ただいまー。やっと入れたー。 あ、お、おはよう。 ご、ごめんね遅くなって……サーバー混んでて、ログイン遅れちゃった…… で、でも入れてよかった……会えて嬉しい、よ。って、昨日も会ってるのに、な……。 あ、それに、こ、こんばんは、だよね、こんな時間だし。 ……って、ゲームのキャラクターの君に、時間とか、関係ないのに。 この癖、最後まで治らなかったなあ……。 ……わあ、す、すごい。花火たくさんあがってる……。 そ、そっか、今日で最後だから、特別演出があるんだ…。掲示板になにか、か、書いてないかな……。 へ、へぇ~、花火大会だって。ラストは花火大連発って書いてあるよ。すごいねぇ。 って、わ、わわ、始まりの町なんて、もう今じゃ過疎って人いなかったから、選んだのに…… お、思ったより人いる……。 ちょ、ちょっとはじっこ、いこう……こ、こっちきて。ね? ……花火、き、きれいだね? ……なんていっても、君には、わ、わかんないよね。 き、今日で、最後だから、君と会えなくなったら、私の話し相手、いなくなっちゃうな、なーんて……。 え、えっと。明日からは、もう、ログインサービスとか、関係ない、のかあ……。 三年間も、ま、毎日ちゃんとログインして、こまめにポイントためたりしてたんだけど、な……。 ね、ねえ、君も、そう思うでしょ? わ、わたしけっこうそこそこ真面目に、やってた、よね。へ、へへ。なんて。 な、なんだかんだで、あと20分もすれば、このゲームとお別れかあ。 最後に、なんか記念クエストとか、し、したほうがいいのか、な……。 他のプレイヤーさん、とか、は、フレンド同士であいさつ回りとかしてる、のかな……。 でも、わたし、ソロだったから、な……。フレンドとか、ぜんぜんいないし。 あ、ソロじゃないか。き、君がいたもんね。 まあ、君くらいしか、私が話せる相手なんて、いないんだけど、ね。 そんな君相手でも、うまく話せないから、わたしほんとダメなんだけど、さ で、でもさ、君は、このゲームの最初に引ける初心者ガチャで、 出てきた……き、きてくれたお助けキャラで、 しかも最初のレアキャラだったから、 や、やっぱり、一番つきあってきた、っていうか た、頼りにしてきた、から……。 そのあともガチャでいろんなお助けキャラも、きて、くれたけど。 選べるお助けキャラは一人だから、私は、ずっと、君と二人だった、から。 このゲームも、ほんとはこんなに長くやるつもりなんてなかったんだけど、 ……君が、いてくれたから、やってた、っていうか。 そ、その……わたし、ゲームのこと本当になんにもしらなくって、 ひとりでここにきてすごく緊張してたけど、 いきなり虹みたいな光がきらきらってひかったら、 あらわれたのが君で、その……すごく、た、頼もしく見えたっていうか……。 ふ、ふふ……こんなこと、お助けキャラの君に、言うの、ほんと自分キモい、よね……。 お助けキャラって、簡単なコマンドで自動で動くだけで、クエストとかがしやすいようにいるだけで、 返す言葉も設定されてるだけで、会話なんてできないのに、ね。 最新のゲームだったら、そういうキャラとでも、も、もっと会話できるらしいんだけど、さ。 このゲームが出たときだってすごい、すごいってなってたのに。 最近の技術のし、進歩? っていうの? ほんとにすごいんだね。 ……でも、他のゲームに、君は、い、いないから。 新しいゲームにうつる人が増えて、このゲームをやる、ひ、人が少なくなっても、わたしはこのゲームで、君と戦いたかった、から。 今日まで、ずっと、毎日ログインしてきたんだよ、ね。 でも、それも、おしまい、かあ……。 サービス終了、だもんね、仕方ない、んだよね…。 さ、最初はさ、こういうゲーム、はじめてで。 ネットで調べたら、君はお助けキャラの中でも、す、すごく強いって書いてたのに。 わ、わたし、リアルでも不器用なのに、ゲームでも、ほ、ほんとダメで。 ぜんぜん、君のいいところ、うまく引き出せなくって。 