//01_ほれほれ、妾にお主の願い事、申してみよ?(12:37) 「おっ、湯浴みから戻ったようじゃな。重畳重畳」 「むむっ、驚いたような顔をしておるの。正に狐に摘ままれた表情、というやつじゃな。ふははっ」 「……ふむ、これはきちんと事情を説明せねばならぬというやつか。致し方ない」 「直接脳内に語り掛ければ便良しなのじゃが……妾はそのような妖術、身に着けておらぬのでな……」 「話せば長くなってしまうことなのじゃが……お主、昼間神社でお参りをしたであろう? 賽銭を放って鈴をガラガラと鳴らし、お参りとお願いを」 「それがなんと……!! 丁度お主が1万人目となっての。それで記念に願いを叶えて進ぜようと妾が直々に馳せ参じたというわけなのである」 「……こ、建立年数の割りに参拝客が少ないのは隠れた名所であるからじゃ。異論は認めぬぞっ」 「ほ、ほれ、見よ!! この耳に尻尾、立派な狐具合であろう? むふふっ、何を隠そう妾はお稲荷様じゃからのぅ」 「……むっ、まだ狐に摘ままれたような表情をしておるな……。妾がお主の頬を摘まんで「ほれほれ、本当に狐に摘ままれておるぞー」とか場を和ませたほうが良いのじゃろうか……」 「……」 「こほん。というわけで、じゃ。妾がお主の願いを聞き届けにやってきたわけであるが……女子に寝かし付けられたいとは……随分と酔狂じゃの、お主は……」 「まあ、妾も神社の裏に放置してあった書物で知ってはおるが……お主はアレじゃろう。百合というやつなのじゃな」 「うむうむ、分かっておる分かっておる。妾も女性の気があるのでわかっておる。女子は良い。とても良い。やわこくて良い匂いがするのである」 「そうさな……妾は女子が二人で仲良くしているのを見ているととてもほんわかとした心地になってくるのじゃが……お主も分かってくれるだろうか?」 「うむっ!! 重畳重畳!! やはりお主も百合女子というやつであるのじゃな、ふははっ♪」 「では……そうさな……妾はやはり、『仲睦まじい友人だと思っていたが、相手からの恋の相談を切欠に己の気持ちが恋い慕うものだと気付く』というような百合が好きじゃ。おお、しかし初めから女性同士の色欲全開のものも結構であるな!! 幼馴染や同級生というのも良いが、妾は上司と部下というのも――」 「……はっ!! す、すまぬすまぬ。ついつい百合語りをしてしまいそうになってしまったのじゃ……。こう、趣味の合う女子とこうして話すことなど今までなかったのでな……百合とおく(トーク)というものをしてしまいそうになるのも仕方のないことなのじゃ……」 「百合とおくも捨て難い……とてもしたいところであるが!! 本日はお主の願いを叶えに来たのであるからな、ふははっ」 「はてさて、百合とおくはお主のお願いを聞き届けた後にたーっぷりとさせて頂くとして、だな!! まずはお主のお願いを聞き届けようではないか」 「先に申したが……「女子に寝かし付けられたい」がお主の願いであるが……ぬふふっ……分かっておる分かっておる。妾は分かっておるのじゃ。「寝かし付けられたい」というのは「女子と目合ひたい」というのを恥ずかし気に語っておるのであろう」 「ふははっ……何とも心憎い女子よのぅ、お主は。そこまでお願いされてしまっては……妾も応えねばなるまい」 「……ついに妾も女子と身体を交える時が来てしまったか……ふ、ふふふっ……書物を読み漁りしかと蓄えた知識を……思う存分……」 「……し、しかし……な、何やらとみに気恥ずかしくなってきてしまったのじゃ……こ、ここは妾が「受け」となりエスコートをして貰うほうが有難い気が……」 「……ぐぬぬっ……し、しかし……どう考えても妾のほうが年上であるし……それにお願いをされているというのに生娘のように身を任せてしまうことになるのは……神としての威厳やら尊厳が……」 「……いや、待つのじゃ。年上の女子を篭絡したいとお願いをされるかもしれぬではないか。