『アラビアンナイト』をご購入&ご視聴頂き、ありがとうございます。 シナリオ担当の毛ガニです。 前作から1年以上間が空いてしまい、申し訳ございません。 コメントやレビュー、次回作を望んでくれる声に背中を押され、なんとか本作を発売する事ができました。 誠にありがとうございます! が、ついにやってしまいました…… 『SAVE THE CATの法則』という本があります。 著者はブレイク・スナイダーというアメリカの脚本家で、プロの脚本家を目指す人の為の「超」実用的な本です。 その本曰く、「観客ってのはなぁ、原始人なんだよ。だから、脚本は、原始人でも共感できる、生存欲求とか、性欲とか、名誉欲とか、食欲とかの根源的な欲求に訴えかけて強い感情を起こさせないといけない」と。 確かにその通りかもしれません、プロとはクオリティの高い仕事ができる人ではなく、その分野で稼いで食べていける人の事です。 稼ぐにはターゲット層を広く持つのが効果的であり、プロならばそうして然るべきなのでしょう。 その点で言うと、本作は、本能に疑問を差し挟み、感情に逆らう愚挙をやらかしてしまっています。 下調べにも、ストーリーを考えるのにも時間がかかり、文献代もかさんで、よしんば黒字が出ても、時給換算は悲惨な事になっているでしょう。 きっと、僕がプロを目指していたら「ニッチで金にならねーシナリオに時間かけるとか、テメェ、プロの自覚あんのか?」と失格の烙印を押される事でしょう。 ですが、同人だからこそという作品に仕上げれたかと思います。 利益目的ではない同人ですので、たまにはこんな作品があってもいいではないでしょうか? そんな趣味全開な作品ですが、楽しんでいただけたようでしたら幸いです。 なお、いかにも続編がありそうな終わり方をしていますが、原作再現なだけで、現状、続編の予定はありません。 と、思っておりましたら、ありがたくもフリートークにて声優の浅見ゆい様に、続編のご要望をいただきました、やったー! 声優様にも楽しんでいただけたのは、とてもありがたくも、かなりヘビーな執筆だったので、吐血混じりの嬉しい悲鳴が出そうです。 まあ、僕としても今までで一番趣味に合っている作品ですので、前向きに続編のアイデアを考えていこうと思います、とりあえず赤字回避できたらですね。 ちなみに、タイトルはバイノーラル音声作品らしく「(囁き声で)アラビアンナイト」という意味で、作者不詳の『アラビアの夜の種族(Alabian Night Breed)』と伊藤計劃の『ハーモニー()』のオマージュです。 でなくてなのは、『Alabian Night Breed』と掛けているからです。 本作のラストは『ハーモニー』に(だいたい)繋がるようにしています。 本作を聴いて、「面白い」と思って頂けた方は、『ハーモニー』もおススメします。 原作小説も、コミック版も甲乙つけがたくおススメです、audiobook版もいいのですが、先に小説か、コミックを読んでないと「何だこれは?」となると思います。 発想としては、おそらく最古は仏教で、2400年以上も前という古いものですが、先の『SAVE THE CATの法則』的な理由のせいか、このテーマで書かれた作品を全然知りません。 そんなテーマで、ヒット作を書いたというのは尊敬せずにはおれません。 アプローチとしては、本作は哲学的なのに対し、『ハーモニー』は社会学的な感じです。 声優は、浅見ゆい様。 新作は『アラビアンナイト』で、と思いついた時から、シェヘラザードは浅見ゆい様! と決めておりました。 プロローグで語りの巧みさや、キャラクターの魅力、話の面白さのハードルを上げてしまいましたが、見事に演じていただけました。 (上げたハードルの半分は、僕に返ってくるブーメランでしたが、こちらはクリアできていたでしょうか……) 美人で、知性や、気品があって、やさしいながらもSっぽく、底知れなくて……そんな複雑なキャラクター性が伝わる声、素敵です。 イラストは、『BLACK SOULS』シリーズで有名な寿司勇者トロ様。 シェヘラザード像を一から見直し、寿司勇者トロ様のタッチで、従来とは違った側面にスポットライトを当てて頂きました。 可愛いだけでなく、幻想的でいて、現実と物語の境界を曖昧にし物語の世界に引きずり込む、どこか怪物的なシェヘラザードが感じられます。 枕が一つとは、マスターの腕枕で寝るんですかね、あざとい。 また、Tipsに原作冒頭の抄訳を書きましたが、シェヘラザードは原作中で、『BLACK SOULS』でお馴染みの選択肢、「犯す」「殺害する」が表示されるようなキャラクターだったりもします。 『BLACK SOULS』シリーズのファンの方々にも、童話【シンドバッドの冒険】や童話【アラジンと魔法のランプ】を語ったキャラクターとは……、などと思いを馳せて頂けたら幸いです。