2章 マネージャーの仕事  縁側で彼女とお話をすることになった貴方。女性関係についてからかわれながらも愉快な会話は続きます。彼女の深い部分に触れながら話を進めていると、練習の疲れがどっと襲ってきました。 (ここから下がセリフです) …………そういえば、男子の方のお風呂どうだった? 広かった? 何があった? ……うん。大浴場があって……それだけ!? それじゃあ、女子の方と違うんだね。 女子の方はすごかったよ。 サウナに水風呂、ジェットバスに露天風呂まであったの。 練習してるのは男子なのに、旅館の恩恵は女子が受けちゃってごめんね……ってどうしたの? 私の顔に何かついてる? あー、顔じゃないなー? その視線は顔じゃない。 もーやめてよね。 大方、私の裸でも想像してたんでしょ。 全く、男の子だなー はい、色っぽい話はここでお終い。 うんって……ずいぶん、物分かりがいいじゃん。 男子ってえっちな話ばーっかりしてるイメージがあるからさ。 ……なになに……えー!? それが嫌で出てきたのー? 何それ、青春してないなー ……えっと……うん。そうかも……ね。 『で、でも私は……恋愛と青春は切っても切り離せないと、思うなあ』 そう言えば……私のこともそういう話の中で出てたりしてる? …………えー教えてよ。 だって……気になるから。 えいえい……どうなんだい。 その固く閉じた口を開いてみなよ。 ……そっか、君はそういう話が嫌で、ここにいるんだったね。 まったく、使えない部員さんだこと。 えへへ……使えないは言い過ぎかな。 あんまりいじると、君がどっかに行っちゃいそうだからやめとくよ。 ねえ……合宿はキツい? ……だって、いつもより練習時間が長いでしょ? 基礎練習もいつもの倍だし……ちょっと心配だよ。 ……うん。先生はガチガチの肉体派だからね。 練習を長くすればいいって思ってるのかも。 それに、いつもより指導がちょっと厳しいよね。 心だけで成長できるならそんなの苦労しないのにさ。 そうだよ。私が監督だったら、絶対そんなことしない。 うーん……そうだなー、私だったら……まずは身体測定をするかな。 それで、それぞれ得意なことと苦手なことを把握するの。 そうしたら、必要な練習が何かって分かるでしょう? 機械は部費がないから無理だけど……自重トレーニングで効果的なものを選んで個別に行うの。 自重トレーニングってのは自分の体重が負荷になるトレーニングのことね。 普段やってる腕立て伏せとかスクワットとかはそれの一部だよ。 トレーニングって本当にたくさんの種類があるから、きっとその人にあったものが見つかるはず…… …………えっ、なんだか楽しそう? 『そ、そんなこと……ない……と思う……よ?』 選手のことを思うのはマネージャーとして自然なことでしょ? うん……こう見えても、一応マネージャーだからね。 そりゃあ、そうだよ。 じゃあ練習中、スポーツドリンク作ったりしてる私の行動はなんだって言うのさ。 ばーかーにーしーてーるーのー!? そんなこと言うと、もうマネージャー業を閉業しちゃうんだからね。 ……よろしい。 『まあ、私が辞めても、他にもマネージャーはいるからお仕事は回せると思うけど……』 …………それは無理? 私が一番良くやってる……? 『あはは……それは……ない…………と思うよ?』 (本当は自分以外大してマネージャーの仕事を熱心にしていないことを知っている) でも、ありがとう。嬉しい……かも。 ええっと……話を変えよう! そういえば、部活でみんなランニングしてるじゃない? みんなよくあんなに走れるよねー。 めっちゃ疲れるでしょ? うん……うん……そうだよね。 マネージャーの私にはあんなの無理だよ。 私は昔から体力がなくてさ。 シャトルランも30回くらいで息が上がっちゃってたくらいだよ。 走ってみたら意外と行ける? そうなの?……本当かなぁ? ……まあ、でも確かに、練習していたら体力つくかもしれないもんね。 それに、ダイエットにもなるかもしれないし、私もランニングでも始めよっかな。 えっ? ふむふむ…………チッ、チッ、チッ……甘いね君。甘々だねー。 太ってなくても、ダイエットするってポーズをとって置くのが普通なの。 これ女子の常識だからね。分かった? よろしい。でも、あんまり細い子がダイエットとかいうと、それは嫌味って取られちゃうみたい。 ……細いの境目? そんなの知らないよ。 何か……こう……細いんじゃない? そこら辺は感覚。 たぶん、結局のところ自分より細いとか、そういう話なんだと思う。全く、面倒だよね。 ……あっ……今のは忘れて。 うん……忘れて。 …………って、すっごく追求してくるじゃん。 教えませーん。 女の子は謎多き生き物なの。 もう…………君といると、こっちまで調子が狂っちゃうよ。 君って、何かちょっとずれてるというか、何というか……端的に言えば変だよね。 私の胸に興味を示しておきながら、色恋話には興味がなかったり。 そういう人の深いところ……気持ちに興味がないと思わせながら、ズカズカと人の心の内側に入ってきたり。 私には、君が分からないよ。 えっ……真面目なだけ? 今は……部活の合宿だから、恋愛をしにきたわけじゃないって…… そう……なんだ。 本当に…………真面目なんだね。 そんな生き方して、これまで人間関係おかしくなったりしなかった? ……分からないって……鈍感というか……肝が座ってるというか……そうところが君のいいところなのかもしれないね。 全く………………羨ましいです。 ううん、なんでもない。 だから、女の子は謎多き生き物なの。 …………本当は気づいてるくせに。 もー、そんなに追求するならこっちにも考えがあるんだからね。 私の言霊は一撃必殺だから、覚悟するんだよ。 恋愛に興味ないとかいいながら………………私の胸見てたくせに。 あー、ズルい! 都合が悪くなったからって寝たフリだなんてー! 真面目とか言いながら、そんな卑怯な手を取るの? これはこれは、真面目くんポリシー違反じゃあないのかなー? ねー、ねー、ねー……ねえ? ……って、本当に寝ようとしてない……? おーい、起きろー。まだ夕方だぞー。 まだ夕ご飯食べてないんだよー? なになに…………一回横になったら急に眠気が? うーん…………疲れが溜まってたのかな。 実際、練習大変だったもんね。 私は眠くないよ。 ……そうだ。 夕ご飯になったら起こしてあげるから、寝ちゃいなよ。 特別に…………私のお膝……貸してあげる。 恥ずかしい……? 恥ずかしくなんかないよ。 だって君は、合宿に恋愛をしにきたわけじゃあないんでしょう? だから、膝枕に……深い意味なんて考えるのは道理にそぐわないんじゃない? ……うん。 それに、私はマネージャーだからね。 部員の疲れを取るのも、業務のうちなの。 納得してくれたようで何よりだよ。 それじゃあ…………横になってね。