;//////// ;Track0 タイトルコールとこの音源の楽しみ方 ;//////// ;ナレーション(タイトルコール) ///;環境音 川のせせらぎの音 ;9 「あやかし郷愁譚。コロポックル パロポロ!」 「こんにちわ、かな? こんばんわ? いま話してるのは、パロポロ。 コロポックルのパロポロだよ。 へへっ、今日は、この音源を聞いてくれてありがとね」 「一番最初のこのトラックは、音源の解説をするためのトラックなんだ。 したっけ、物語だけを楽しみたい人は飛ばしてくれてもかまわないべさ」 「どうする? 飛ばす? 飛ばすんだったら、次のトラック。 Track1から聞いてほしいな。 そうじゃないなら……」 「(呼吸音)」 「へっへー! 解説から聞いてくれるんだ。 お客さん、いい人間なんだねー。 したっけ、パロポロもがんばって解説するべさ」 「この音源は、バイノーラルの耳かき・安眠音声っていうやつなんだって。 バイノーラルっていうのは、立体音響っていう意味」 「ヘッドホンとかイヤホンで聞くと、 パロポロの声やまわりの音なんかが、まるでその場にいるように、聞こえてくるんだってさ」 「ね? 今、川の音聞こえてるかい? 聞こえない? したっけ、パロポロ、ちょと静かにしてみるね」 「(呼吸音)」 「――今度は聞こえたべさ。 茂伸川(ものべのがわ)の流れの音。 パロポロのお店、『いやしどころ ひやしや』は、 親水公園のすぐ近くにたってるから。 窓あけとくと、よく聞こえるのさ」 「で、立体音響っていうのは―― ええと、いま、どんな環境でパロポロの声、聞いてくれてる?」 「もしスピーカーなら、ヘッドホンとかイヤホンとかの準備してもらえる? パロポロ、準備の間まっててあげるからさー」 「(呼吸音)」 「♪もーいーかい?」 「もう大丈夫? したっけ、試すべさ。 お客さんがちゃあんと、ヘッドホンつけてるかどうか」 ;3 接近囁き 「み ぎ み み」 ;1 「ふふっ、おどろいたしょや。 したっけ今度は」 :7 「ひだりみみ!」 「えへへっ、 こういうふうに、音がしている場所を感じることができるのが、立体音響っていうんだって。 ハイテクだよねー。すごいよねー」 「あ、聞こえてくるの、右左あってた? あってなかったら入れ替えてね。 パロポロ、気づいてないふりしたげるからさ」 「……(呼吸音)――ん! オッケーなら、次の準備にうつるべさ。 今度は、解説!」 「音源の舞台になるのは、『茂伸(ものべの)』。 パロポロみたいなあやかしたちと、お客さんみたいな人間たちとが共存している、山の深くの隠れ里」 「パロポロにはあっつすぎるのが欠点だけど―― へっへ――ものべのにも、“ピリカカムイ”―― “よいカミサマ”はいるもんなんだね」 「あつさに弱いコロポックルでもすごしやすい素敵な場所、 パロポロのために用意してくれたんだー」 「そこが、ここ。『いやしどころ・ひやしや』。 パロポロのお店でおうちで―― きっと、これからお客さんが訪ねてきてくれるところ」 「どんなひやしとどんないやしが待っているかは―― へへへっ! 来てもらってのお楽しみ!」 「でね? 来てくれたら、きっとリラックスしてねむくなっちゃうって思うからさぁ。 くらいところで、横になりながら聞いてもらえたらうれしいな」 「したっけ、そろそろ解説はおしまい! ひとまずは、ここでさようなら」 「けど、Track1で。ユカラ――おはなしの中で。 またすぐ、もういっかいあえるから。 へへへっ、パロポロ、準備して待ってるべさ」 「したっけねー! またあとで」 ;環境音FO ;//////// ;Track1:いやしどころひやしや(イントロダクション) ;//////// :環境音 FI 川のせせらぎ :SE 鳥の声 :SE 砂利道を歩く足音、男一人 ;SE 足音止まる ;SE 木のドアノッカーを鳴らす ;SE 木戸開く ;9(低いところから) 「はーい――っと、初めてみる顔……だよね? お客さん、でいいのかな?」 「あ。やっぱりはじめましてだね。 ふふふっ、きょろきょろしなくていいよ。 下だよ、下。もっと低いとこを見て」 「そーだよ、ここここ!  へへっ、パロポロがあんまりちっちゃくっておどろいたかい?」 ;9 通常の高さ 「あ」 「……しゃがみこんで、目線をあわせてくれるだなんて。 お客さん、やさしい人間なんだね。 えへへ、パロポロ、なんだかくすぐったいけど、うれしいや」 「ええと――うん! とにかく、はじめましてだね! 『いやしどころ ひやしや』へようこそ。 このお店のあるじのパロポロだよ。 お客さんは、どうやってここにやってきたの?」 「……旅をしていて? 偶然にここにたどりついて? ふんふん…… いやしどころって見えたから、いやしてもらおうって ――なるほどねー」 「“偶然”にここ、この茂伸にやってきたなら、 それはきっと、偶然じゃないべさ。 きっと、この土地のカムイに導かれたんだよ」 「ん? あ、カムイっていうのは、カミ様のこと。 この土地、茂伸にはね、 結構な力をもってるピリカカムイ――良いカミ様がいるんだ」 「だから、こんなふうに。 お客さんとパロポロみたいに、 人間とあやかしが、仲良くお話できてるの。 他の土地では、こんなことないでしょ、絶対」 「って! 旅疲れでいやしどころに来てるお客さんに、 立ち話――しゃがみ話? させちゃっちゃ、 いやしどころのあるじ失格もいいとこだよね。 ええと、立って? それで、あがって?」 ;1 (低いところ) 「したっけ、ここに立って、目をつむって? いまね、パロポロがお客さんのこと、 いやしやすくするから」 「(深く息を吸い込む)」 ;ダミーヘッドマイクまわりぐるりまわりこみながら ;1→8でだんだん高さ、セリフの速度を上げていく。 ;8で、通常の高さ ;1 「ぽんぽん」 ;2 「ぽんぽん」 ;3 「ぽんぽん」 ;4 「ぽんぽん」 ;5 「ぽんぽん」 ;6 「ぽんぽん」 ;7 「ぽんぽん〜〜っ」 ;8 「ポンポンアイヌっ!」 ;SE? 魔法エフェクト系? ;1 (通常の高さ) 「(呼吸音)」 「うん、上出来でしょ! お客さん、もう目をあけていいよぉ」 「ひゃっ!?」 「もう、急にびっくりした声だすから、 パロポロまでびっくりしちゃったよ〜 けど、へへへっ! 大成功だね〜!」 「え? 違う違う。違うべさ! パロポロが人間サイズにおっきくなったんじゃなくって―― お客さん、まわり、ぐるーって見回してみて?」 「あははっ! そうそう、そうだよー。 お客さんの方が縮んだの。 パロポロ、この術だけは使えるからさぁ」 「え? …… あー、ちょっと説明たりなかったかー。 不安にさせちゃって、ごめんねぇ」 「けどさ、危ないことも怖いこともなーんもないから。 まずは落ち着いて――あ、そうだ」 「ね? そうしたら落ち着くために、深呼吸しよう? パロポロと一緒に、ね?」 「えへへー、ありがと。 したっけいくよー、まずはすってー (息を長く吸い込む)」 「なーがくゆっくりはいてー (息を長く吐く)」 「もういっかい、すってー (長く吸う)」 「はいてー (長く吐く)」 「(呼吸音)」 「へへっ、落ち着いたみたいだねー。 慌てさせちゃて、悪かったさぁ―― え? ……あー、うん! そこのところはもちろんだいじょぶさぁ」 「パロポロ、いつでもお客さんのこと、もとのおっきさに戻せるよ? けど、せっかくだから、いやじゃなければ 『いやしどころ ひやしさ』を、たっぷり楽しんでほしいべさ」 「うんうん。そーそー。 そーゆーこと。 ここの本当のいやしとひやしを楽しんでもらうには、 ちっちゃくなってもらってるほうが、ずーっといいのさ」 「え? ほんと! へへへっ、ありがと! したっけパロポロがんばって、 お客さんのことゆっくりたっぽり、いやしてひやしてあげるねー」 「え? 『癒やされるのが歓迎だけど、冷やされるってのがよくわからない?』 ふふーん、わからないならためしてみるべさ!」 「最初に服、ぬいでもらって平気? あはは、ならよかった。 そしたら、下着だけになってくれる?」 「……あれ? どしたの? 脱がないの?? え? 『向こう向いててほしい』って、なして?」 「よくわからないけど――うん。もちろんそうするさ。 お客さんの頼みだものね。パロポロ、むこうむくね?」 :9 マイクと反対向き えっと、これでいい? いいの? よかったー。 したっけ、脱げたらおしえてねー」 「……(呼吸音)」 「あ、脱げた? そしたら毛布の上にはらばいになって、 だらーって体の力をぬいて?」 「できた? オッケー? もう振り向いていいの? わかった!」 ;9 「あ! うんうんそうそう。その体勢。 そんなら、ちょべっとだけまっとってねー」 ;16 「よいしょ――よいしょ――ん――」 ;SE 手にクリーム伸ばす ;9 「はぁい、おまたせ。 したら、お客さんのことマッサージするけど……」 ;*しゃっこい=冷やっこい 「パロポロの手、けっこーしゃっこいからさー、 びっくりしたら、動いちゃってもいいからね? って?」 「なしてお客さん? そんなにびっくりした顔してるのさ」 ;SE クリーム伸ばし 「え? ええ? これ知らないの? 青いカンカンのクリーム」 「『知ってるけど、そんなに巨大なのは見たことがない』って―― あははっ、だから違うさー。 青いカンカンは普通のおっきさ、縮んでるのはお客さんの方だべさ」 「お客さん――自分の体……お洋服とか、身の回りのものとか見て、気づかない?」 「うん! そーそー、そのとーり。 パロポロの、『ポンポンアイヌ』の術は 人間と一緒に、その人間の身のまわりのものも縮めるの」 「したっけ、たべものとか消耗品とかは、縮めっちゃったらもったいないでしょ。 大きなままにしといたら、その分たーくさんつかえるもんね」 「だから、へへっ! この青缶も――<クリームたっぷり手に取る> こーやって両手でいっぱいすくっても――<クリーム練り伸ばす>」 「ん……(呼吸音)――こーして、ぜいたくに―― <クリーム肌につける、ぺとっ>――お客さんの肌に乗っけても――さ」 「へへっ、ちょべっとしか減らないからねー。 クリームマッサージ、いっくらでもしれあげられるべさ」 ;13 「したっけ、まずは足から……(呼吸音)―― 足の裏からいくからねー。 くすぐったくても、パロポロのこと蹴飛ばすのだけは勘弁さ」 「したっけ……ん――(呼吸音)―― んしょ――<クリーム肌に塗り伸ばす>――ん…… どーお? 気持ちいいでしょー」 「氷点下だと……<塗り伸ばし>肌の、水分も…… 凍るから……ん――(呼吸音)――こう、して―― <塗り伸ばし>――クリームで、保湿しないと、肌痛めるべさ」 「え? 『氷点下って』――えへへっ! その辺の細かいことは塗りながら説明するからさー。 まずはリラックス、リラックス」 「もういっかい深呼吸して、りきみ、ぬこーねー? パロポロと一緒に、いくよー」 「吸ってー (深呼吸)」 「吐いてー (深呼吸)―― ん、もーいっかい、吸ってー(深呼吸」 「吐いてー(深呼吸)」 「(呼吸音) ん……<肌をかるぅく指でたたく音> ――うん」 「いー感じにちからぬけたねー。 じょうずじょうず!」 