◆タイトル『ここから始まらない幸せ』 ◆あらすじ いつもの道、いつもの時間。彩りを失くしていく世界の中、セイラは出会う。 そうして、ここから始まらない幸せ。 ◆登場人物 ・男(あなた):30歳前後の男性。 誰かを救うこと、誰かに救われることを願って旅をする。小さなことで謝りがち。 外見は、中肉で長身。髪は、今は大雑把に短く揃えられている。無精ひげ。 服装は、着流し姿を適当に崩している。旅の途中、一目惚れで購入したボロだが、元から着ていた服と交換したので、服はそれしか持っていない。 ・セイラ(せいら)(私:わたし):10台後半くらいの女性。 外見は、身長はやや低め、体型は全体的に かなり細身。ストレートの髪を肩ほどまで伸ばしているが、自分で適当に切るので、あまり綺麗に切り揃えられてはいない。殆ど手入れもできないので、多少傷んでいる。 目は、どちらかと言えばタレ目で、瞳の色は青藍色。 基本的には毒気の無い良い子。悪い言い方をすれば、世間知らず。性格は、外面上はサッパリした風だが、どこか気弱で打たれ弱い。 水準は高くないものの、一般的な知識は祖母から学んできた。 数年前に祖母を亡くしてから、独りで小屋に住む。小屋の周辺は、比較的 自然が残る地域で、細々と食べていくことが出来ている。 これまで、祖母以外の人には数えるほどしか会ったことがなく、他人(ついでに異性)という存在(と概念)が今一つ理解しきれていない。 ◆あらかじめストーリーで提示されない部分 世界観だけで言えば、終末系な世界観。 大昔の大戦後、朽ちていく世界を人々は生きている。人のほとんどは死に、自然の多くは朽ち、空に残るのは仄かな光。   ◆パート分け 0.エピローグ~手紙 1.大きな落とし物  遭遇~お持ち帰り 2.危うい切っ掛け  私のベッドです~水汲みへ 3.変わらない毎日  ごちそうさま~おやすみなさい 4.伝えたい形  思い付き~荷物の中に 5.プロローグ~ここから始まらない幸せ   ◆本編 0.エピローグ~手紙 元気かな? いつでも良いから、この手紙に気づいたときに、 読んでくれたら嬉しいな、と思って書いています。 一緒に行こう、って……誘ってくれて、ありがとう。 すごく嬉しかった。 でも、きっと。 臆病な私だから、最後まで 決心がつかずに居ると思う。 今のまま、何も変わらないことを、選んでしまうと思う。 私には、まだ、始める勇気が持てません。 いつか終わってしまうものなら、 最初から無い方が良い、って、思うから……。 でも、いつか。 それが いつかは分からないけど、 私にも、勇気を持てる日が来たら、 きっと、一緒に行かせてください。 一緒に、始めさせてください。 あなたと歩む幸せを。 私にも、始めさせてください。   1.おおきな落とし物 ん……? なんだろ……。 えっ、人……!? あの……大丈夫? あのっ。 ねえ……。 {耳を傾ける感じの息遣い} 息は……してる。 よかった。 んー、どうしよ。んぅ……。 ちょっとゴメンね……。 んーふんっ。 ……重い。 よいしょ、ふっ、んっ、んぁ……。 ふぅ……んっ、ほい、しょっ、あぁ。 おもいー。ふんっ、んーん! 2.あやうい切っ掛け よい、しょ。 ほっ。 よし、おわり。 ん、よっ。 {軽い溜息} 今日はちょっと、いつもより 空が明るいかな。 ん? あぁ、起きたんだ。 からだは大丈夫? なら良かった。 道端で倒れてたんだけど、覚えてる? {微笑む}、そ。 変なところ打ったりは してないと思うけど。 気になるところがあったら、教えてね。 うん。 お水のむ? ふふ、遠慮してる? この辺りは、飲める水が まだ沢山あるから。大丈夫だよ。 そう。じゃあ、飲みたくなったら言ってね。 あぁ、しばらく寝てなよ。病み上がりなんだから。 私しか居ないし、誰も気にしないよ。 うん、私のベッド。 え、大丈夫だよ、服は変えちゃったから、汚れないよ? ごめんね、勝手に。 んー、うん。気にしないよ? ベッドは もう一つあるんだけど、最近 使ってなかったから……。 さっきまで、すぐに使って貰える感じじゃ、なかったんだ。 いいよ、こっちの部屋の方が、色々揃ってるから便利だし。 {微笑む} そうだ、なんであんな所で倒れてたの? 行き倒れ? 病気? え……それって、キノコみたいなやつを 食べたのかな……? あぁ、そうなんだ……。色々……。 でも、それなら、まだマシな方だったと思うよ。 見た目は普通でも、食べるとすぐに死んじゃうようなのも あるから……。 