先生。お待たせしました。アルバイト終わりました! た? はい。そうです。私はディディです。ふふっ。 ご自宅の件、災難でしたね。まさか水漏れするなんて。 しばらく教師寮にお住まいになるって聞きました。 お引っ越しはいつになるんですか? そうです。 『掃除婦は何でも知ってるのよ』っておっしゃってました。 あ、もう引っ越されたんですか。 ふふ。じゃあ、今日からお互い寮生ですね。 でも、それじゃあまだお忙しいでしょうに。 お仕事押し付けられるなんて、ひどいですね。 うふふ。お手伝いします。 プール掃除。じゃなくて点検? でしたよね。 あ、あとはこれを運ぶだけなんですね。私にも下さい。 八時過ぎる前に終わらせちゃいましょう。夜ご飯、楽しみですね。 先生? 少し持ちすぎじゃありませんか?  そんなに一気に運ぶと……。 あ……! 先生! 大丈夫ですか? すぐに誰か呼んできます。痛いところはありませんか? 本当ですか……? とにかく、早く上がりましょう。 風邪をひいてしまいます。 あ、そうでしたね。先生は、プール授業ありませんよね。 ちょっと安心しました。ふふ、確かに気持ちよさそうです。 わかります。 ……なんだか、ちょっと先生が羨ましくなってきました。 じゃあ、秘密にしておきましょう。どんどん泳いじゃって下さい。 タオル持ってきますね。 はい? えっ? でも。 でも……。 ……っ。 あはは。すごい! 思ったより水がはねちゃいました。 これで、二人揃ってびしょぬれですね。 ふふ! ごめんなさい! 加減ができなくて。 先生。さっきのご質問ですけど。 おっしゃる通りです。私、本当はプール嫌いじゃないです。 昔は好きだったんです。 水の中にいるのって、とても気持ちいいなって思います。 でも、ある時から怖くなった。 見られるのが怖くて、近寄れなくなった。 人の目を気にして、やりたい事がいつもできない。 そんな自分がずっと嫌でした。 でも。 入っちゃいました! ふふふ。おかしい。 こんな簡単な事だったんですね。 先生はすごいです。私に、いつも色んな事を教えてくれるんです。 あっ! もう、先生、ひどい。 あっ⁉ もう! 怒りましたよ! ふっ、ふふっ……ふふふふっ! あの、先生。 私……。 あっ……! 先生! 見て! 花火です! すごい……! ここから、こんなに綺麗に見られるんですね。 あの、ご存知でした? そうですよね。私も知りませんでした! はい。わかります。すごく『青春』って感じがします。 はい。秘密です。こんな素敵な事……誰かに言うはずありません。 ああ。いいんです。 何話そうとしてたか、忘れてしまうくらいの事だったので。 ……先生。私今日の事、ずっと忘れません。 先生に会ってからずっと、夢の中にいるみたいです。 本当に……ありがとうございます。