雲井です。  この度は、【こいあい神社のひと口噺】をお買い上げくださいまして誠にありがとうございます。  処女作【ナツカシノカケラ】の続編であり外伝ということで、  2017年から作り始めたものが、まさかの2019年末に発売となりました。  台本まっさらになったり、キャストが入れ替わったりと、この二年間の活動そのもののようなせわしなさです。  ひと口噺なのに全然ひと口で済んでない感しかないですね!  さて、歌い鈴作品にたびたび出てくる「漸」というワード。  【鬼と貴方と恋の顔】や【発告シリーズ】などでも登場しています。  単語本来の意味は、「水が徐々に染み込む」「しだいしだいに及ぶ」など。  訓読みでは「ようやく」とも読めます。  作中に説明もありましたが、これはこの作品世界特有の呼び名で、  「妖の世界を知り、妖に干渉している者」のことです。  「水が徐々に染み込むように、しだいしだいに及ぶように、  本来は相容れない存在同士である、ひとと妖の共存をうたう者」  という由来がございます。  コノマは生前、漸の者でした。  縄縛術という秘伝の妖術を操る波多瀬一族の長女で、その術を使い妖退治などを行っていた漸です。  他にはフウカも該当し、マナミも無自覚にその一員でした。  基本的にろくでもない連中であるという説明がなされていますが、  それはやはり、「妖に関わると不幸な目に遭う」というもっともらしい理由が語られています。  実際、ふつうのひとに見えないものに関わって、良いことが起こるような気はしません。  しかし、どうでしょうか。  例えば、【鬼と貴方と恋の顔】の可畏狐、【訪問者】のナガヌキは妖です。  彼女らと一夜を共にした皆様は、果たして不幸な目に遭ったでしょうか。  【漸】という呼び名は、「先入観」や「偏見」を一括りに風刺するワードなのです。  歌い鈴のキャラクターたちが口をそろえて漸を批難するのも、先入観や偏見を顕著にあらわしています。  強く意味を示さず作品内に点在するこの言葉。それをお聴きくださった皆様のこころに、  水が徐々に染み込むように、しだいしだいに及ばせることが出来たならば幸いです。  深いようで深くないどうでもいい話でした。  2019年を締めくくる作品たちのひとつとなった本作。お楽しみいただけたでしょうか。  主題歌【歌い鈴に酔いしれて】は、作曲者teruny先生や、お歌を担当してくださったはやかわ先生、  澤幡先生のご協力もあり、かつてなく格好良い和風な曲に仕上がりました。  作品を聴き曲を聴き、歌い鈴に酔いしれてくださった皆様、  2020年も、どうか宜しくお願い申し上げます!!  それではまたお会いしましょう!