彩「…でさー、この前カラオケ行ったじゃん?運動部何人か交えてさ。 それでサッカー部の…あのーアレ、金髪の奴に告られたの。 めっちゃグイグイ来たんだよね」 里「名前くらい覚えてやんなよー。 でもアイツ確かヤリチンとか豪語してなかったっけ?」 彩「ないわー、目がアタシの胸に釘付けだったもん。 なに言っても目も合わせてくんなかったし、童貞の見栄だと思うよ?  そういう無駄な見栄張る男、アタシは嫌ーい」 里「ひでー言い草、あ、ラスクある。 おばちゃーん、お金置いとくねー」 彩「あ、アタシも!お金ここに置いときまーす」 里「席どうする?」 彩「あそこで良くね?夕日が入ってこないから目が疲れないんだよね」 里「おけー」 里「んーカリカリでうまー」 彩「だよねー、おばちゃんの作るラスクってその辺のスイーツよりスイーツしてるわ」 彩「あ、そういえばこの前のテレビでさ、ASMR特集ってのがあったんだけど里穂(りほ)は見た?」 里「なにそれ、新しいアプリとか?」 彩「違う違う、なんかねーご飯食べる音とかを聞くの、マジヤバくない?」 里「はぁ?他人が食べてる音聞くとか罰ゲームじゃん」 彩「アタシもそう思ってたんだけどさー。 試しにと思って調べてイヤホンで聞いてみたら意外と良かったんだよねー」 里「うえ、彩華(あやか)が変な性癖に目覚めてる…引くわー」 彩「ひっど、まあ無理なのもあったよ?でもこのラスクみたいに…。 …こういう乾いた感じの音は結構ありかなって」 里「ふーん…自分で食べてる時は特になんともって感じだけど」 彩「んー…試しにやったげよっか?はーい、目を閉じてー♪」 里「んー…んふふ、やば、ちょっとドキドキしてきた」 彩「いくよ~?」 里「んぅ…ッ!?ちょ、彩華たんま!」 彩「おお?里穂、良い反応するじゃーん♪」 里「ビビったぁ…意外とクる…」 彩「他にもスライムをペタペタさせたり、ネイルでカタカタ鳴らしたりもあるけどさ。 一番ヤバかったのは耳かきかな」 里「耳かき?そんなのもあるんだ」 彩「あるある、ゴソゴソして気持ちいーんだよねー。 初めて聞いた時はさっきの里穂みたいにゾクゾクってして鳥肌がすごかった」 里「ふーん、私もちょっと調べてみよっかな…」 彩「マジおすすめだから、まー最近注目されてきたマイナージャンルらしいし 好き嫌い分かれるから無理しないよーにね」 里「オッケー。そうする…っと、メールだ」 彩「んー?カレシー?」 里「に、なるかもしれない人、カラオケの日からアプローチされてんの」 彩「マジー?アタシもイイ男からアプローチされたかったわー」 里「彩華もイイ男と会えるって、案外近くに居たりとかするかもよ?」 彩「そんなもんかねー」 里「そんなもんですー。それじゃ私は今からデートだから。じゃあねー♪」 はいはーい…はぁ、里穂、最近イキイキしてるなぁ… 最近は一緒に遊ぶ時間もズレたりしてるし… いや親友の幸せは祝うべきなんだろうけど… はぁ、私も何か夢中になれるものとか彼氏とか作った方が良いのかな… ゲ…アイツからのメール…うー、しつこいんだよなぁ… …いーや、無視しよ。てか、もう帰ろっかなー うぉ、びっくりしたぁ…。あーっと。 あ、一緒のクラスだっけ、どしたのいきなり? アタシとアンタって絡みなかったじゃん さっきの話…ASMRの?あー知ってる系なんだ。 里穂と話してる時に混ざればよかったのにー、それがどーしたの? うん。結構好き、てか盗み聞きしてたんならわかるでしょ? このラスクのサクサク音とかも結構好きだよー♪ ノート?どれどれ… うわ、なにこれびっしり書いてあんじゃん…へぇー …これってさ、ASMRを中心にした活動をするって感じのノートだよね? 耳かきがどうとか、シーツが擦れたりとか…なんかそんな感じのことばっかり書いてある で、ここに書いてあるメンバー確保優先!…ってとこが本命かな? 滅多にいない同士を探して、ASMRを知ってるアタシに声を掛けたって感じなんだ。 まあ知ってる人の方が少ないだろうしね。 …ってか、これ新しいナンパの仕方でウケるんですけど♪ ああ、馬鹿にしてはないって、マジマジ。 こんなにびっしり書いてるなら一人でもできんじゃないの?  なんでアタシ? 参考人が欲しい…ね。 あー…確かに色んな人に聴いてもらった方が捗(はかど)るか …んー、例えばどんなの作るの?それ次第かな 音声作品?何それ? いやー…そこまではちょっと知らないかなー、どんなの? 声優さんが囁いたりする作品…ねぇ。へぇ、面白そうじゃん♪ それにASMRを足して作品にするんだ? …一応行っておくけど、聴いても率直な感想しかアタシは言えないからね? …いいよ、そこまで熱心に誘ってくれるなら、アタシも協力する まぁ、半分は暇つぶし的な?里穂も最近付き合い悪いしね 詳しい話は…あー、もう時間的に厳しいかなぁ… いや運動部がご飯食べに来るからさー。 汗臭いのなんので居られなくなるじゃん? どっかの教室行ってもあと一時間くらいで下校時間だからまた今度、話してよ つーわけで、ケータイ出して?メルアドとか電話番号交換しとこ? 振るだけのやつわかる?…わかんない?えっとねー… ん?どしたの?そんな顔真っ赤にしてさぁ、もしかして照れてんのー? バーカ♪こんなん普通だって。隣でアンタのケータイ覗いてるだけじゃん それとも、アタシから女の子のいい匂いがするとか? それ、女の声優さんに依頼とかするんなら、女の子に慣れといた方がいいんじゃないの? 抱き着く程度ならしてあげるから慣れときなよー♪ んーと、ここをこうして、あれ?間違えたかな…あ、これか、よしオッケー それじゃ一緒に振ってー…。 よしっと、電話番号はこのメールアドレスから後で送るわ あ、それとさ、このノート借りていい? 協力するからにはアタシもちょっとは読んどいたほうがいいでしょ とりあえず明日の放課後また会おうよ、良さげな溜まり場とか探しとくからさ そんじゃお疲れ~