「したっけ、どんどんぬってくよー」 ;SE クリーム塗る 「ん……(呼吸音)――どーお? パロポロの手――<塗り伸ばし>――しゃっこいいでしょー」 「『ひんやりとして気持ちいい?』 ……そっかー。 それなら、パロポロも――<塗り伸ばし>――ん…… 安心してどんどんぬれるさー――<塗り伸ばし>」 「ん……<塗り伸ばし>……お客さんは、疲れ―― んー(呼吸音)――筋肉の、つかれ――<塗り伸ばし> たまってるねー」 ;5 「太ももの、裏――ん――<塗り伸ばし> クリームごしでも……(呼吸音)―― パロポロの手が、カッカするもの――<塗り伸ばし>。 筋肉が、疲れで熱――<塗り伸ばし>―― もっちゃっるべさ」 「……したっけ……ん……(呼吸音)―― ここに――<塗り伸ばし>――パロポロのとこに―― 導かれたんだねー――きっと――<塗り伸ばし>」 ;5 「ん……背中にも――<塗り伸ばし>――ん…… (呼吸音)……お客さん、背中、おっきいねぇ――」 ;SE クリームたっぷり手に取る 「縮んでなきゃ――へへっ――青缶きっと―― <塗り伸ばし>――ん……<塗り伸ばし>―― ひと缶ぜぇんぶ、使いきっちゃいそう」 「ん……(呼吸音)――ふっ――<塗り伸ばし>―― ここ、肩の骨の裏もちゃあんと――<塗り伸ばし>―― あ!? へへっ、ここ、押されると気持ちいいの?」 「したっけパロポロ、ぎゅーって押してあげるべさ いっくよー(呼吸音)――んっ! <指圧音強>」 「へへっ、気持ちいいならうれしいさ。 したっけ、反対側の肩も――んんっ! (呼吸音)――<指圧音・強>」 「へへへっ、肩、軽くなったの? ならよかったさー。 あ、そのまま手、体から離してて?  うんうん、そうそう。そしたら――」 ;7 「ん……腕も――<塗り伸ばし>――パロポロのより……ふっ――(呼吸音)――ずうっと――太い、ねぇ―― ん……<塗り伸ばし>」 「あ、力こぶって――<塗り伸ばし>――あれ、出せる?……うん?――ふぅん、そうなんだー――<塗り伸ばし> ――人間の体、面白いねぇ――(呼吸音)ん――んっ――<塗り伸ばし>」 「あとは、手。ぱーってして? ぱーって。 うん、そう――そのままだよー、動かないでねー―― <塗り伸ばし>」 「ん……<塗り伸ばし>……気持ちいいねー―― パロポロも、だよ? 指と指との間、こうして―― <塗り伸ばし>――ん……(呼吸音)―― クリームで……ぬるぬるってして――<塗り伸ばし>―― んっ――こすれるのって、こそばゆい、よねー」 「へへっ! うん。よしっ! 綺麗にぬれたー。 したっけあとは〜」 ;SE 足音、とたとた ;3 「右手も塗ろうね〜。 ん……っと――<塗り伸ばし――>ふっ――(呼吸音) ――へへっ、指の間から塗っちゃうよー」 「ん……(呼吸音)……ふっ――<塗り伸ばし>―― んふっ――やっぱり――ぬるぬる――<塗り伸ばし> くすぐったいね〜――(呼吸音)」 「手のひらの方も……たーっぷり……<塗り伸ばし> ――ん……手の甲……(呼吸音)それか、ら―― だんだん、上に――<塗り伸ばし>」 「ん……<塗り伸ばし>――よい、しょっ――<塗り伸ばし>……あ、ここ」 「肘の近くの……筋肉の、ここ――ぎゅーってすると、 少し、効くんだよ? 押す? ん、わかった―― ん――<強い指圧音>――ど?」 「気持ちいい、なら――<塗り伸ばし>――えへへっ、 マッサージ、もうちょっとは効果でてるのかも―― だね――ん――<塗り伸ばし>」 「疲れあるとさ……<塗り伸ばし>――気持ちいい、より――<塗り伸ばし>――痛いの、でてくるから…… ん――(呼吸音)<塗り伸ばし>――うんっ」 「えへへ? どうかな。 ふふっ、だよねー。いい感じでしょ」 「したっけ、今度は、またごろんして? 今度は体の前側を―― あれ? なしてごろーんてしてくれないの?」 「うん、うん……『前側は恥ずかしいから、自分でやる』……べさ? ふぅん? ぬいでもらうときもそうだったけど、 お客さん、そういうの恥ずかしいんだねー」 「いいよ。それなら、パロポロぬるの任せるよ。 けど、塗り残しあると危ないからさぁ、 丁寧にゆっくりやっといてね?――ふふっ」 ;1 「パロポロは〜、その間に〜、へへへっ、 お客さんの着替え用意しとくから、 ちょべっとだけ待っとってねー」 ;16 マイクと反対向き 「ん……っと <がさごそ>――あたったかい肌着と―― <がさごそ>――ぶあついくつしたと――<がさごそ> ――ズボンと、セーターと――<がさごそ>」 「あとは――へへっ! お客さんいい人間だから、 おとっときのこれ、出してあげよーっと――ん?」 ;16 マイク向き 「なして驚いた声……ああ、これ? ふふふっ、もふもふなのも当然さぁ」 「おとっときの、誰にもまだ着せたことない、 キムンエカシの毛皮だもの。 とーっても上等で、あったかいべさ」 「え? ああ、うん。 キムンエカシは、『山親爺』っていう意味」 「つまりは――ふふっ、熊の毛皮さー」 ;環境音 F.O. ///////// ;Track2:石狩鍋ほふほふ ;//////// ;SE 冷蔵庫のドア閉まる バタン ;環境音 冷蔵庫内。モーター音+ファン音 ;参考 https://www.youtube.com/watch?v=KMfhd8ENtME ;SE 雪を踏み分ける足音 ;13 「んっ――ぷあっ――振り返らなくて、大丈夫。 そのまま――まっすぐ――まっすぐいって――(呼吸音)」 :SE 雪足音 「(呼吸音)――あ! 見えてきた―― あれさぁ。