詳しいんだ? っふふ、そうだね。 詳しかったら、倒れてなかったかも。 でも……びっくりしちゃった。 いつもの道に、人が倒れてるんだもん。 見つけたときは、何かと思っちゃった。 ん? うん。 家までそんなに遠くなかったから。 ……お尻、ちょっとだけ、引き摺っちゃったけどね。うふふ。 {前述のとおり、2パターン収録をお願いします。。。。。} あっ、痛い? ごめんね……。 うん、でも……。 ぁっ、薬、塗ろうか? そう……? ……一応、そこの引き出しに入ってるから、もし痛んだら使ってね。 私に言ってくれても良いし。 あと、さっきまで着てた服は、洗って、いま干してるから。 {微笑む}気にしないで。 不思議な服だよね、どうやって着るの? あぁー、確かに、腰で ぐるぐる巻いてたね。 へぇ~。不思議。 あなたが住んでたところは、あれが普通? あぁ……{苦笑い}、ただの好みなんだ? そうなの? じゃあ、一目惚れだったんだね。 ふふっ。 んー……旅の途中で、ってことは、 やっぱり、この辺りの人じゃないの? へぇ、すごいね! どんなところに行ったの? 教えて? ? どうして? ……ぁー、あんまりー、言いたくなかったかな。 じゃあ……どうして。 ぁ……。 ぁぁ、そうなんだ……。 えへ……私、ずっとここに住んでるから……。 ここ以外の場所が、そこまでの事になってるなんて……。 あぁ、ううん、大丈夫。謝らないで。 全然知らなかった訳じゃ、ないから。 うん……。 あ、そうだ。 日が暮れる前に、川まで、水汲み に行って来ても良いかな? ほんと? ありがと。 でも……手伝いは、別に大丈夫かな。 ついでに、身体も拭きたいから。 {微笑み}……ううん。 じゃあ、帰ってきたらご飯にするから、待っててね。 あと……それでも、色んな話、きかせて欲しい。 うん。 ……そうだ。そこのハーブが入った お水、好きに飲んでね。 {微笑む}じゃあ、行ってきます。   3.かわらない毎日 ふぅ……ごちそうさま。 はい、お粗末さま。 ホントは、もっと、食べさせてあげられたら良かったんだけど……。 もの足りなかったかな? ……そっか。そう言ってもらえると、ちょっと助かるかな。 え? んー……別にー、何も困ってないかな。 どうしたの、突然。 っふふ、律儀だね。お礼なんて良いのに。 うーん……でもー、そうだなぁ。 んぅ……ちょっと、悩み事ならあるかも。 うん……。 あのね……私って、ほとんど 生まれた頃から、この小屋に住んでるんだ。 そう。 物心ついた頃には、おばあちゃんと二人で住んでた。 この辺りは、まだ そこまで土地が枯れてないし、 果物とか、動物の お肉とか……どうにか二人でやっていけてたんだ。 おばあちゃんは何でも知ってた。 私は、それを教えてもらって……、 少しでも一緒に暮らしやすいように、たくさん覚えた。 そうやって、私はここまで成長したし、おばあちゃんも頑張って生きた。 私も、おばあちゃんになるまで ここに居て……、 最後には、ここで死んじゃうような気がしてた。 今まで、おばあちゃん以外の人と会うなんて、ほとんど無かったし、 こうして一緒に、ご飯を食べることなんて、一度も無かった。 うん。 今までそれが当たり前だったし、 たぶん、これから先も 当たり前なのかな、って思ってた。 ……でも、今日は、すごく新鮮な日だった。 道端に人が倒れてたのには、びっくりしたけど。 {苦笑いを返す} {一呼吸}……。 それで、話を聞かせてもらって……、 世界って、ここだけじゃないんだなぁ、って思った。 ……ううん、違うかな。 私の世界って、ここだけしか無いんだな、って、気づいちゃったのかも。 朝日が昇って、夕日が沈んで……月におやすみなさいを言う。 その間に、顔を洗って、森で食べ物をとって、水を汲んで、ベッドに入る……。 ねえ、これって……幸せに見えるかな。 {やや自嘲気味な笑み}……私はね、とっても幸せだと思うんだ。 ずっと過ごしてきた毎日を、今日も変わりなく送ることが出来た。 今までと変わらない。 そんな毎日を、これからも変わりなく過ごし続ける。 ……一日の終わりに、ベッドでそのことを噛みしめるの。 深く考えたことは無かったけど……。 たぶん……これって、幸せなんだと思う。 ……今も本当にそう思えてるかは、自分でも分からないけどね。 {軽く呼吸} ……ねえ。 んふ……やっぱりなんでもない。 ぅふ、なんでもないって。 ん…… じゃあ、言うけど……。 