◆タイトル『臆病者の気の迷い』 ◆あらすじ とある掲示板で見かけた募集。 指定された場所へ向かうと、一人の女性が佇んでいた……。 ◆登場人物 ・男:35歳前後の男性。妻子あり。失業し、職が見つからないからといって、妻子を残して自殺集会に参加する。妻や子供には、自殺なんて辛いことをさせたくないと思っている。 ・すず:20歳前後の女性。次女。基本的にはダウナー系。 勉学は優秀だが、自然な会話はそれほど得意ではない。笑い方が可愛くない。 外見は、軽い天然パーマの、肩には届かないくらいのショートヘア。目はツリ目、瞳は錫色。体格は、身長はやや低めで、全体的に細身。 けいという姉が居る。出来は悪いが、裏表がなく、人当たりが良い。 傍から見れば、姉と妹が入れ替わったような関係だが、仲は良い。 何だかんだ世話焼きさんなので、嫌そうにしながら応対してくれる。 ただし、それは主体性の無さの裏返しで、本当は求められるのが嬉しい。 ※口調 『〜ません』ではなく『〜ないです』を比較的 使用。 喋り出しに『まぁ』や『あぁ』などを多用。 ◆あらかじめストーリーで提示されないが、必要そうな部分 募集とは、自殺願望者を募るもの。 基本的に、スズの発言のみを聞く分には、3章ラストまでは、援助交際的なミスリードをさせるような作りになっています。たぶん。随所で違和感のある会話・単語も混ぜます。 演技としては気にせず、普通に、会話上の流れで演じて頂ければと思います。 ◆パート分け 1.悪いこと  出会い〜自己紹介 2.身の上ばなし  身の上話〜車へ 3.星空のもと  車内と夜空〜持っているもの 4.隣あわせ  気がかり〜入眠 5.思いちがい  失敗〜夜明けの珈琲? 6.事のおわり  原因究明〜約束 ◆本編 1.悪いこと ……ん? はい、こんばんは。 奇遇ですね。こんな辺鄙なところで人に会うなんて。 ……まぁ、そういう事もあるでしょう。 世の中、狭いですから。 ? 何のことです? 掲示板? はぁ……。 たぶん、別の人だと思いますよ。 ……合言葉は? 合言葉は? たぶん、合ってますよ? 探してるの……私で。 {目を細めて微笑む}……。 ふっ……ふふっ、ふふ。 ごめんなさい、ウソですウソ。 そうです、合言葉なんて無いですよ。 いえ、色々と厳しい時代ですから、念のため言ってみただけです。 お互い顔も声も知らないですし、 もしかしたら、私たちみたいなのが、他にも居るかもしれませんからね。 んふ、特に意味は無いですから、気にしないでください。 変にバレたら困るでしょ? ……お互いにね。 まぁ、どうぞ。そこ、座ってください。 いーえー。 とりあえず、落ち着きましょうか。 夜は長いんですから……そんなに焦る必要も、ないでしょ? ……。 {軽い溜息}……。 ぇ。いやぁ……。 ホントはね、こんな事するつもり無かったんだけどなー、と思って。 あー、大丈夫です。そっちの問題もありますもんね。 今更やめようなんて、言わないですよ。 えー……。 あー……。 なんか、飲みます? お湯はあるんですよ、コンロと水があったんで。 あとこれ。カプチーノかー、ココアかー……キャラメルマキアート。 好きなやつ使ってください。 えぇ、わがままだなぁ……。 んー、ちょっとまって下さいねー。 んぅー……。 ……甘いのダメなんですか? へぇー。ケーキも? えぇ……なんか、人生損してますね。あぁ、あった。 はい、どーぞ。 いーえー。 ……まぁ個人の問題なんで、何とも言えないですけどね。 ん? あ……あぁ、ごめんなさい、忘れてました。 さすがに、コップ無いと飲めないですよね……。 確かマグカップがもう一個……あー、あっちか……。 ……えっとー、もう私、飲み切っちゃうんで、これで良いですか? じゃあ……{二口ほど飲む・小さく吐息} はい、どーぞ。 んふん。いーえー。 あぁ、ストップ。 ポットが……ちょっと熱いかも。んっ……これ使って。 ううん。痛いのは、誰だって嫌だもん。 {軽く息を吸う} あー、淹れたての良い香り……。 えぇ、要らないですよ……。 