それならば……妾が受けとなって身を任せることに些かの問題もないではないか……ふ、ふははっ……」 「ふむ、というわけでじゃな、お主のお願いを改めて聴かせて貰うこととするのじゃが……先に言っておくが……遠慮は要らぬぞ? 思うがままに言うてみよ。恥ずかしがることはないのじゃ」 「ほれほれ、お願いをしてみよ。妾がその願い、しかと聞き届け叶えて進ぜようではないかー」 『遠慮せずに……ほれほれ、言うてみよ? お主のお願い、妾に言うてみー? 遠慮せずにーほれほれー……言うのじゃー』 「……」 「……う、うむうむ……分かっておる分かっておる、「寝かし付けて欲しい」というのは気恥ずかしさを隠すために言っておるのじゃろう? 妾、とても気の利く神様なのでそこらへん、よーく察せられるのじゃ」 「なので、気恥ずかしいのは分かっておるが……言うてみい? 妾もしかと言われたほうが胸がキュンキュンして気持ちが入るというものであるからのぅ、ふははっ」 「ほれほれほれー? お主の本当のお願い、妾のこの可愛らしい狐耳に聴かせてみるのじゃ。なーに、他の女子には絶対に他言せぬ。妾とお主の間だけの、女子同士の秘密じゃからのぅ、ふははっ」 「……」 「……ふむふむふむーっ……じゃから……「寝かし付け」などと遠回しな言い方ではなく……」 「…………」 「……も、もしやお主……本気で寝かし付けをして貰うのを所望しておるのじゃろうか……?」 「……は、恥ずかしく思い遠回しに言っていたわけではなく、純粋に女子に寝かし付けられたいと……」 「……」 「……ふ、ふははっ、わかっておるわかっておる! 妾、よーくわかっておる!! 妾は何でもお見通しであるからな! お主が心より寝かし付けを所望しておったの、妾とーってもよくわかっておったのじゃ!」 「うむうむ、お主は女子に寝かし付けをされたい、間違いないのじゃ! ……間違い……無いのじゃな? らすとちゃんすというやつであるぞ? 己に素直になるのは今であるぞ? もう一度……願い事、言うてみい?」 「……」 「……ふ、ふははっ、い、今のは確認である。何事も確認は大事であろう。うむうむ、確認大事、大事じゃ」 「では、早速お主の願い、叶えてしんぜようではないか」 「……」 「……良いのじゃな? 妾のような大人の女子に寝かし付けられて……満足なのじゃな? 寝かし付けられて満足なのじゃな!?」 「……」 「……よ、よし、それでは……」 「……」 「……本当に寝かし付けだとは思っていなかった故……ほんの少しばかり待たれよ。はてさて……寝かし付けと言えば……そうさな……」 //02_寝かし付けと言えば……狐数えじゃな!!(19:25) 「……うーむ……やはり……寝かし付けといえばまずは……あれじゃな、あれじゃあれじゃ」 「やはり眠れないときは狐を数えるに限るのじゃ。うむうむ」 「……なんじゃ、その顔は。「数えるのは羊では」と言いたそうな顔をしておるな、お主」 「……はあ、何も分かっておらんのぅ。ほれ、よく考えてみい? 1匹や2匹ならともかく、羊の群れに周りを取り囲まれたら暑苦しくて眠れなさそうであろう?」 「その点、狐はとても可愛らしいのじゃ。周りを狐に囲まれれば大層幸せな気分になろう。1匹でも可愛らしいが増えれば増えるほど可愛らしい、間違いないのじゃ」 「というわけで……お主が心地よく寝られるよう、妾が狐を数えて進ぜよう」 「妾が数えるのでお主は頭の中で想像するなり、頭を空にして妾の美声に微睡むのもよし、じゃ。狐を想像するのであれば……狐の種類は好きにするが良いぞ。狐はどの狐でも可愛らしいのでな、ふははっ」 「では……狐を数えるとしよう。妾の声を聴きながら、それも狐を数えられて眠れるなんて……なんとまあ贅沢なことじゃ」 「さて……それでは……お主は何匹目まで起きていられるかのー?」 「……こほん」 「狐が1匹」 「狐が2匹」 「狐が3匹」 「狐が4匹」 「狐が5匹」 「狐が6匹」 「ふははっ、6匹もおったら可愛らしくて仕方なかろう。だがの、まだまだ増えるのじゃぞー?」 「狐が7匹」 「狐が8匹」 「狐が9匹」 「狐が10匹」 「想像しただけで幸せじゃろう? 