あのおうち――あそこにつけば―― ぷあっ――ぬくく、なる、から――(呼吸音)」 ;SE 雪足音 「くあっ――ついたー! あ、ちょべっと待って」 ;SE 鍵をかちゃかちゃ :1 マイクと逆向き 「いま、戸――開けるから……ん――<SE 鍵なり> ――ああもう、ぼっこてぶくろだと、やりづらくって―― あ! <SE 鍵開き>」 えへへ〜、開いたっ! <SE 戸開け>」 ;1 通常 「したっけ入って、すぐに入って、お客さんっ!」 ;SE 戸閉め 「ふわー、しばれたねー。 今日はずいぶんと温度が低くて、パロポロでもしんどかったさぁ」 「お客さんは、慣れてない分、なおさらこたえたべさ―― って、わ!?」 「わー! お客さん、ほっぺ真っ赤だぁ!! あ!? っていうか! クリーム、 顔に塗るの忘れてたねー」 「ごめんごめん――ええと、まずは、ストーブ! ストーブたくから、あたって、あたって」 ;SE ストーブの点火装置(カチカチカチカチ) ;SE 着火 (ぼっ!) ;環境音 モーターvol↓ ;環境音 石油ストーブ 「はーーーーーっ」 「んふー、一気にぬくまるでしょお。 ごめんねぇ、しばれさせちゃって」 「あ! ――お顔、クリーム塗り忘れてたっけね。 赤くなっちゃってる――ええと、ちょっとまって」 :1 顔寄せ 「(はーーーーっ)(はーーーーーっ)(はーーーっ)― (ほーーーーーーーーっっ)――ん……」 「<SE 手でほっぺたをこする音>……ん―― <頬こする>――ん……」 「まだ冷えてるね。(はーーーっ)(はーーーーっ) (ほーーーーーーーっ)(はーーーーーっ)」 「<SE  頬こする> あ――ぬくまってきた? ん――<SE ほほこする>―― しあげに――(はーーーーーーーーっ)」 「んふふ! よかったぁ、ほっぺもぽーって、ぬくまったねぇ」 :1 通常 「もっとお部屋があったかくなって、湯気がたったら、 クリームぬってあげるから、もうちょべっとだけ、がまんしてね」 「そうした方が、お肌にいいから―― したっけ、今は、ね? 先に、おなかの中あっためよ? さ、さ。座って座って」 ;SE 毛皮の敷物の上に座る ;1 同じ高さ→高いところから(立ち上がる動作) 「したっけ――よいしょっ! と」 ;16  「だいどこ仕事、パロポロこうみえて上手なのさぁ。 すぐに下ごしらえしちゃうから」 ;SE まな板+包丁 :16(マイク逆向き) 「♪(鼻歌)〜 いま、石狩鍋つくるからねー。 ちょべっとだけ待っとってねー」 「ん? ここ? ここは。おうち。 パロポロのおうちだよ?」 ;SE まな板+包丁 「うん。そう。 さっき、お客さんが入ってきたとこは、『お店』。 だって、入り口が人間のサイズに出来てたでしょお」 ;SE 切った具材を鍋にうつす 「パロポロには大きすぎるもん。 したっけ、お店の中に、もういっこ、 パロポロにぴったりのサイズのおうちがあるのさー」 ;SE まな板+包丁 「へへへっ、そうだねー。 もっとちゃあんといったら、お店の中の、冷蔵庫の中のおうち」 「冷蔵庫、おっきくてびっくりしたでしょー。 ちゃんとした言い方だと……なんだっけ? ええと―― あ、それそれ! 冷蔵倉庫」 ;SE まな板+包丁 「パロポロのお店のおとなり、アイスクリームパーラーしながら、ゆずシャーベットの……」 「えと、たくさんつくって、他のお店に―― あ、それ! 製造卸っていうのしてるのさ」 ;SE 切った具材鍋うつし 「んで、それにつかってる冷蔵倉庫に、 パロポロのお店くっつけてつくってもらったの。 パロポロのお店から倉庫に入れる、パロポロ用のちっちゃな扉、あれ、特別あつらえしてもらったんだよー」 「それで、冷蔵倉庫のすみっこに、特別に、このお家を建てさせてもらったんだー。 だから、へっへー。 茂伸にいながら、北海道の冬をいつでも楽しめるんだよ――っと!」 ;16 「はぁい、おまたせ。石狩鍋。 っていっても、まだつくりかけだからー」 「ね? お客さん、つかってごめんねー。 テーブルの上、そこのコンロおいて、火、つけて?」 ;SE 卓上コンロに火をつける ;環境音 ストーブ vol ↓ 「えへへっ、ありがと。 したっけ――よい、しょっ!」 ;SE 鍋運ぶ 「んっ!」 ;SE 鍋をコンロにおく ;環境音 鍋グツグツF.I, ;15 「へへへっ、したっけ、お隣、すわるね?」 「……ストーブの火と、コンロの火って、また違うよねー。 ……(呼吸音)…… コンロの火、へへっ、 パロポロとお客さんだけの火って感じ、するべさ」 「ん――煮えてきた煮えてきた。 したっけ、食卓の上で、コンロの火で。 しあげしながら、ふたりで一緒に食べようねぇ。ふふっ」 「あ、お客さんはは石狩鍋、味噌入れる方? いまはこれ、お出汁と塩と酒粕だけなんだけど……」 「え? 『パロポロの好みで』? へへへっ、 パロポロ、どっちも好きだけど―― そうだね、それなら今日は、お味噌、溶き入れよう?」 「あんね。お隣のアイスクリームパーラーね <お鍋の具材を箸で寄せる>――ん…… 熊本出身のあやかしがやってるのさー」 「でね――この味噌――クマ味噌っていうんだって、 あまぁい味噌。これをね? パロポロの北海道味噌とばくってくれるの」 「え? あ――そっか、ばくるって北海道弁か。 ええとね――交換、取りかえっこのこと」 「ばくったら、あわせ味噌つくれるでしょお? これがね、甘くて濃くて――へへへっ、おいしいんだぁ」 「いまね? 溶き入れるから。 口に運ぶまえに、匂いからさ、 たっぷりじっくり、味わってねぇ」 「ん――<お味噌を鍋に溶き入れる>――ふふっ―― (大きく匂いを嗅ぐ)――ん〜っ、いいにおい」 「お味噌、においだけであったまるねぇ――それに――」 ;SE お鍋ぐつぐつ 「ふふふっ、お鍋さんもぐつぐついってきたねぇ。 