ブラックなんて何が良いんですか? いや、香りは良いじゃないですか。 苦いだけ、ってことが問題なんですよ。 うわー、飲んだ。うわー……。 えぇ、そうなんですか……? ……まぁ、私が飲んだのって、小さい頃のインスタントくらいしか、記憶に無いですけど。 ん……。 ……ちょっ。 ぅぅん……ちょっと飲みます……。 いいですよそんなの。この期に及んで気にしないですよ。 もとは私のコップですし……。 ありがとうございます……。 んー……。 ……うん。 ぅんっ。 んゎんゎんゎ、うべぇ……。 あぁあぁあ……返す……。 うぁぁ、にっがい。 うむっ……うへぇ。 んんんー、まだクチがニガい……。 んっ、っはぁ……。 ……ふぅ、ああぁ、そうだ、忘れてた。 これ、飲んでおいて下さい。 {深呼吸} まぁ、いわゆる、お薬ですよ。私もさっき飲みました。 んぅ……別に、変な方法で手に入れた訳じゃないですよ。 あぁ、あと、忘れてたついでに……いま携帯持ってます? もうあんまり意味ないと思いますけど、電源切っておいてくださいね。 ジーピーエスで、居場所とか分かっちゃいますから。 へぇ、偉いじゃないですか。言われる前からやってるなんて。 まぁ、こんな事しようと してるんだから、それなりに気は遣いますよね。 私も、やること全部片づけてから来ましたもん。 {息を吸う+溜息} じゃあ……もうちょっと、薬が効いてくるまで話してましょうか。 2.身の上ばなし あ、それ。 ゆびわ。……結婚指輪ですか? それとも彼女さん? へぇ……。 じゃあ今日は、出張、ですかね? んふふ、ずいぶん遠くまで出張しちゃうんですね。ふふ、大変だ……。 残してきちゃったんですか? 寂しがっちゃうんじゃないですか? ふぅん、そうですか。 ……なんて言うか、歪んだ愛ですね。 まぁ、私から誘っておいて、こんなこと言うのも良くないですね。 でも、やるからには自己責任ですから。 どうなっても、自分のせいですよ。 それなら良いんですけどね。 そもそも、なんでこんな所に来ちゃったんですか? いえ、別に知りたくは無いですけど……話の流れ? まぁ、言ってみて下さいよ。 はい。 うん、それで? えぇ……なんだ、くっだらない……。 {溜息} でもまぁ、だいたいみんな、そんなもんですよ。 理由は色々あっても、根っこの部分は一緒です。 みんな等しく、下らないんですよ……。 {軽い溜息} {視線を逸らす感じ} んっ、ん〜……っんあぁ。……はぁ。 んぇ、あぁ。……私ですか? 私のことは、まぁ、良いじゃないですか。 まぁまぁ。 {吐息}……気が向いたら、話してあげますよ。 あー……ま、でも、不便ですよね。 え? ぃゃ、ほら、名前が分からないと、お互い呼びづらいじゃないですか。 でしょ? なんて呼んで欲しいですか? ぇ、それで良いんですか? 何でもいいですよ? 下の名前でも良いし。 どうせなら、憧れてた名前とか、 ネットとか、ゲームで使ってる名前とか……。 なんかもっと、普段呼ばれないようなやつでも……あ。 ……ふふっ、ふふ…… え? ふふ、え、いや……パっ、パパとかでも、良いですよ……ふふっ。 ふふっ、ですよね……んふふ、ふ……あぁー、おかしい……ふふふっ……。んふ。 はぁ、んふっ、はぁー、ふふ、笑った……。 ふぅ……。 はぁー……まぁ、適当に呼びますよ。ふふ。 ん? あぁー……私は何でも良いですよ。 おい、とか、ねえ、とか。お好きにどうぞ。 んー……じゃあ、初恋の女の子の名前とかでも、良いですよ。 私で良かったらですけど、今日くらいは呼ばせてあげられます。 どうしますか? ぁ……。 それがいいんですか? そうですか。じゃあ…… それでいいですよ。 で……っとー、パパ? んふふ、冗談ですよ……。良い反応しますね。 まぁまぁ。 それで、体の具合はどうですか? 気分が悪いとか、ありませんか? それなら良かったです。薬にも、相性があるみたいなんで。 あぁ、はい。そうですよ。 私も先に飲んでましたけど、いまのところ、まだ何とも無いみたいです。 