周りを狐に囲まれて眠りに落ちるのは」 「狐が11匹」 「狐が12匹」 「狐が13匹」 「狐が14匹」 「狐が15匹」 「狐が16匹」 「狐が17匹」 「こんこんこん♪ こんこんこーん♪ 可愛かろう可愛かろう」」 「狐が18匹」 「狐が19匹」 「狐が20匹」 「狐が21匹」 「狐が22匹」 「狐が23匹」 「狐が24匹」 「もうこれは……部屋の中が狐でいっぱいになっておるな。何という幸福感なのじゃ」 「しかしな……むふふっ、まだまだ増えるのじゃ♪」 「狐が25匹」 「狐が26匹」 「狐が27匹」 「狐が28匹」 「狐が29匹」 「狐が30匹」 「……はて……これほどまでに狐に囲まれてしまっては……幸福感で目が覚めてしまうのではと心配になってくるのう……」 「狐が31匹」 「狐が32匹」 「狐が33匹」 「狐が34匹」 「狐が35匹」 「狐が36匹」 「狐が37匹」 「むふふっ、妾、狐を想像しながら数えていたら……とてもふんわりと心地よくなってきたのじゃ……」 「狐が38匹」 「狐が39匹」 「狐が40匹」 「狐が41匹」 「狐が42匹」 「狐が43匹」 「……もはやここは……天国じゃ……狐天国じゃ……むふっ、むふふっ……」 「狐が44匹」 「狐が45匹」 「狐が46匹」 「狐が47匹」 「狐が48匹」 「狐が49匹」 「狐が50匹」 「狐が51匹」 「狐が52匹」 「狐が53匹」 「狐が54匹」 「狐が55匹」 「狐が56匹」 「狐が57匹」 「……あ、あまりに幸福過ぎて……妾も少し……微睡んできてしまっているのじゃ……むにゃむにゃ……」 「狐が58匹」 「狐が59匹」 「狐が60匹」 「狐が61匹」 「狐が62匹」 「狐が63匹」 「狐が64匹」 「狐が65匹」 「狐が66匹」 「狐が67匹」 「狐が68匹」 「狐が69匹」 「……いかん……もう寝床どころか……台所や玄関まで……狐で溢れかえっておる……」 「わ、妾……想像しただけで……顔が綻んでしまうのじゃ……」 「狐が70匹」 「狐が71匹」 「狐が72匹」 「狐が73匹」 「狐が74匹」 「狐が75匹」 「狐が76匹」 「狐が77匹」 「狐が78匹」 「狐が79匹」 「狐が80匹」 「……こんこん♪ むふっ、むふふっ……毛繕いしている姿も……可愛いのぅ……」 「狐が81匹」 「狐が82匹」 「狐が83匹」 「狐が84匹」 「狐が85匹」 「狐が86匹」 「狐が87匹」 「狐が88匹」 「狐が89匹」 「狐が90匹」 「狐が91匹」 「……ほれほれ、ついにはお主の布団の中にまで狐が……むふっ、むふふっ……」 「狐が92匹」 「狐が93匹」 「狐が94匹」 「狐が95匹」 「狐が96匹」 「狐が97匹」 「狐が98匹」 「狐が99匹」 「狐が100匹」 「狐が101匹」 「狐が102匹」 「狐が103匹」 「狐が104匹」 「狐が105匹」 //03_03_ふむ、では妾の美声での読み聞かせの出番かの。(17:54) 「……うーん……むにゃむにゃ……」 「……」 「……んっ? ふっ、ふははっ、妾の声と狐に囲まれてすっかりと寝入って……おらぬな、お主」 「ううむ、しかしお主が寝入れぬのも心得ておるぞ。妾の声と狐に囲まれて気持ちが昂ってしまったのであろう」 「……妾の声で高ぶってしまうのは仕方ないが……次はもう少々気の休まる寝かし付けとしようかの」 「ふははっ、妾、かくみえて出来る女狐なのでな、次の寝かし付けは何にすべきかもう考えてあるのじゃ」 「はてさて、次の寝かし付けは想像出来るかのー? 寝かし付けといえば狐数えと並び出るものであるのじゃが」 「むふふっ、そんなに楽しみそうな顔をして……妾、期待に応えねばならぬのじゃ!」 「なんとなんと、次の寝かし付けは……「読み聞かせ」なのじゃ。これは寝かし付けならば定番中の定番であろう」 「ちゃーんと妾、手元に本まで用意したので雰囲気的なものばっちりなのじゃ」 「さてと、では、目を閉じてしかと聞くが良い。妾の極上の読み聞かせを!」 