父様、もう……、もう、いやなの」 後ろから抱きすくめられたまま、耳元で呟かれる。 「困りましたね、淫らな我が君。あなたの色香は男達を魅了し、虜にしてしまう。難とも悩ましい事態で私も気が抜けやしない」 「えっ?」 「あの哀れな獣の、想いを寄せる獲物は誰か。私には解ってしまう。ああ、忌々しい」 子羊ではなく、ケダモノと蔑むように吐き捨てる。本性を露わにしたルカは容赦がない。 背後に寄り添うのは温かな闇で、視界の端に大きな翼が見えた。 その途端、全身を得も言われぬ滑らかさに包まれる。大きな羽根が小刻みにさざめき合い、体中を愛撫してくるのだ。 さながら全身に、媚薬を塗り込められたかのよう……。ざわめくような快感に押し上げられ、わたしは彼が欲しくて欲しくて、気が狂いそうだった。 「あっ……、あっ……ん! も……もう、神父さ……ルカ」 「うん? はぁっ、告白を聞いただろう? 私の大事な恋人に……こういうイヤラシイ事をしたくて堪らないと。自らの雄で突き上げて、あなたをぐちゃぐちゃにしてやりたいと。あのような男達が後を絶たず、全く油断ならない。あなたも、よくよく行動には気をつけて?」 「あっ……ん、もう、わかったから……! 気を、付けるからぁ……ルカ、ルカぁ」 よくわからないまま泣きじゃくり、彼に約束する。 「そう、イイコだ。……イイコには、ご褒美をあげないとね」 ルカは優しく宥めながら、わたしの上半身をベンチに預けさせる。腰は強く引き寄せられたままで、ヒップを突き出す格好になった。 とても恥ずかしい。 反射的に身を引こうとするわたしに、ルカの雄芯が逃すまいと入り込んできた。 「っ……あっん! あっ! あっ……、あぁっ、大っ…きいよぉ」 蜜の手助けがあっても、その質量は慣れることが出来ない。ルカが馴染ませながら押し広げ、一気に奥まで突き上げてくる。 また一気に腰を引かれては、リズミカルに繰り返される度、肉同士のぶつかり合う音が響く。 「ああんっ! ルカ、ルカぁ……そんなにパンパン、しないでぇ」 ご褒美というよりは、まるでお仕置きを受けているような気がしてくる。 「どうして? こんなに……っ、うぅん、よく締まって、気持ちよさそうなのに……あっ、んん、いいっ……さあ、もっと。ほら一緒に……。」 「ああんっ! ルカ、ルカぁ……イクぅ、イッちゃう、もう――!」 熱い飛沫を胎内に浴び、絶頂のあまり身体が痙攣しだす。再び抱き起され、ルカの翼の中に閉じ込められた。 また新しい欲望が湧き上がってくる。 ルカがわたしを淫らな君と呼ぶのなら、喜んで……わたしは闇に身を任せよう。 薄れゆく意識の中で、ルカの口づけを受け入れた。