レベルあげ、とか、も、うまくできなく、って。 わたし、ほんとに、うまく動けなくって。 すぐ、ま、負けちゃったり、して。 で、でも、君に、勝ってほしくて。 だ、だって君は、本当はもっと強いんだって、信じてたから。 がんばって、狩場回って、レベル上げて、君を強くして。 もう一回、って挑んで。 何度もそんな風に、負けて、挑んで、って繰り返して。 ……こ、こんな不器用なマスターで、ごめんね。 君はもっと、強くて、すごいはずなのに。 ぜんぜん、ダメ、だったよね……。 むしろ、マスターって呼び方もにあわないよね……わ、わたしなんかが、マスターなんて、できてないし、 それに……君が私の下にいる、とか、私が上、とか、そういうのおもいたくない、シ、システム的に、そういうことになってるのわかってる、けど、 ほんとは……わたしは……やっぱり、いや、だなあ……。 はあ……ほんと、ぐずぐずして、わがままばっかり……なんでゲームでもこんなんなんだろ。 こ、ここのさ、始まりの街でもさ。 君がきて、はじめたばっかりのころ。 初期装備のわたしとレアキャラの君が並んで歩いてるだけで 他のプレイヤーさん、す、すごいうらやましいっていう目でこっち見ててさ。 うれしかった。 リアルでなんの取り柄もなくて、ぼっちで、と、友達もいなくって、 そんなわたしが、君がいるだけで特別な目で見られてるって。 どど、どうだ、って、自慢したい気分だった。 ……で、でも、そんなのなんにも、わたしの力じゃないのに、ね。 君が特別なだけで、わたしはゲームでも、だ、だめだめなマスターだった。 さ、最初の狩場でも、わたしがすぐにモンスターにやられ、ちゃって、 君だけ一人で戦ったりして、たよ、ね。 あ、も、もちろん、街にもどるっていうコマンドは、つ、使えるん、だよ? でも、なんだかね。 だれかが、わたしなんかのために、たた、たたかって、がんばってくれるって いままで、そんなこと、なかったから、 う、嬉しくて……。 だ、だから、そのまま君に一人で戦わせて、 わたしはその様子をドキドキしながら見てて……。 ……そ、そしたら、当たり前だけど、君はやられちゃって。 わたし、バカだって、そこで、わかったんだ。 君は私を守るためにいるんじゃなくって、 い、一緒に戦うために、いるんだ、って、こと。 ……そこからは、君と二人で、た、たくさん、冒険したね。 少しずつ、強くなって、いろんなダンジョンにいけるようになった。 洞窟、大森林、海に、火山。 ゆ、雪のエリアは、ほんっと大変だったよね。靴も、雪とか氷を歩ける用の装備にしなきゃいけない、とか 装備作り、大変だったなあ……。 ……わたし、む、無課金だった、から……。 装備もぜんぜん揃えられないし、 君のための装備も作るのが大変で……。 そのせいで、君には、苦労、かけちゃったかもしれないけど……。 は、はは。プレイヤーじゃない君に苦労とか、おかしい、のかな。 で、でも、やっぱり、そう思っちゃうんだよね。 ほ、他のマスターなら、もっとお金つかって、君のこと、もっと、強くできたりしたのにね。 実際、君と同じキャラで、もっともっとすごい装備整え、てさ、たくさん、お金使って、強くしたんだろうなっていう人も、いたし。 ちょっとうらやましいな、って、思ったりもした、けど。 ……で、でも、わたしは、そういうこと、したくなかった、から。 君には面倒、かけちゃって、ごめんね、って、思うけど。 …わたしは、ふつうにゲームして、 ふつうに、一緒に強くなりたかった、んだよ、ね。 君と、一緒に。 ……わ、わたしのわがままに、つきあわせて、ごめんね。 でも……ほんとに、楽しかった、よ。 あ、あのね……。 そ、あの、その………。 私、いま、本当にバカなこと、言おうと、してる。 ……こんなこと今まで誰にも言ったことないし、 しかも、それを君に言おうとするなんて、 ……す、すっごく、バカ、だと、思う……。 