「……」 「むっ、先に言うておくが妾の読み聞かせの中に登場する狐は全て女狐じゃ。であるので、何も心配せずに心穏やかに聴くが良いぞ」 「ふははっ、勿論、途中で寝入っても構わぬ。そのときはこの本をお主にぷれぜんとするので、後からちゃんと読み返せるので安心じゃ」 「では……心して聴くが良いぞ。ことなき話であるのじゃ」 「昔々、それはもう遠い昔……あるところに、2匹の狐がおった。素直な狐と、素直になれない狐がおったのじゃ」 「姉妹ではなかったが、幼いころからいつも一緒だった2匹は、それはそれは仲が睦まじかったそうじゃ」 「お腹が空けば2匹で一緒に山へ食べ物を探しに出でて、楽しいことがあればともに楽しむ、寒いときにはお互いに身を寄せ合う、それほどまでに仲の良い狐じゃったのだ」 「「ねえ、あの山の麓に綺麗な花が咲いていたの、見に行こう?」と言えば「ふうん、あたしは別に花なんて興味がないけど、あんたがそういうなら一緒に行ってあげるわ」と、「あの川の向こうの木の実がとても美味しいらしいの。一緒に食べに行きましょう」と言えば「ふうん、あんたがどうしてもって言うなら一緒に行ってあげるわ」と、どこへ行くのにも2匹はいつも一緒だったそうな」 「2匹とも親元を離れて久しく、狐は群れを作らない生き物ではあったが、お互いが一緒にいることに心地よさを感じていたのは言うまでもなかろう」 「春は桜を、夏は小川のせせらぎを、秋は虫の声を、冬は白銀に染まる世界を、ふたりで見るその景色は、独りで見るよりもそれはそれは美しく雅であったそうな」 「出会う前の景色なんてとうの昔に忘れてしもうた、お互いがきっとそう思うておったことじゃろう。それほどまでに一緒にいることが当然となっておったのじゃ」 「しかしある年、日照りが続き食糧を得ることが難しい年がやってきたのじゃ。それでもふたりは少ない食べ物を分け合い、何とか過ごしておった。腹は満たされずともお互いが傍にいれば満ち足りる、そう思ってはおったのじゃが……」 「ある日、「もう少し食べ物の多い場所に移動しましょう」「ふうん、あたしは別に今でも満足だけど。あんたがそういうなら仕方ないわね」と、やはり相手の身を案じて、住まう山を移ることにしたのじゃ。彼女の言葉に従ったことが、運命を変えることになろうとは、お互い思っておらんかったじゃろうのぅ」 「一抹の寂しさを覚えつつも住み慣れた山に別れを告げ、ふたりは新たな住処を探し当てもなく旅を始めたのじゃ。独りであれば不安に襲われるような旅路も、ふたりであれば野遊びにでも出かけているように楽し気なものであった」 「見慣れていた景色が少しずつ見慣れないものになっていく、そこに不安もありはしたが、どこか心が躍るようなところもあったそうな」 「「大きな柿の木がある場所がいいな」、「あたしはあんたが良ければ、どこでもいいけど」、「気持ち良く日向ぼっこが出来て、夏は水浴びも出来るところがあると嬉しいね」、「雨や雪に当たらないように、洞穴がある場所も必要ね」、「他の狐さんとも仲良くなれたらいいね」、「……あたしはあんたが居ればそれでいいけど。あんたがそういうなら、うん、そうね」、と新たな住処への期待へと膨らむ期待が足取りを軽くし、思わず会話も弾んでいったのじゃ」 「「ここ、ここが良さそう!! ここにしましょう!!」、「うん。あんたが決めたならあたしもここで良いわ」、初めての景色が夕日に照らされる頃に、ふたりはようやく新たな住処を決めたのじゃった。ふたりとも上機嫌、疲れも吹き飛び大満足!!なのじゃった」 *03_08:50〜程度 「ふたりはようやく新たな住処を決めたのじゃった」が抜けていました 「そしてやっと美味しい木の実のなる場所や、心地よい小川の場所、日向ぼっこに丁度良き場所、そのような場所をやっとこさ覚えたころに、ふたりは1匹の狐と出会うことになったのじゃ」 「所変われば新たな出会いもある、というやつじゃな。