ご主人……ご主人ってばー……起きて、ごーしゅーじーん。 昨日、帰ってきていきなり、ばたって倒れるみたいに寝ちゃったから、 かなりびっくりしたんだけどー、 そろそろ、起ーきーまーしょー。 朝はとっくに過ぎちゃってー、もうおーひーるーだーよー。 服も脱がないでそのまま寝ちゃってるから、よごれてきたないよー。 なんか川のにおいとか血のにおいみたいなのもしてるし、ちょっとくさいよー。 いつも「おいユニ、外で泥だらけで帰ってきたらちゃんとお風呂に入って着替えなさい」 っていつもいってるのにー。 ご主人はやらないの、ずるだよご主人ー。 もー、そんなに寝てると、お馬さん……?あれ?お牛さん?になっちゃうよー? 朝ごはん、せっかく頑張って作ったのに、ご主人が起きてこないからー、 冷めちゃったよー。むー! ユニ、もったいないから一人で食べちゃったよー。 もー、ご主人ってばー。起―きーなーいーとー……。 ほらー、起きて!!起きて!!起きろ起きろ〜〜!!えいえい!!つんつん!! むぅ〜……なんで起きないのー? あんまり寝てるとだめだぞー。ぼけぼけになっちゃうぞー。 うーん……そっか、わかった。お仕事?で疲れてるんだね! 昨日も、よっぽど疲れたのか、何も言わずに寝ちゃったもんね。 むむ!わかった!えっへん!わかりました。 ユニは賢いから、全部わかっちゃった。 人間はお前と違って疲れやすいから起こすなー、 っていつも休みの日には言ってるもんねー。 ユニ、すっかり忘れてたー。 うん、ユニは賢いからー、ご主人のけんこーをちゃんと気づかうことができますとも。 そーれーじゃーあー……けんこーしんだんをやりまーす! はーいおきゃくさまー、熱はありますかー? うーん……ぺたぺた……熱はないみたい? むしろ、ちょっと?いつもより?冷たいですねー。 これは、ひえひえ病ですねー。 ひえひえ病を治すにはー、ユニが温めてあげます! いきますよー。 ぎゅう……すりすり……。 どうですかー、おきゃくさまー。 ……ご主人って、ユニの身体、いつも抱っこして暖かいって言ってくれるもんねー。 今日はユニの方からぎゅってして温めてあげるぞー。喜べー。 ぎゅーっ……。どう、温まった? どうかな、ご主人? 元気出たかな? こんなに長い時間起きないなんて初めてだよう……。 これは……まさか病気なのかな……あ、わかった。 熊さんの絵本で読んでくれた「冬眠」なのかなー? ご主人は熊さんとかカエルさんが冬眠するっていってたのに、 人間さんが冬眠するのは知らなかったよう。 ご主人のアホー。冬眠するのはいいけどさー、 あらかじめ、ご主人が冬眠の時に、 ユニが何すればいいかは教えておいて欲しかったかなあ……。 何して過ごせばいいかわからないのは困っちゃう。 んもー、次に冬眠する時はちゃんと教えておいてよね。 ごしゅじんー、ユニ、寂しいよぉー。 起きてよぉー。ねえご主人―。 ボール投げてよぉー。かけっこしようよぉー。 うー、はやく春が来ないかなあ。 あ、そうだ!おなかすいたらおきるかな? お昼のごはんはどうする?食べるー? 食べないなら作らないよー? どっちー? あー!そうだった。お昼つくるのに冷蔵庫、もうほとんど何も入ってなかった。 そうだよそうだよ……料理の材料を買ってきてくれるのはご主人だった……。 困ったな……うー……ご主人……寝てていいよって言ったけど、ごめんね。 ちょっとだけ起きて、野菜とかお肉をたくさん買ってきてくれないかな? ほら、そうじゃないと、ユニもご主人もお腹が空いて倒れちゃうぞー。 ……いじわるしないで起きてよー……ご主人が買ってきてくれないとー、 冷蔵庫の中のものが全部なくなっちゃうぞー。 そうしたら、ユニはお腹がぺっこぺこになって、悲しくなっちゃうぞー。 ご主人はユニが悲しくなっていいのかー? だめだぞー? むむむ、そんなにずっと寝てて逆に疲れないかなー? 寝すぎるのは身体に良くないんだよ? 疲れちゃったでしょ? 一旦、いっしょにご飯食べるために起きよう、ね? ……変なの。 でも、困ったなあ……。 ご主人がご飯の材料買ってこないとー、 ユニはご飯が作れないのだー。 (不安よりは困った感じで) どうしよう……一人で街に出るのは怖いし……。 ユニ、家の周りより遠くに行ったことないんだー……。 お金、とか、そういうの、持ってないし……。 お店ってどこにあるのかもわからないし……。 うーーん、うーーん……。 ……にゅわーーー!! 悩んでもしょうがないなー。 ユニがお腹空いて倒れるより先に、 ご主人がお腹空いて起きてくる、はず。 ふふふー。だってご主人は朝ごはん食べてないもんなー。 ユニは朝ごはん食べたもんねー。えっへん。 ……お返事がないけど、ほんとに大丈夫ー? どうしたの? 何か嫌なことでもあった? 最近流行りの「ひきこもり」なの? “しゃかい”との“せってん”を“きょぜつ”してるの? 辛いことあるなら、ユニがなんでも相談にのるよー? ねえねえ……なにか、人には言えない、悩みでもあるのかな? ねえ……こっそり、ユニにだけ教えてよ……んー? ね、ね、どうなのさー……? うにゅー……。もくひけんですか。 そっかー。わかったよー。ユニにも言えない事なのかー。 “さいきんのわかもの”は大変ですねー。 うんうん、わかった。 喋りたくないなら、何も言わなくていいよー。 よしよーし……ご主人はいつも頑張ってるもん。 ユニにご飯いっぱい食べさせてくれるしー、 暖かいおうちやお風呂も用意してくれたしー、 一緒にお風呂入ってくれるしー、 いっつも頭を撫でてくれるしー、 いっぱいいっぱい愛してくれるもんね! 大丈夫だよ、ご主人……。 ユニ、全然我慢できるから。 ユニね、思い出したんだ。 ユニ、ご主人に出会う前は、ずっと寂しくて、お腹が空いて、泣いてた。 この、ひろーい世界に、ユニ以外誰もいないって、ずっと思ってた。 でもねでもね、今のユニは違うんだ。 もう、寂しいからって、お腹すいてるからって、わんわん泣かないんだよ。 ご主人が起きてくるまで、ちゃんといい子にして、待ってるの。 またご主人と一緒に遊ぶまで、待っておくからねえ。 あはは……だから、ご主人は、安心してぐっすり寝てていいんだよ。 ユニ、ちゃんと、覚えてるよ…… ユニがここにきたばっかりで、よるがこわーいときに、 ご主人がぎゅって抱きしめて、すっといてくれたの。 あったかくて、一人じゃないんだって。 これが「おうち」なんだなって……。 だからね……、今日はおやすみしていいよー……。 ご主人がおやすみしてるあいだ、ユニがいっしょだからねー。 ご主人は何もこわいことないんだよー。 そうだ、むしろご主人が元気になるまで、ずーっとだらっとしとこうよ! そしたら元気になるよ!きっとね! ユニがゆるす! のんびり、ぐっすり寝てー。 ミルクのようなあまーい、 あったかい夢のなかでゆらゆらしてー、 身体も心も全部、が元気になるまでー、じっとしてよ? よしよし……。いいこいいこ。 ユニの隣で、ぐっすり寝ちゃおうねえ……。 ねーんねーん……ころりよー……。 いっぱい……いっぱい……おやすみよ……。 よしよーし……。元気になーれ……元気になーれ。 元気になってー、またユニと一杯お外で遊ぼうねー……。 そのために、今は休んでいいんだよー……。 そうだ……今度は、ユニがご主人に"お返し"しちゃうね。 私がずっと、ご主人のこと抱きしめておくから……。 春が来るまで、ぐっすり眠って、ご主人……。 夜は怖くないよ……。何も怖くないよ……。 寒くない……怖くない……。 ふにゅぁ〜〜……なんだかユニも眠くなってきちゃったなあ……。 しょーがないからー、このままユニも一緒に、冬眠しちゃおうかなー。 ごろーん。にゃははは。ご主人と一緒に、ユニも冬眠だー。 熊さんはこうやってくっついて、家族で冬を越えるんだよねえ。 春が来るまで、丸くなって……。じっとして……。 いっーぱい夢を見て過ごしちゃおう……。 ふふぅ〜……ユニとご主人で、一緒に遊ぶ夢……。。 暖かい春のお花畑……。 かくれんぼ……したいね……。 むにゅ……それじゃ、最初はユニが隠れる番だよ……。 むにゅぅ…… えへへ……まーだだよー。 にゅふふ……絶対、探しに来て……どこにも、いかないで……。 むにゅ…… もー……、いいよー……。