いや、ほ、本当はさらっと言えるのか、な? ……ううん、みんなが君のことをただのプログラムだと思ってても、 私には……ずっと、一緒に冒険してくれた、ひと、だから。 私にとっては……誰より、ずっと、一緒にいてくれた、ひとだから。 言って、何が変わるわけでも、なんでも、ない、けど。 ……や、やっぱり、どうしても、言いたい、んだ。 私にとっては、大事なこと、だから。 だから言う、ね。 あの、あの、ね。わた、し……。 ……ごご、ごめん、ちょっ、ちょっと待って。えっと、えーーっと……。 あー……もう、ぜったい、顔、あつい……ちょ、ちょっと深呼吸するから、ま、待って、ね ふ、ふう……。 よ、よし行ける……。 ……や、ま、まって、君の顔見たら、はは、恥ずかしくなってきた……。 ううう……。もう、見慣れてるはずなのに……いざとなったら、もう、心臓ばっくばく… なにこれつらい……。 いや、でも、が、がんばれ、自分。 ……もう、最後に、なっちゃうんだから……。 ……ふう……あの、ね。 ………君のこと、が、す、きだよ。 あ、はははーー!!!……ほんとわたし何言ってるんだろ……。 ほ、本気で好きになったのがゲームのキャラ、とかおおおおかしいよね。 ガチ恋、とか……。 君は、な、なにも答えてくれない、のに。 わたしが、ただ、話しかけてるだけ、なのに……。 ううん、それでも、それでもよかった。 君と、一緒に、いれるんだったら。 それで、よかった、のに……。 で、でも、もう会えなくなっちゃうん、だよね。 そうだ、時間……もう、残り5分切っちゃった、ね……。 ……うん、私、楽しかった、よ。 君と、また、ドラゴン倒しにいったり、したかったな。 さ、最初は、一番よわい敵でも、だめだめだったのに。 君と一緒なら、古(いにしえ)の森のドラゴンもなんとか倒せるようになったよね。 君の装備の素材集め、お、終わってなかったから、 天空の雫とか、ドロップ狙いの狩りに行きたっかたんだけど、なあ。 イベントクリアで見られる、特典のオーロラ、 ……君と一緒に見れて、嬉しかったなあ……。 ……は、花火、もう、終わる、ね。 もう、このゲームも、お、終わるね。 ……君と、いる時間も、おわり、だ、ね。 ……あ、ありがとう。 三年間、楽しかったよ。 ははは……ほんと、最後のログインなのに、君にむかって、だらだら、話して、お、終わりとか、 ほんと、わたし、だめだめ、だね……。 ……だけど、わたしらしい、かな……。 ……だめだめな、わたしのこと、君はもう、知ってるから、い、言っちゃう、けど。 ……君のいない毎日なんて、もう、わたしの知ってる毎日じゃなくなってるんだよ、ね。 そんな毎日が明日から、はじまるん、だなぁ……。 ……ねえ。 ……明日、も、もしも、もしもの話だけど、 サービスは、終わってるはずなのに、 ゲームを起動して、 ログインしたら、 きらきらって光って、 また、君に会える奇跡が、 起こったり、しない、かなあ……? ……そんなこと、ない、よね。 わかってる、よ。 こんな未練たっぷりじゃ、君に怒られちゃうかも、ね……。 ……あ、これ、……わあぁすごい、花火クライマックスだあ。 ……そっか……それじゃあもう、お、終わりってこと、だよね……花火も、ゲーム、も……。 あ…‥すごい……花火が文字になってる……。 えっと……。 あ、り、が、と……う。 ……へ、えへへへ。 ……うれしい。は、はじめて聞けたね、君からの言葉。 ……う、うん、君と一緒に冒険した、洞窟も、海も、雪山も。 わたしはずっと、ずっと……覚えてる、から。 こ、このゲームの記録がなくなっても、 わたしは、ぜ、絶対忘れない、から。 ……あの、きらきらってした、光を、覚えてるから。 だから、明日から……新しい毎日を、が、がんばるよ! で、でも……君のいない毎日の中で、きっと君を探しちゃうかもしれない。 だけど、呆れないで。 君は私の「お助けキャラ」なんだから。 私のこと、見守ってて、ね!