新たな土地での出会いということ、ふたりと同じ女狐ということもあり、あっという間に打ち解け合うようになったのじゃ」 「それからはふたりで過ごす時間も多かったが、少しずつ少しずつ、3人で過ごす時間も増えていったのじゃ」 「「あの子、良い子ね。仲良くなれて嬉しいね」、「そう。あんたが嬉しいならあたしも嬉しいから」。暫くぶりに仲良くなれたことが嬉しく、仲良い狐が出来て嬉しそうな様子を見ることが嬉しく、ふたりは満足じゃった」 「3人で過ごす景色にも慣れてきて、徐々にそれが当たり前にもなってきおったのじゃ。「3人で一緒なのも良いね」、「そう。あんたが嬉しいなら、あたしも嬉しいから」、そう言い合えるような、それほどまでにふたりにとって近しい存在となっておった」 「そして――季節が廻り、桜の蕾が膨らみかけて、「昔住んでいた場所の桜を見に行くのも良いよね」とそんな話をするような、そんな時期じゃった。春の嵐よりも突然に、それは訪れたのじゃ」 「「ねえ、聴いてほしいことがあるの」、「うん? 改まってどうしたの? 何でも話したらいいわ」、「実はね、あの子から……話をされたの」、「何の話?」、春先のほんのりと冷たい風が、ふたりの間に吹いたような気がしたのじゃ……」 「「私のことが好きだから、家族になろうと言われたの」、その予想もしなかった言葉に、思わず言葉に詰まってしまった狐。じゃが、それも刹那のこと、その刹那に様々な想いが駆け巡ったにも関わらず……彼女の口から出た言葉は、いつもと変わらないものであった……」 「「ふうん……あんたが良いと思うなら……良いんじゃない? あたしは……うん、あんたが良いと思うなら……良いと思う」、そう、いつもそうじゃった。常に、片割れのことを想い、己の気持ちは二の次に、想いは押し込めておった」 「「あたしは……応援するから。別に、会えなくなるわけじゃないのよね?」、「うん。今まで通り、3人で一緒に居られたら嬉しい。どちらかというと、ちょっとした気持ちの問題」、「そっか。それなら……うん」、その日はやけに、冷たい風が頬を撫でた、そんな気がしたのじゃった……」 「そしてその後、3人は末永く仲良く幸せに暮らしたそうな」 「ただ、家族になり、徐々に仲睦まじくなってゆくなっふたりを見て、思うことが度々あったそうな。「家族として隣に居られるのが、己であればどれほど幸福だったじゃろう」と」 「あのときに――いや、もっともっと前に己の気持ちに気付いて居れば、また違った未来があったのじゃろうか。己の気持ちに気付いて居て、気付かぬふりをしていなければ、また違った現在があったのじゃろうか」 「あのとき、自分の気持ちを伝えていれば―ー己以外に向けられる笑顔を見るたびに、そんな想いが胸を焦がすのであった」 「……ふう」 「少し熱が入ってしもうたぞ、ふははっ。読み聞かせなど妾は初めてじゃからのぅ」 「やはり……想いや気持ちはしっかりと伝えねばならぬな、うむうむ。伝えられぬ恋心というのは鉄板パティーンではあるが……伝えずに後悔するよりも、伝えて後悔するほうが絶対に良いのじゃ」 「……」 「……こ、これは……あれじゃ、この物語は事実を元にした完全ふぃくしょんであるので、邪推などしてはならぬぞ? 妾との約束じゃ」 「……と、妾、少し浮かれてしもうたが……妾の読み聞かせの上手さに寝入ってしまったのではなかろうか?」 「むふふっ、どれどれー? 寝入ってしまったのであろう? お主の可愛らしい寝顔、見てしまうぞー? これ幸いと……せ、せせせ……接吻でもしてしまおうかのぅー?」 「……」 //04_う、うーむ……では……こ、子守歌でどうじゃ!!(11:53) 「……むっ、まだ寝入っておらんかったか……」 「……しかし寝入れなくとも仕方のないかのぅ。妾の噺、続きが気になってしまい寝入るどころではなかったのであろう? それに加えて妾の読み聞かせじゃ。寝入れずともやむなしというものじゃ、ふははっ」 「お主のような女子に読み聞かせをと思うとつい力も入ってしまってのー、お主も寝付けなかったのやもしれぬ。反省じゃ。