したっけ、食べよ? お客さん、鍋奉行する? それとも、パロポロがとりわけよっか?」 「……ん。わかったー。 じゃ、パロポロがとったげるね。 へへっ、お客さん、あまえっこだぁ」 「ん、と――鮭でしょ、お豆腐でしょお、白菜に、おねぎに、にんじん、しいたけ! ――あ、ちっこい鮭もはっけーん、これも――<SE ぼちゃ>――ありゃ、お箸から逃げ出しちゃった」  「したっけ、逃さないよ〜―― えへへっ、はい、つかまえた〜。 へへ、このおちびさんも、お客さんにあげるねぇ」 「そしたら、おつゆを―― <SE 木の椀に鍋のつゆをすくってそそぐ> ――ありゃ、ちょっとたっぷりいれすぎた?」 「したっけ、食べて。 あったかいうち、さめないうちに――って、あー」 「お客さん、甘えっ子だもんねぇ。 もしかして、パロポロがあーんってしてあげたほうが、 いいぃ?」 「うんうん、そなんだー。 いいよ、そしたら、あーんしてあげるさぁ」 「まず何いく? 白菜? ふふ、味しみてるといいねぇ。 <箸で取る>」 ;8 顔寄せ 「はぁい、『あーーーん』――わっ!?」 ;7  「ごめんごめん、あっちかった!?  お水、これ、はい――どうぞ!」 「ん……(呼吸音)――どう? お口、やけどしなかった?」 「見せて見せて? あーんってして、ベロだして? はい、あーーーん……あー、あかくなってる…… けど、ただれてとかは、いないみたい……よかったぁ」 「痛くない? あ……『大丈夫』。そ? ならよかったけど―― ごめんねぇ。次からは、ふーふーってもするね?」 「あー、安心したら、パロポロもおなかすいちゃった〜 <箸>(ぱくっっ)――!!」 「あふっ! ほふっ! あひっ! あっひゅぅい!!」 ;ほひふおみず 「ん〜ん〜ん〜 ほひふ! ほひふ!!」 「(ごくっ! ごくっ! ごくっ! ごくっ!) ――ぷあああっ――あっちかったね〜―― パロポロ、安心してうっかりして ふーふー忘れてたべちっったよぉ」 「下ごしらえのとき、お客さんと話してたから…… おもったより時間たってて、火も味もしみてたんだねぇ」 「したっけ、今度はあっちすぎないようにしないとねぇ。 ええと――ちっちゃいしゃけ! <箸> はい――(ふーっ、ふーっ、ふーっ)――」 ;8 顔寄せ 「あーん」 ;7  「――(呼吸音)―― えへへっ、今度はおいしそうな顔! そしたら、パロポロもしゃけ! <箸>―― (ふーっ、ふーっ)――(ぱくっ) ――(もぐもぐ)――(ごくん)――ぷあー! おいしい!!!」 「あ……あっちいの、しゃけ、 いまのどを落ちてるのがわかる〜  ……(呼吸音)―― んふー、これ、しあわせだねぇ」 「次はおとうふ食べようか。 食べる? えへへっ、 (ふーっ)(ふーっ)(ふーっ) はぁい、さましたけど、まだあっつあつかも――」 ;8 顔寄せ 「あーーーん――うんっ――(呼吸音)――どぉお?」 ;7 「あ、おいしいならよかったぁ。 えへへっ、そしたらパロポロも――え?」 「わ! あーんしてくれるの? おかえし? わぁい、お客さん、やっぱりいい人間だねー」 「え? 『断られるかとおもった』って、なして? ふんふん……『なれなれしいかと思って』って――ふぅん?」 「うん……ふん……へぇえ、なるほどぉ。 人間って、ややこしいこと考えるんだねぇ。 男性と女性? って、めんどおくさいんだねぇ」 「したっけ、パロポロまだ100歳だもんさ。 人間でいったら、10歳とかそんなだもん。 男性も女性もないよー、ちびすけちびすけ」 「だからね? ――えへへっ。 やさしくしてもらえるのは、うれしいんだぁ。 したっけ、ね? はやくぅ。あーんして、あーん」 ;8 「わぁい、えへへっ――あーーーーん――(はむっ)―― (はむっ――こくっ)――ん〜〜っ!」 ;7 「ん……(呼吸音)」 「ふぁ……あっついの、おとうふ、 またのどを落ちてくのがわかった〜 んふー、これ、しあわせだねぇ」 「したっけしたっけ――次はこれ!」 ;8 顔寄せ 「はい、あ〜〜んっ!」 ;環境音 鍋グツグツF.O. ;環境音 ストーブ Vol↑ ;7 「ふぅう。おいしかったねー。 パロポロ、おなかぽんぽんさぁ」 「え? 『たくさんたべてた』って? そりゃあそうさぁ。パロポロ、名前からして 『パロポロ』――『おっきなおくち』って意味だもん」 「え? 『どっちかっていうとちいさくてかわいい口?』――かなぁ? えへへっ、ありがとお」 「けどね、ほんとのおくちのおっきさは関係ないべさ。 コロポックルはね、悪いあやかとかカムイとかに、 かわいいあかちゃんつれていかれないように、わざとかわいくないお名前つけるの」 「お客さんだったら……ん……(呼吸音)―― ポロフレシサム! ――『赤すぎるお顔』とか―― って、ああああ」 「ごめんねぇ。お顔のクリーム、まだぬってなかっったねぇ。 ね、こっち、こっちむいて? いますぐ塗るから」 ;1 顔寄せ 「ん――<クリーム手に取る>――<塗り伸ばす>―― ……右、ちょっと向いて?」 ;2 顔寄せ 「(呼吸音)――ん……しょ……<塗り伸ばす>―― 今度は逆側、左、ちょっとむいて?」 :8 顔寄せ 「<塗り伸ばす>――ん……と――(呼吸音)――。 よしよし、そしたら、まっすぐに向きなおって?」 ;1  「えへへっ、これ。 リップクリームっていうんだよ。 さくらの匂いがするんだよ。 お隣の、アイスクリームパーラーの、ゆきねーさんにもらったの」 ;1 顔寄せ 「唇、ぬってあげるねー……って、え? ちょっと待つの? いいけど――なんで?」 ;1 通常 「うん……うん――間接キッス?  あはは、そんなの気にしないよ〜」 ;1 顔寄せ 「はぁい? だから、ね? いいこにしててねー。 