効いてきたら、早めに言って下さいね。 いろいろ準備もありますから。 うん。 はい。 {軽く呼吸、二回} んー……。 えー……。 なんか……、 ぁいや、面白い話ないかなって。 そうですよねー。 えぇ、無いですよ……。あったら聞かないで話しますし。 でしょ? んー……。 じゃあ、最近なんか、良いことありました? ……? 何で黙るんですか。 あぁ。っ……ふふ、そうですよね。 んふ……じゃないと、こんなところ来ませんよね。 ぁはは。……あは。 {溜息}……世の中、悪いことなら溢れてるのになぁ。 うん……。 私、思うんですよね。 おっきな幸せが一つ来るより、 ちっちゃな幸せが少しずつ来る方が、 幸せなんじゃないかなーって。 うん。 じゃあ、おっきな不幸が一つ来るのと、 ちっちゃな不幸が少しずつ来るの。 ……どっちが不幸なんでしょうね。 ね。 まぁ、どっちも嫌ですけどね。 幸せは、どんどん忘れていっちゃいますけど、 不幸って、なかなか忘れてくれないんですよね。 その辺の違いなのかもしれません。 うん、そうですね。 変な話、しちゃいました。 ……。 あれ、ちょっと、薬 効いてきました? そっか。 私は……うーん……もう少しかかりそうかな。 でもまぁ、はやいとこ行って、始めちゃいましょうか。 あっちに車がありますから、一緒に行きましょう。 あ。足もと、気をつけてくださいね。 この薬、筋肉が弛緩することもあるらしいですから。 あっ……{苦笑い的な吐息} あぁあー。んもー。 {吐息}、ほら、手、貸して下さい。 うん、どういたしまして。 ……さ、行きましょ。 3.星空のもと はい……。 そっち、座ってください。楽な姿勢で良いですよ。 {吐息か声、適当にお願いします} ぅん、ちょっと詰めてもらって良いですか? どーも。 {息を吸う}ふぅ……。 大丈夫ですか? 座った感じとか。 んー……。 あぁ、やっぱりちょっと、座席倒しましょうか。 ずっとこの体制は疲れそうですし、あとから倒すのも大変そうですから。 倒しますよ。はーい。 はい、おっけー。 んぐっ。 んぇあー……んえー。 あ。 この車、天井にも窓があるんですよ。 密閉しないと駄目なんで、開けるのはダメですけど……、 見えるようにだけ、しておきましょっか。 んっ……。 よい、しょ。 んー……はばっ。 ふぅ……。 {深く呼吸} ……ここ、星が見えるんですね。 うん、いっぱいですね。 生まれ変わったらー……お星さまになりたい。 ……なんて。んふふ。 {息を吸う}、ふぅ。 このまま、眠っちゃいそう。 ……そうですよね。 分かってますよ……心配しないでください。 ん……。 でもやっぱり、私、ちょっとだけ怖いです。 考えたこと、ないですか? 自分が死んだら、自分はどうなるんだろう、って。 死んだことに気が付くのかな、とか、 死後の世界ってあるのかな、とか。 でしょ? ……でも、さっきのは、別に そこまで怖くないんです。 もっと怖いのは……真っ暗。 感覚だけが無くなって、抜け殻みたいな意識だけが……そこに残っちゃうんです。 真っ暗で、真っ暗で。……独りぼっち。 何もできない。 何もわからない。 何も思わない。 ずーっと、そこにあるだけ。 ……怖いですよね。 これが、分からない怖さ。 もう一つあるんです。 例えば…… あー、いえ、例えばも何も ないんですけど……、 私たちが死ぬとするじゃないですか。 まぁまぁ、とりあえず死ぬとして……。 何か世界が変わると思いますか? そうですよね。 せいぜい、学校とか職場が、ざわつく程度だと思います。 そう、それが限界。 自分なんて、そんな程度なんです。 ちっぽけで、何もできなくて、どうでも良くて。 ……そんなことありますよ。 私は、そんなに出来た人間じゃないですから。 それは……そうかもしれませんね。 でも、家族って、そういうものじゃないんですか? なんですかそれ……当り前なら、意味なんか無いですよ。 何も無いのと同じです。 同じですよ。 ん……別に、そういうつもりじゃないですよ。 これでも頭は良い方だし、良い学校にも入ってます。 ……それだけなんですよ。 私が持ってるのは、それだけ。 それがずーっと むなしくて……。 んー……急に、なんか、もういいや、って……なっちゃったんですよね。 はい、それだけの理由です。 言ったでしょ? 大体みんな、根っこにあるのは下らない理由だ、って。 え? あぁ……それだけ、って、そっちですか。 そうですよ。私が持ってるのは、それだけなんです。 私は、人よりちょっと、頭が良いだけ。 ……でも、私より頭の良い人間は山ほど居ます。 それこそ……ほら、見てください。 この星の数ほど存在します。 ……そんなこと ありますよ。 何ですか? 慰めてくれるんですか? えっ。 それは、その……わざとですよ。 良い人に思われたくて、優しく振舞ってたんです……。 うぅん……そんなの嘘っぱちですよ。 でも……、んぅ……はぁ。 まぁ……ありがとうございます。 ちょっとだけ、嬉しいです。 もぉ、もぅ、もう良いですって……。 ……。 あはは……何の話でしたっけ。 まぁ、いいや。 ちょっと、変な感じになっちゃいましたね。 んっ、よいしょ。 じゃあ……火、点けますね。 練炭自殺の、始まりはじまり。 なんて。んふふっ……。 4.隣あわせ ねぇ。 あぁ、いや、大した用じゃないんですけどね。 なんて言うか、意外と落ち着いてるもんだなぁ、と思って。 うん。 ……こういうのって、死ぬ間際に、後悔したりするもんなんですかね。 んふふ、私も無いからわかりません。ふふ……。 はぁ。 けど、色々やってみたかったことは多いなぁ。 そうですね……結婚とか、出産とか? 自分で思ってたより、漠然としてるかもしれませんね。 あとはー……なんだろう。海外とかも行きたかったかな。 そうですね、勉強ばっかりしてましたから。 んー……どうでしょうね。後悔はしてないと思いますよ。 別に、誰かから強制されてた訳じゃないし、 勉強も、けっこう好きでしたから。 周りの子が遊んでるのも楽しそうだったけど、それはそれ。 無理に自分も、同じようなことをする必要があるとは、思いませんでした。 例えば……テレビで、美味しそうな料理を食べてる人が居るけど、 私は、庶民的な味付けも大好き……みたいな。 あれ、そうですか? ……あんまり上手くないんですよね、たとえ話。 あぁ、でも。 美味しいものは、もっと食べても良かったかなぁ。 んー……ケーキとか、シュークリームとか、結構好きでしたね。 そうなんですか? {微笑む}自分は甘いの苦手なのに、優しいじゃないですか。 ウチも、お姉ちゃんが、よく仕事帰りに買ってきてくれました。 うん……優しかった。 {微笑む}でも、なんて言うか、見てて放っておけないんですよね。 愛嬌があって、ちょっとドジで……すごく良い子。 そうですね、仲は良かったと思います。 勉強とか、頭を使うのは苦手だったみたいですけど……、 私が持ってないものを、たくさん持ってました。 だから、一緒に居て落ち着きました。 変な言い方になりますけど、 劣等感も、優越感も……ちょうど良いバランスだったのかもしれません。 お互いに頼って、頼られて。 ……だけど、お姉ちゃんは 頼ろうと思えば、 私の他に、いくらでも頼る先はあったんだと思います。 でも、最近 思うようになっちゃったんです。 もしそうしたら、私が、頼る先を失くしちゃうと思ったんだろうな……って。 {微笑む}そうですね。これは、私の勝手な妄想です。 でも、まぁ……、 ちょっとだけ、心配かな。 ……。 ぇっ? ……だめですよ。 自分の理由で、勝手に初めたことですから。 ……他人を理由にして、勝手に やめたりしたら、一番だめです。 うん……。 {軽く呼吸}……ちょっと、眠くなってきました。 寝ちゃったら、すみません。 ……うん。 あーあ。 来世は、猫になれれば良いなぁ。 猫になって、人間からご飯を貰って、自由に生きるんです。 それで……ちょっと年をとったら、優しい人の家に転がり込んで。 くっつきすぎない、見えない糸みたいな関係を築いていって。 