妾、反省である」 「……」 「となると……次はどのようにして寝かし付けをしてしまおうかの……なかなか悩んでしまうところなのじゃが……」 「……肌と肌を絡めあい燃え上がってしまえば疲労で眠気が押し寄せるのでは……いや、いかんいかん、興奮のあまり朝まで眠れなくなってしまう可能性が大じゃ……」 「……となると他の寝かし付けは……うーむ……」 「……」 「……おおっ、丁度良いのがあるではないか。これこそまさに寝かし付け、というものが」 「はてさて、では早速……」 「……隣、失礼するのじゃ。この寝かし付けは密着するほどの隣で行うと効果が高いという理由であって、それ以外は深い意味はないので勘違いなどしてはならぬぞー」 「むふふっ、女子とひとつ同じ布団で添い臥してしまったら勘違いのひとつもしてしまうかもしれぬがのぅ」 「……では……よっこい……しょ……っと……」 「……ふむ……一人用の布団であると……多少狭いのは仕方あるまい。仕方なしに妾、もう少し詰めておくとするのじゃ」 「暑かったら言うのじゃぞ。まあ……女子の体温ならいくら暑かろうがウェルカムというものであろうが……」 「……さて、それでは……再び瞳を閉じると良いのじゃ。今度こそ妾、お主を寝かし付けてしんぜようぞ」 「さあ……妾を信じて……瞳を閉じるのじゃ……」 「……べ、別に……これに乗じて唇を奪おう等とはしておらぬから……安心するがよいぞ」 「ほれほれ、妾と違い瞳を開けたまま眠れはせぬであろうし、リラックスをして瞳を閉じると良いぞ」 「……うむうむ、しかと瞳を閉じて偉いのじゃ」 「さて、では……次の寝かし付けは……むふふっ、寝付きの悪そうなお主であって……流石にコロっと寝入ってしまうことであろう」 「さすれば……お主の寝顔、しかと見ておいてやろうかの、むふふっ」 「……」 「……勿論、目を覚ました暁には「寝顔も意外と可愛いのう」と言うサービスもつけるのじゃ」 「……さて……あー……あーあーあー……あー……よしっ……」 「(子守歌)」 //05_むっ? 飴を耳元で舐めろとな? か、構わぬが……何故?(20:38) 「……」 「……んっ……んんっ……ふぁっ……ふわぁ〜……」 「……んーっ……んーっ……んっ!? い、いかんいかん……いかんのじゃ……女子の隣で横なり子守歌を唄うという幸福感についウトウトと……」 「……はっ!! わ、妾は寝入ってしまったが……寝かし付けは……」 「……」 「ぐ、ぐぬぬ……しかと起きておるのじゃな……何ということじゃ……」 「しかも……寝顔を見るつもりが……うっかり寝顔を見られてしまうなど……一生の不覚である」 「妾の寝顔など……なかなか見られるものではないので有難く胸に留めておくと良いのじゃ」 「もし寝顔を写真とやらに撮っておるのであれば……有難く待ち受け画像にでもするとよい。妾、寝顔にも多少の自信があったりなかったりするでの、ふははっ」 「……」 「……しかし、妾、とんと困り果ててしもうたのである。先刻の子守歌は……妾自身が寝入ってしまうほどに入眠効果の高い寝かし付けであったのじゃが……」 「……うーむ……しかし、子守歌で寝付かないとなると……流石の妾でも、どうして寝かし付けてくれようぞとなってしまうのだが……」 「……思いきり身体を動かして汗をかいてしまえば……くたくたとなって自然と寝付けるかもしれぬが……」 「……さ、さすがにそれは……ま、まずかろう……妾にも心の準備があるのじゃ……」 「……」 「……まてよ? 心の準備が出来ていないのに流れで……というのも……それはそれで乙なのではなかろうか……」 「……最初は多少の抵抗があったのに……気付いたころには快楽に身を委ね、というようなことも……」 「……」 「…………」 「むっ? なんじゃなんじゃ、ごそごそと動き出して……ね、寝付けずに起きだしてしまおうと……言うわけではなさそうじゃが……」 「……」 「……むむっ? それは……なぜ枕元にそんなものがあるのじゃ……。なぜ、枕元に棒付きの飴など……」 「いかんぞ? 夜半となれば小腹も空いてくるというのはとてもわかりみが深いが……人間は虫歯になってしまうのであろう。