メイドのミセリアです。 失礼致します、ご主人様。 今宵もよい夜ですね。 早速ですが、お体の調子の方はいかがでしょうか? 何もお変わりはありませんか? 少々失礼いたします…… どうやら、平熱のようですね。 顔が近づいて少し体温が上がったのを鑑みても、いつも通りでございます。 近頃、街の方では流行り病が広がっているとのことです。 ただでさえ、ご主人様はお身体が弱いのですから、 なにか変わったことがあったら、すぐ私めにお伝え下さい。 さて、体調もお変わりないのであれば、いつも通りお世話させていただきます。 まずは、ご食事の方から始めさせて頂きます。 ええ、ご主人様の大好きな野菜と肉のスープ、それと、おかゆでございます。 いつも通り、私が腕によりを掛けて作らせて頂きました。 では、まずスープの方から……少し冷ましますね。ふー、ふー。 では、お口を開けてくださいませ。あーん。 如何ですか? 好みの味付けにしてきたつもりですが。 どうやらお気に召して頂けたようですね。 それでは、二口目を失礼……ふー、ふー、あーん。 こうして食べさせてると、なんだか子供のようでございますね。 いえ、照れなくても大丈夫でございます。 ご主人様の身の回りの世話をするのが、メイドの仕事です。 そろそろ適温になってまいりましたので、冷まさなくても大丈夫でしょう。 あーんしてくださいませ。 しっかり噛んで食べてください。噛まないと栄養になりませんので。 ちゃんと栄養をつけて、身体の調子を良くすることが今のご主人様のお役目でございます。 スープはこれでおしまいです。次はおかゆをお持ちします。 これも、私がきっちり水とお米の分量を計って作ったものですから、 ご主人様が、一番食べやすい柔らかさになっています。 ふーふー、こちらもちょうどよい暖かさになっております。 はい、あーん。 おかゆも、柔らかいからといって噛まずに飲み込んではなりません。 しっかり噛んで唾液を出すことによって消化がよくなり、身体の健康に繋がるのです。 はい、それでよろしいです。 では、もう一口、あーん。 美味しゅうございますか? おかゆも丁寧に作ればこんなに美味しくなるのです。 どんな素朴な素材でも、素晴らしい料理を作って食べさせるのがメイドの使命なのです。 それでは、最後の一口をどうぞ。はい、あーん。 ……はい、お粗末さまでした。 次は、お体を拭かせて頂きます。 まず、お顔の方から失礼します。 動かないとは言え、やはり少々汗をかいておられますね。 夜、寝苦しことはありませんか? それなら何よりです。それでは、身体の右半分のほうを拭くので、少々くすぐったいかもしれませんが、我慢くださいませ。 恥ずかしい? 毎日の事なのに今更何をおっしゃいますか。 不潔にしていては治るものも治りません。私にお任せください。 では起こします。 んっ……くっ……。 それでは身体の下の方から拭いてまいりますね。 それにしても……少々、筋肉が落ちてきているような気が致します。 お体が良くなったら、一緒に運動をしないといけないようですね。 その時はこの私がみっちり鍛え上げて、ご主人様を男らしくして差し上げますので、覚悟しておいてくださいませ。 右はこれでよし、と。ふぅ……。 次は左半身の方を拭いて差し上げます。次は反対側にお体を起こしますね。 んっ……ふ……。 こちらも下の方から拭かせていただきます。 正直なところ、こうして身体の衰えという形でご主人様の置かれた状況を突きつけられるのは、結構心に来るものがございます。 まるで、私のやっている事が無駄だと言われているような、そのような気分に……。 いえ、違うのです。ご主人様の事を責めているわけではございません。 ただ、お医者様に見てもらって、私がこれほど尽くしても良くならず、不安を拭い去ることができなくて。 もしかすると、ご主人様がこのまま……。いえ、この話はやめましょう。 申し訳ありませんでした。ご無礼をお許しください。 最近、少々肌寒くなって来ているので、心の方にも隙間風が忍び込んできているのかもしれません。 はい、これで身体の方は綺麗になりました。 身体を、元に戻させていただきます。 ふっ…ん……。 以上でございます、ご主人様。