大袈裟には悲しまれないけど、誰かの心に残り続けるような、小さな命を全うする。 そんな、綺麗な命になりたいんです。 ……なれるかな? {微笑む}……ありがと。 5.思いちがい ぅん……。 んー……。 んぁ、まぶし……。 んぅ? んぇ、はっ……? えっ? っ、ぁっ! ねぇ……ねぇ! 生きてる……えっ、なんで……? おはようじゃないですよ! え……なんで……? えっ、意味わかんない……。なんで……。 えぇ? {深呼吸}……そうみたいです。 意味が解りません……。 なんでそんなに余裕なんですか、死ねなくて困ったりしないんですか。 なんですかそれ……訳わかんないです。 {大きく息を吸う} はぁぁーーあーあーぁー。 もーやめやめ! 馬鹿みたい! もう! なんなの、人が決心したのに! もー! なに! んぅ! もう! なぐさめるの下手! もー! んー……。 {溜息}……もういいですよ。 はぁ……たぶん、本当に馬鹿だったんですよ。 あー、ばかばか。 ふっ、よいしょ。 ぅ、ぅう〜ん……んっ、んかあぁ。 うん、そーですね、これ以上ない快晴です。 {息を吸う}さ、どうします? えぇ……。……ふふ、まぁ、いっか。 じゃあ、何にします? カプチーノか、ココアか、キャラメルマキアート。 んふ、まだ残ってますよ、好きですね。 えぇ……もう要りませんよ。 ほら、車から水持ってきてください? 飲んだら帰りますよっ。 んっふふふ……じゃあ駅まで送ってあげますよ。私の不始末ですからね。 はいはい、どういたしましてー。 ほーらー、早く取ってきて下さい。 えぇ? だいたい後ろの方に積んでるに決まってるでしょー? ちょっとは考えなさい! もー、そんなんだからダメなんですよー。 6.事のおわり あ、やっと街並みになってきましたね。 そうですね、割と田舎の方なのに、今風な建物が多い感じです。 駅の方は、もっと綺麗だったと思いますよ。 ふーん? あぁ、朝ごはんとか食べます? うん、じゃあどっか適当に……。 田舎は駐車場が広くて良いですよね。 私みたいな、駐車が苦手なドライバーに優しい……。 ふむん、馴れですか……頭では分かってるんですけどね。 ……話は変わるんですけど。 なんかエアコンの効き、悪くないですか? うん。来るときは、そんなこと無かったんですけどね。 壊しちゃったかなぁ。 えっ、見るって? 車、詳しいんですか? ぇすごい、やるじゃないですか、パパ〜。 んっふふ、ごめんごめん。 じゃあ、車停めちゃったら、ちょっとお願いしますね。 ……はい、到着ー。 前から駐車ー。よし。 ぁはい。待ってます。お願いします。 はーい。 ボンネット……ここかな? おっ、正解。 ……んふ、意外と頼りになるじゃん、パパ〜。 ん? ふふ……な、ん、で、も、な、い、で、す。 んふふん。 ……あぁ、後ろの座席、戻しとかないと……。 ぁー……ん? あっ……あぁっ! ちょっ、ちょっと! 来なさい! はーやーく! ちょっと座って。 これはなんですか? そうですね、天井の窓が開いていますね。 なぜだか分かりますか? そうでしょうね。 ……なんで開けたんですか? ふん……それだけですか? なに? そうですか。 {溜息}……私は今、ちょっとだけ怒っています。 どうすれば良いと思いますか? {ため息} うん。はい、いいですよ。許します。 はいはい。 じゃあ、ここの支払い、パパが出してね。 うむ。 それと、あとでアイスクリーム屋さんにも行きましょう。向こうに看板が見えました。 もちろん奢りで。 なーにぃ? 不満? ……あぁ、甘いの苦手だっけ? んふ、まぁ自分が悪いよねー。 あとはそうだなぁ……。 うーん……。 ……あっ。 {微笑む}てがみ。 そ。 手紙、下さいよ。写真付きで。 うん、なら決まりです。 私もー……送りますね。写真付きで。 {微笑む} 忘れないでくださいね。約束ですよ? はい。 {息を吸う}さて、朝ごはん食べましょっか。 はー、お腹すいた。いっぱい食べよっと。 んー、そういうことを言われると、余計に食べたくなっちゃうなぁ。 え〜? ……んっふふ。はいはい。