それに肥えてしまうのじゃ」 「まあ、妾はすれんだあな女子からふくよかな女子まで、女子であれば須らく可愛らしいので問題無しなのじゃが……人間は気にするのであろう」 「しかし……妾、女子が飴やあいすきゃんでぃを舐めている姿、とても良きであるので……舐めるのであれば舐めると良い……」 「……」 「……むっ? どうしたのじゃ? 遠慮せずに妾の目の前で飴をぺろぺろぺろりと……」 「……」 「……むむむっ、これは予想外なのじゃが……その飴、妾にくれるというのか……?」 「……」 「……ふむ、寝かし付けに疲れているであろうと労いの意味を込めてというのであれば……その飴、受け取らねばなるまい」 「うむうむ、仕方ないので受け取るのじゃ。ほれほれ、妾、こうみえて結構甘いものとか好きだったりするからのー」 「……にょほほーっ♪ 飴じゃ、飴じゃー♪ 飴なんていつぶりだったかのぅ♪  しかも雨風を浴びて傷んだ飴ではない飴なんて……激レアなのじゃ♪」 「……」 「……こ、こほん。久しぶりの飴である。浮かれるのも仕方あるまい。レアなものを見られたと、有難がるが良いぞ」 「むふふっ……この色、この香り……これは妾の大好きな葡萄味であろう。どれどれ、封を切ったらすぐに舐めぬと鮮度が落ちてしまうので……」 「……」 「……な、なんじゃ、ただ舐めるだけではいかぬのか……? 寝かし付けを頑張っておる妾へのご褒美ではなかったのか……?」 「妾が飴を舐めている姿であれば思う存分眺めておって構わんのだが……」 「……」 「……ふ、ふむ? お主の耳元で飴を舐めろと申すのか。それは全くもって構わぬのじゃが……」 「……ふむふむ……ふむ……ふーむ……? 成程……なる……ほど……?」 「えーえす……えむあーる……というものじゃな、こういうのは。世の中には妾の知らぬ世界がまだまだ存在するのじゃなぁ……」 「では……どれ、背に腹は代えられぬし……もしかするとお主が寝入るかもしれぬので……」 「早速、飴……頂くとするのじゃ」 「ふむ、これは……美味い飴であるな。こう……新鮮である上に女子の近くで舐める飴は絶品なのじゃ」 「むっ、反対側の耳元でも舐めたほうが良かろうか」 「然しながら……やはり良くわからぬ趣向じゃのぅ」 「美味いのー……やはりこの時代の飴は最高なのじゃ……」 「やはり葡萄味は最高なのじゃ」 「……おお、忘れるところであった……あやうしあやうし」 「……そうさな……妾、この行為の良さは一切分からぬので……そのうち同じように妾の耳元で飴を舐めて貰おうかのー」 「しかし……葡萄味は旨いのじゃが……他の味も気になってしまうのじゃ……」 「……こう、次があれば……別な味も用意してくれてよいのじゃぞ……?」 「……イチゴ味やらメロン味やら……聞いたことはあるが口にしたことはないからのぅ」 「妾、新しいものも好むのでちょこれいと味とかも吝かではないのじゃぞ?」 「……き、気が向いたらで構わぬのじゃが、なっ」 「……むっ……もうなくなってしまうのか……残念じゃ……」 「……ううっ……飴がついになくなってしまったのじゃ……」 「やはり……楽しきときが過ぎるのはあっという間、ということなのじゃろうか……」 「……ふぅ、無くなってしまったものは仕方あるまい。妾もいつもより多めに嘗め回してしまったのが災いしたのじゃろう……」 「……しかし、美味い飴であった。妾、すっかり元気になったのである」 「……」 「……そして思い出したが……そういえば妾、お主を寝かし付けている途中であったのだった……」 「お主からの要望で耳元で飴を舐めたが……うむ、やはり眠っておらんかったようじゃな」 「……ま、まあ、飴を舐めている途中であーでもないこーでもないと妾が口走っていたのが煩くて眠れなかったのやもしれぬが……」 「うーむ、となると……どのようにして寝かし付ければ良いのか見当も付かなくなってくるのじゃ」 「妾、人を寝かし付けたこともなければ、寝かし付けられた記憶もないので……流石にどのようにすればよいのか悩んでしまうところじゃ」 「うーむ……寝かし付け……うーむ……」 「狐数え……寝かし付け小噺……子守歌……えーえすえむあーる……その他は……」 「……」 「ううむ……うーむ…………うーーーーむ…………」 「寝かし付け……寝かし付け……うーむ……ううむ……」 //06_耳を……攻めろ……とな……。