もし、私も連れて行って、って言ったら……どうする? ぁぁ……ごめんね。困らせちゃった。 言ってみただけだから……。 え……。 ん……本気? 私、何の役にも立たないし、体力も無いよ? そんな、お礼されるほどの事はしてないよ……。 それに、だからって連れて行くなんて、やり過ぎだよ。 それは……{吐息}、 ……{はにかむ}そっか。 ありがとう。 でも、ごめんね。 ホントに、言ってみただけなんだ。 うん。 ……ちょっと、羨ましかったのかな。 いまの世の中で、そういう生き方をする、っていうのが。 ……そうだね。 やってみたい、って気持ちはあるんだ。 でも……なんて言うのかな。 ちょっと、怖い……の、かな。 うん……そう。 今までずっと、この 狭い世界で暮らしてきた私が……。 毎日おなじ暮らしをして、歳をとって、死んじゃう。 そんな、変わらない世界に暮らしていた私が……。 知らない世界に踏み出すのは、すごく怖い。 もしもそれが、もっと大きな幸せだったとしても……、 一歩を踏み出して始まる幸せより、 今のまま、始まらないままの幸せを選んでしまう。 {息を吸う} ……それくらい、怖い。 うん、ありがと。 ……それに、始めたら、いつかは終わっちゃうしね。んふふ。 さ、お皿かたづけちゃうから、もう寝ちゃっても良いよ。 夜なんて、やること無いんだし。 大丈夫、手伝って貰うほどじゃないよ。 病み上がりなんだから、早く寝なさい。 うん、おやすみなさい。 うん。   4.つたえたい形 はぁ……終わったおわった。 ……お水、飲も。 よいしょ。 ふぅ……。 はぁ。 ん……。 どうすればいいのかなぁ、おばあちゃん。 {軽い溜息} {水を二口ほど飲む音、というか声?} あ……。 そうだ。 {椅子から立ち上がる} ん……。 んー。 あった。 ん、ペンが無い……。 あれ? こっちに……あ、あった。 よいしょ。 うーん……。 んー……。 ◆元気かな? んー……。 ◆いつでも、良いから、この手紙に、気づいた、ときーに、 んー……うん。 ◆読んで、くれたら、嬉しいな、と、思って、書いています。 {考えてる感じ}、ぅん。 ◆一緒に、行こうって、誘ってくれて、ありがとう。 ◆すごく、嬉しかった。 ◆でも、きっと、 えー……。 んー……。 ◆きっと、臆病な、私、だから、 ぁー……だから? だから。 ◆だから、最後まで、決心が、つかずに、居ると、思う。 ◆今のまま、何も、変わらない、ことを、選んでしまう、と、思う。 {苦笑い}ほんとにね。 {軽い溜息} {水を一口飲む} んー……。 ◆私には、まだ、始める……。 ん……。勇気。 ◆勇気が、持てません。 ◆いつか、終わって、しまう、ものなら、 ◆最初から、無い方が、良いって、思うから……。 ◆でも、いつか。 ◆それが、いつかは、分からない、けど、 ◆私にも、勇気を、持てる日が、来たら、 ◆きっと、一緒に、行かせて、ください。 ◆一緒に、始めさせて、ください。 ◆あなたと、歩む、幸せを。 ◆私にも、始めさせて、ください。 {軽く呼吸} ……うん、書けた。 ちょっとカッコつけちゃった。……ふふ。 荷物は……。あった。 いつか、読んでね。 {微笑む}おやすみなさい。   5.プロローグ~ここから始まらない幸せ まって! ねえ、まって! はぁ、はぁ、はぁ……{深い呼吸}。 う、うん、大丈夫だけど……! {呼吸を整える} どうして? 何も言わずに出ていくなんて、寂しいよ……。 ……謝ってもらっても、困るよ。 大丈夫だよ? あなた に迷惑かけたくないって、思ってるから。 付いて行ったりしないし、 ここに居てって、すがったりもしない。 {微笑む}ううん、謝らないで。 何も言わずに出て行ったのは、 あなた の優しさなんだ、って……分かってるから。 {苦笑い}、そんな顔しないで。 ……ほら、これ。 持って行って。 うん、そうだよ。 干した後に燻してるから、少しは長持ちすると思う。 大事に食べてね。 いいよ、まだ少し残ってるから。 ……ほら、こんなところで見せびらかしてると、鳥に持って行かれちゃうよ? うふ、謝ってばっかり。 ほーら。 {微笑む} うん! どういたしまして! {呼吸}……じゃあ、私、戻るね。 うん……じゃあね。気を付けて。 えっ? ……うん。……行ってらっしゃい。 {吐息} 行ってらっしゃい。 {はにかむ}。ほんとかなぁ……ふふ。 {深呼吸} さぁーて、今日は食べ物、取って来ないとね。 お肉も ぜーんぶあげちゃった! うふふ!