本編を視聴後にご覧ください。 ****************  近頃、不思議なことがある。 いや、あの、この部屋で寝ると、3日に1回の割合で見る夢も十分変なのだが。 ――チョコボールが減っていくのだ。  何を言っているかわからないと思うので、順を追って説明しよう。 この間、スーパーの福引に当たった結果、チョコボール1年分という、ありがたいのかありがたくないのか。 分からない景品が当たった。 一気に食べるには大変だと言うことで、3か月ごとに64箱入りの段ボール1個が送られてくる。 それも、中身はもちろん全部チョコボールが送られてくる。  1日1個消費していけば、まぁ、2か月でそのチョコボールは消える計算なのだが、そんなにチョコボール食べないだろうと思う。    最初は、食費が浮く、おやつ代が浮くと思っていたが。 ――そんなことはない。すぐに飽きる。 周囲にも分けていたんだが、もう、もらってくれる人もいなくなった。  そんな中、第2便の段ボールが届き、開梱したものの、私はチョコボールを冷蔵庫に入れたまま放置していた。 が。 それが、気づくと無くなっているのだ。  もしかして、私が夜の間、夢遊病者のように食べているのかもしれないが、少なくとも食べた覚えはない。 ただ、2日に1つずつくらい、チョコボールが無くなっていく。 これはどうしたものかと思い、実家の両親と一緒に住む祖母に連絡した。  「おばあちゃん、不思議なことが起こってるのよ」    私の祖母は博学だ。 元々は、学校の国語の先生をやっていたらしく、色んな本を読む人で。教師を引退してからは山奥に祖父と住んでいた。 祖父が亡くなり、足を悪くしてから山奥の家は親族に譲り。私の両親と一緒に暮らすようになった。 私が高校生になるまでは、山奥の家はあったから、よく夏休みと冬休みは泊まりに行った覚えがある。  「なるほどねぇ。お菓子が消えていく、と」  「そうなの! 消えていくの! 食べてないのに」  「最近、いいことあった?」  「結構あったかもしれない。――例えば、そもそも福引が当たったりとか、行きたかった部署に配属されたり」  「いい夢は見れている?」  「いい夢――」    夢を言われて、一瞬「うん、とてもエッチな夢見られてる。気持ち良くてサイコー」と自分の何かが口にしたものの。 それは絶対に親族に口にしてはいけないと思い、寸での所で飲み込む。  「うん、見れてる」  「そう、それじゃ、きっと妖精さんが幸運の対価として持って行ったのよ。そう言うの、世界中の色々な民話であるから。困ってなければいいんじゃない?」  「まぁ、逆に助かってるけど――」    消費期限が過ぎてしまうよりは、妖精でも何でも、美味しく食べてもらえる方がいい。 確かに言われてみれば、困ったことは何一つないんだから、まぁ、それはそれでいいか。 そう思って納得した私は、祖母と他愛ない話をした後、歯を磨いて眠りに就く。  真夜中。ガサゴソ、パリポリという音がして、少しだけ起きたけど。 私は気づかないふりをして、もう一度眠りに就いた。  いつも助けてくれて、ありがとね。