ん……<リップ塗り>――(呼吸音)―― はぁい、ぬれたー」 ;1 通常 「ほんのり桜のにおいするでしょー。 えへへっ、パロポロのお気にいりなの。宝物なの」 「だから、ね?」 ;8 顔寄せ、囁き 「パロポロに特別やさしくしてくれた、 ふーふーしてあーんしてくれた、 お客さんにだけ、特別につかわせてあげたべさ」 「……したっけ、気にしないのさ。 間接キッス。平気なの」 ;1 通常 「えへっ、えへへっ! 特別ってうれしいよねぇ。 あれ? お客さん、お耳までまっかだぁ」 「あ、そうだ! お耳。お耳にもクリーム塗らないと。 それと一緒に、お耳掃除もしてあげるねぇ」 「(膝叩く、ぽんぽん)―― はい。ここ。頭乗せて? ひざまくら。 えへへ〜っ。 パロポロ、いっかい、耳掃除ってしてみたかったんだぁ」 ;環境音 ストーブ F.O ;//////// ;Track3:右耳を綿棒でお掃除 ;//////// ;3 「ん……(呼吸音)」 ;環境音 ストーブ F.I 「まずは、クリームぬるね? <指ですくう>―― ん……耳の外側から……<塗伸>――耳たぶ――<塗伸>……耳の内側の、まわりのところ……(呼吸音)」 「えへへっ、これ? 緊張するね? はじめてだから綿棒使うし、いたくしないよう気をつけるけど―― もし、痛かったら、すぐいってね?」 「したっけ、はじめるよ〜……ん……<耳かき音>―― 最初は、浅いとこ……<耳かき音>――ん…… (呼吸音)」 「あ、これ、結構くっついてとれるねぇ。 えへへ、うれし―― ん……<耳かき音>――ふ、ぁ……<耳かき音>」 「も少し、奥に――<耳かき音>―― そうっと――そおっと――<耳かき音>――」 「え? 『上手』? えへへ、うれしいなぁ、ありがとねぇ」 「パロポロ――<耳かき音>―― 耳かきってしてみたかったけど――<耳かき音>―― ん……(呼吸音)―― したことなくて――はじめて――<耳かき音>――だから」 「あ――うん。いるよ? ミチもハポ――両親、お父さんもおかあさんも―― <耳かき音>……いる、けど――(呼吸音) コロポックルだから、長くは一緒にくらしてないの」 「パロポロが……六十歳になって――<耳かき音>、 一人でだいたい、なんでもできるようになったら…… <耳かき音>――ん――(呼吸音)」 「コロポックルだから、さぁ――<耳かき音> ふたりとも、船に乗って、海の向こうに―― <耳かき音>、旅立ってっいっちゃったべさ」 「『どこに』って……ん……(呼吸音)―― それは、パロポロも知らないの――<耳かき音>―― パロポロが大人のコロポックルになって……(呼吸音) お婿さん、もらったら、わかるようになるって―― 聞いてる――けど――<耳かき音>」 「したっけ、そんなのきっとずうっと先のことだし―― <耳かき音>―― パロポロ、いまよりもっとちっちゃなころは……(呼吸音)…… 耳かきなんて、知らなかったから……<耳かき音>」 「だからパロポロ、これが――へへっ――<耳かき音> はじめての耳かきなんだよー……<耳かき音>。 どう、かな? 上手に、いたくなくできてる――かなぁ――(呼吸音)――」 「そっか、ならよかったべさ。 えへへへへ、ありがとお」 「え? あ、うん。そう……<耳かき音> コロポックルに、みみかきって習慣、ないんだー。 だから、パロポロ、しらなくて――<耳かき音>」 「けど、茂伸にきてから……ん――<耳かき音>―― お隣で、テレビ? っていうの、見せてもらって―― (呼吸音)―― それで、耳かきって、知って――<耳かき音>―― ――楽しそうだな、してみたいなぁって……<耳かき音>」 「え? 『じっさいやってみて』?。 うん……にへへっ―― たのしい、かな? ――<耳かき音>――こういうの」 「したっけ、ね? なんでかな。 ちょっとだけ、なんか――(呼吸音)―― くすぐったいみたいなきもち、する――<耳かき音> おかしいよね、みみかきしてるの――パロポロなのに」 「ん……<耳かき音>……ふ……(呼吸音)―― ね? お客さんは、どう? パロポロの耳かき――<耳かき音>―― 耳だけじゃなく――こころも――(呼吸音)…… くすぐったいかんじ、する?」 「……あ……えへへっ――ならよかったぁ。 おんなじだねぇ。 そっか、パロポロの耳かきもおはなしも、 お客さんのお耳に、あずましいんだねぇ」 「あーよかったー……((呼吸音)―― なんでかな。パロポロ、とってもうれしいよぉ」 「あ、したっけ。したっけ、ね?」 ;3 顔寄せ囁き 「よかったら、お客さんのお話も、きかせてくれる? どんな旅をして、ここにきたのかのお話を――」 ;3 「えへへっ、ありがと。 で? ――<耳かき音>―― うん……うん――<耳かき音>―― へぇ――そうなんだぁ――<耳かき音>」 「それでそれで? ……うん――(呼吸音)―― わ……そんなの――そんなのって――え?」 「あ――そうなんだ――<耳かき音>―― それでそれで? へぇ――わぁっ―― あ、ならよかったねぇ――<耳かき音>―― パロポロも、うふふっ――(呼吸音)―― あのね? すっごくほっとした」 「あ。ちょうどいいかな? ちょっとまってね?」 ;3 顔寄せ 「(ふーーーーっっ)」 ;3 「ん……うん。えへへ、上出来。 とっても綺麗になったべさ。 したっけ、次は反対側だね? ごろーんてして??」 ;//////// ;Track4:左耳を綿棒でお掃除 ;//////// ;7 「え? 『逆に』って―― お客さん、もう逆になってるべさ」 ;7(顔寄せささやき) 「んふふっ――(ふーーーーっ)―― ほぉら、ね?」 ;7 「ん? 『じゃなくて』? あー。あーあー! なるほどねー。そういう、逆に、かぁ」 「いいよ。したっけ今度はパロポロがお話ししてあげる。 パロポロが、この茂伸にきた理由―― もちろん、へへっ――(指でマイクをかるぅくつっつく)」 「お耳掃除をしながらだけど――それでいい? へへっ――そっか。まら、また始めるべさ。 まずは、クリームぬりから、ね?」 「ん……<クリーム指ですくう>―― 最初は耳の外側と――<塗り伸>―― それから、耳たぶ――<塗り伸>」 「で……耳の内側の浅いとこ――(呼吸音)…… んっ――<塗り伸>――っと。 したっけ、へへへっ、綿棒ちゃんの出番だね〜」 「ん……<耳かき音>――あ、こっちでもおんなじだねぇ。 ちゃあんととれる」 「(ふーーーーっ)――ん――<耳かき音>―― で、ええと――<耳かき音>―― パロポロはね? お友達にさそわれて――ん ……<耳かき音>――茂伸に、こしてきたの」 「……(呼吸音)――津軽……青森の津軽のね?―― たぬき――<耳かき音>――すなまきだぬきっていうこに、さそわれて――<耳かき音>」 「んと、ね――(呼吸音)――あやかしってさ――<耳かき音>―― あやかし同士で、しりあっててもダメなのよ―― ん……<耳かき音>――人間、がね? ――(呼吸音)」 「人間が、ん……<耳かき音>――あやかしのこと、忘れちゃったら――あやかし、ぽこん、って消えちゃうの。 そしたらもうね――(呼吸音)――どうしたって、もとに戻せなくなっちゃうの」 「すなまきだぬき、ね?……<耳かき音>――津軽で、ほとんど、そういうあやかし――(呼吸音)…… 忘れ去られかけたあやかしに――<耳かき音>―― あ、ちょべっとまって――これ、なまらおっきいの」 「ん……(呼吸音)――ふっ――ん――<耳かき音>―― んんっ――<耳かき音>――あ、うん。くっついた―― (呼吸音)――そうっと、そうっと――あ」 「んん〜……おちついて、もっかいやるべさ――(呼吸音)――あせらず、いそがず、おちついて〜――<耳かき音>――よ――<耳かき音>――ん――<耳かき音>――あと、すこ……しっ――<耳かき音>―― うん! えへへ〜、とーれた、っと」 「あ、それでね? <耳かき音>――すなまきだぬき―― 忘れされてたら消えちゃうから……<耳かき音> もんじゃぶね? っていうお船……(呼吸音)――」 「船の、あやかしに、乗せてもらってさ――<耳かき音>―― どんぶらこって――<耳かき音>――わたってきたの。 北海道に――<耳かき音>」 「したっけ、ねぇ……(呼吸音)――コロポックルのことだって、昔ほどには北海道でも、人間が語らなくなってきてるもの――<耳かき音>――ん……」 「ぽっとわたってきたすなまきだぬきが――<耳かき音> どれだけ砂を撒いたたって、話題にもしてもらえないべさ――<耳かき音>―― けど、それでもさ――<耳かき音>―― あやかしの間でだったら、ちょべっと話題になったから――(呼吸音)」 「パロポロ、さみしかったから――<耳かき音>―― すなまきだぬきも、きっとさみしがってるべさって思って――(呼吸音)―― それで、会いに行って、ともだちになったの――<耳かき音>」 「ん……そしたら、ね? ――<耳かき音>―― 茂伸のこと、すまきだぬきが教えてくれたのさ――<耳かき音>」 「遠く四国に、人とあやかしがともにくらせる土地がある、って――<耳かき音>―― そこでなら、人があやかしを知って、覚えてくれるから――(呼吸音)―― きっとこの先も――<耳かき音>――ずっと、消えないでいられる、って」 「それで、パロポロ。船ののってどこかにいった、ミチとハポ――<耳かき音>――お父さんとおかあさんも…… (呼吸音)――もしかして、ものべのにいるのかもって、思ったのさ――<耳かき音>」 「すなまきだぬきも、いっぴきじゃ四国までとてもたどりつけないけど――ん……<耳かき音>―― 一緒だったら――きっといけるって――(呼吸音)―― さそって、くれて」 「そうして、パロポロは茂伸にきたの――(呼吸音)―― したっけ――来てみたら、さ――<耳かき音>―― ミチとハポは、みつからないし……(呼吸音)―― すなまきだぬきはすぐに狸の仲間みつけて――<耳かき音>――そっちの群れにいっちゃったから――」 「だから、パロポロ、来る前より――<耳かき音>―― ちょべっとだけ、ね? ちょべっとの間だけ、なまら寂しくなっちゃったのさ――<耳かき音>――。 したっけ、ね?――<耳かき音>」 「そのあとすぐに、パロポロ――<耳かき音>―― ん……この、お店、つくってもらえて―― すなまきだぬきもなんだかんだで――<耳かき音>――けっこー遊びにきてくれるし……(呼吸音)――」 「おとなりにも、さ――<耳かき音>―― ゆきさん、いるべさ?――<耳かき音>。 したっけパロポロ、すぐにちょべっともさみしくなくなって――ひゃっ!?」 ;1 密着 「ど、どうしたべさ、お客さん。 急に――(呼吸音)――急に、おきあがって、 ぎゅーってしたり、して」 「え? いや――じゃ、ない……べさ。 いやじゃない、けど……あったかいけど……(呼吸音)――」 「だけど……ちょっべっと……(呼吸音)―― ちょべっと、びっくりして――ドキドキ、して――て――(呼吸音)」 「あ……(呼吸音)――『さみしかったら、甘えていい』……って―― したっけ、お客さんは、お客さん、だし……(呼吸音)――」 「パロポロ、は……いやしどころの、あるじ、だし――(呼吸音)――え?」 「あ……うん。――うん。 うん。