義理堅いわよね。わざわざ見送りに来なくたっていいのに。  ええ。当分戻ってこないと思うわ。  ……場合によっては、もうずっとあっちで暮らすかも。  あの子のこと、よろしくね?  あの通り、お人好しで泣き虫だから。  ……でも、貴方みたいな人がそばにいてくれるなら、安心かな。  ところで、貴方はなぜか私に恩を感じているようだけど。  私は十三年前、あくまで自分のために、交換条件として貴方を助けたのだから。  どんな結果になろうと、貴方が気にする必要はないのよ。  でも、じゃないわよ。  私がどうしても知りたくて……。  だけど、自分ではどうしても確かめられなかったことを。  トワちゃんは代わりに実証してくれた。  私はもう、それで充分。  あの日をもって、晴れて実験はおしまい。  これからは貴方の好きなように生きてちょうだい。  食い下がるわね……。  私はずっとあの子と友達でいたかった。だから確かめたかった。  あの子がいつか言った言葉が、本当かどうか……。  そのために貴方を利用したの。  他には何もないわ。  その時はその時ね。  貴方と私が仲良くショックを受けて、あの子に幻滅するだけね。  ……でもそうはならないって、貴方も私もわかってた。  それでも確かめておきたかったの。貴方だってそうでしょう?  だって本音を言えば、私、腹が立ったんだもの!  本物の怪物を見たこともないくせに。  ずっと目の前にいても気づかなかったくせに。  仲良くしたいだなんて。  本当にそんなことできるのかって、昔からずっと怒っていたのよ。  でも本当だった。あの子は一度ならず二度までも、人ならざるものを助けて、愛した!  私はそれを確認できただけで充分。  もう、それだけで、ずっと生きていけるわ。  そうよ。だから、そろそろ行きなさい。  あの子に『もう一秒も離れたくないですう〜』とか言ったばかりなんじゃないの?  そうよ? お互い様でしょう? 長い付き合いなんだから、それくらいわかってよね。  どういうこと? 貴方が妹なんて、勘弁してちょうだい。  これ以上手をかけさせるつもりなの?  ……! 来てたの……?  ……今の話、聞いてた?  貴方なら、そう言うと思ってた!  あはははは……。昔から肝心なことを聞いてないのよ、貴方って。  ねえ?  ……そうなの? じゃあ、この人なら今すぐに主人公になれるわね。  まったく。小説じゃなくて、私には全部現実なんだけど……。  じゃあ、せっかくだし、義妹さんのご厚意に甘えさせていただこうかしら?  ねえ。さっきトワちゃんと話していたこと。  貴方にも。いつか……いつか必ず話すわ……。  だから。  ちゅっ。  ……だから。次に帰国する時は……色々と。わからないかもね?  じゃあまたね。さよなら!