あるじとお客さんであるよりまえに―― うん――(呼吸音)――」 「うん――。だねぇ。 パロポロ、まだまだちびっこいもんね。 甘やかしてくれる人がいたら―― えへへ……甘えちゃったって……(呼吸音)――悪く、ない――よね?」 ;ピリカ・オッカイ=「良い若者」 「えへっ――えへへへっ―― ありがと、おきゃくさ――ううんっ、ピリカ・オッカイ」 「え? 意味? 意味はね、えへへ―― ナイショだよ〜――へへっ」 「ね? オッカイ。したっけ、ね? パロポロ、もーちょっと甘えてもいーい? 耳かきのほかにね? ずっとずうっと、 してみたかったこと、ひとつあるの」 「いーい? わぁい! そしたら、ちょべっとだけまっててね!」 ;SE 石油ストーブ消す(バチョンっ) ;//////// ;Track5:おやすみなさい、おともだち ;//////// ;環境音 冷蔵庫モーター+ファン ;7 「えへへへっ。ストーブけしてもぬくまるねぇ。 ふたりでおふとん、あったかいねぇ」 「んー……(呼吸音)――えへへへへ。 ひとりじゃないって、いいことだねぇ」 「オッカイはどう? ぬくい? ぬくまる? しばれるようなら、パロポロのこと、 ぎゅーってだっこしてもいいよ?」 ;7 顔寄せ 「……別にしばれなくても――(呼吸音)―― ぎゅーってしても、いいよ?――ひゃっ」 「〜〜〜〜っ」 「むぎゅう――ぎゅーってしすぎだっよぉ。 したっけ――えへへ――あったかいねぇ、うれしいねぇ」 ;7 通常 「ふぁ――ん……むにゃ―― あったかくって、しあわせで、 パロポロ、ねむくなってきちゃった――」 「え? あ、うん。だねぇ。 このままのんびり、おはなししようねぇ。 おはなししてて、ねむくなったら、ねちゃおうねぇ」 「ん――(あくび)――って、いっても―― なにを話せばいいのかなぁ―― ね? オッカイは、なにかききたいことあるかなぁ」 「うん……うん……このお店のこと? いいよ? はなして、おしえてあげる」 「このお店はね、パロポロが茂伸にきて…… 一緒にすなまきだぬきは、たぬきの仲間たちとくらすようになっちゃって――パロポロ、ひとりぼっちになって――(呼吸音)――」 「それでさみしくなってさぁ…… 蕗(ふき)の葉の下で……(呼吸音)―― なまらあっつくって、ねぐるしかったけど―― ひとりで、ねむって……(呼吸音)――」 「そしたらね? この土地の……茂伸のピリカカムイ―― 良いカミ様が――夢に出来てくれたの」 「『ここに向かえば、冷蔵倉庫っていうものがある』って。 『その傍らに小さな家をたてておくから、うまくつかって癒やしどころをやればいい』って」 「姿はまぶしてみえなくて――小さな女の子みたいな声で――それでね、そのとき、まぶしくって見えなくっても、わかったの」 「茂伸のピリカカムイね? わらったの。 にこって笑って、こういったの。 『大丈夫。すぐに全部がよくなるッスよ』って」 「それで、夢でみたここに来て。 そうしたら、ゆきさんがいてさ。 『ゴカイソサマのいってたこね?』って、 パロポロのことむかえてくれて」 ;↓以降、だんだん眠さが強まっていく 「……うん――ふぁっ――ん……うん? あ……うん。パロポロもそれっきりあってないから、 わからないけど……(呼吸音)――」 「それが……ゴカイソっていうのが……ふぁっ―― 茂伸のカムイ――ピリカカムイの、きっと、お名前なんだべさ」 「え? あ……ん――(小あくび)――うん。 『どうしてお店をくれたのか』……は……ん〜――(呼吸音)―― パロポロも、なんどもなんども考えたけど―― うあっぱり、よくはわからないさ」 「したっけ、ね? ゴカイソカムイ―― あやかしたちに、とってもやさしいんだと…… パロポロね? そういうふうに、思うんだ」 「だって、お店、やらせてくれたら――ん…… ふぁ――あ――お店で、人間と、ふれあった、なら――」 「オッカイとパロポロみたいに……ん―― なかよしに、なったら――パロポロのこと―― 覚えてて、くれるように、なったら――」 「あ……」 ;7 密着 「へへっ――えへへ――うれしいなぁ。 だよね。覚えててもらえたら―― ずっと、消えないでいられるから――」 「ゴカイソカムイ……消えちゃうあやかしがもうこれ以上ふえないように――人間に、かたりついでもらえるように――(あくび)――ん……茂伸を、こういう、土地にして――」 「それで……それで――あやかしに、お店、を――ふぁ――(大あくび)」 「……うん。おきてたいけど――おはなし、ずっと、したいけど――(あくび)――パロポロ、もう、ねないとダメみたい――ふぁ」 「……そうだね。もう、寝る。 お口もおめめもとじて、寝る。 あ、だけどね? オッカイ――パロポロの、はじめての人間のおともだち――」 「あのね? 明日の朝がきて、術をほどいて―― オッカイがまた旅にでて――(呼吸音)――」 「それでもいつか、またいつか……(呼吸音)―― パロポロのところに、きて――くれる?」 「今日はね? ひんやりぽかぽかのおもてなしだけだったけど、他のおもてなしもあるの。 したっけ――あ――」 「うん……うん。 えへへ――ありがと――うれしいなぁ……(呼吸音)―― パロポロ、ぽかぽか、ぬくまるなぁ」 「ふぁ――あ――(大あくび)――安心したら、 もうだめ、ねむい――まぶたもおくちも――ふぁ―― あけて……られない――んっ――」 「いっしょにねようねい、おともだち。 ピリカ・オッカイ――ぱろぽろの、はじめての―― ふぁ……んっ――」 「……おやすみなさぁい――ふぁ……ん――(寝息)」 「(寝息)」 「(寝息)」 「(寝息)」 「(寝息)」 ;環境音F.O →無音に ;おしまい