(31:39) 「……寝かし付け……寝かし付け……ううむ……寝かし付け……」 「……」 「……ぎ、ぎぶあっぷじゃ……妾の頭脳をもってしても……これ以上の寝かし付けは思いつかぬ……」 「妾の特殊な力を使えばお主の意識を失わせることなど造作もないことではあるのじゃが……それは何か違う気がするしのぅ……」 「……」 「……お主、何かなかろうか? 「こうされてみたい」やら「こうされたら寝入ってしまう」やら、そのような寝かし付けが」 「お主がどうしてもと言うのであれば……あんな寝かし付けや……こ、こんな寝かし付けも吝かではなかったりしないこともないかもしれないこともないのじゃが……」 『ほ、ほれほれ? 構わぬぞ? お主が……どうしてもされてみたい寝かし付け、言うてみい? 妾、ここまで来たら……とことん付き合うてしまうぞ?』 『遠慮せずに……妾のこの愛らしい耳に……申してみるのじゃ♪』 「……ふむ……ふむふむ……ふむ……」 「……な……なんじゃ……と……? み……耳……攻め……とな……?」 「……」 「……ふ、ふむふむ!! 確かに、そのようなことは……なかなか他の人間には頼みにくかろうが……」 「もっとこう……他に人様に言えぬような寝かしつけがあると思うのじゃがな……。折角ゆえ、遠慮せずに妾と……むふふなことを……と思うたが……雰囲気からして生娘のようであるし……ううむ……」 「……」 「……う、うむ。お主が申すのであればその「耳攻め」をせぬわけにはいかぬであろう」 「遠い昔に毛繕いはしたことがあるが……こう、耳を攻めるというのはさしもの妾でも経験がないこと故、正に生娘も同然となってしまうと思うのじゃが……それでも構わぬのなら……」 「……」 「……な、なぜそのように嬉しそうなのかは分からぬが……では……妾、記憶にある範囲で恐らく初体験の耳攻めを……」 「……むっ? 今気付いたのじゃがお主……耳ふぇちというやつじゃな?」 「ぺろぺろぺろり」 「……に、人間の耳を舐めるのは初めてじゃが……不思議な感触なのじゃ……」 「ぺろぺろぺろり」 『どうじゃ? このような感じで……宜しかろうか?』 「ぺろぺろぺろり」 『……片方の耳だけでは物足りなかろう?』 『ほれ……こちらの耳も』 「ぺろぺろぺろり」 『むふふっ……心地、良さそうじゃの。妾に耳を舐められるの……良きかの?』 「ぺろぺろぺろり」 『どうじゃ? 妾の耳攻めは……上手か?』 「ぺろぺろぺろり」 『むふふ、お主の反応を見ていれば……下手ではないのがわかってしまうのじゃ』 「ぺろぺろぺろり」 『毛繕いで磨いたこの舌使い……なかなか乙であろう?』 「むふふっ」 『妾、耳を舐めるのもなかなか上手であろう?』 『流石妾♪ 初めてでも耳を心地良く出来る、凄い神様なのじゃ♪』 『ほれほれ……すこーし長めに……』 『……ふぅ。お主の反応を見ていると……妾も嬉しくなってきたのじゃ』 『お主も……耳を舐められて嬉しかろう?』 【方向 右 距離 耳元】 『妾も……そこはかとなく嬉しくて盛り上がってきてしまっているのじゃ♪』 「むふふっ、この程度の耳攻めでは物足りなかろう?」 『こうしたら……尚の事心地よいのではなかろうか♪』 『……お主の耳……とても良い噛み心地であるな』 「はむはむ、はむはむはむっ」 『……むふふっ、これは……やわこいのに弾力があって……癖になってしまいそうじゃ』 『どれどれ……こっちの耳は……どんな感触なのじゃろうか』 「はむはむ、はむはむはむっ」 「はむはむ、はむはむはむっ」 『お主は……噛まれ心地はどうじゃ? やはり……先ほどとは違うかの?』 『……ふむ、お主の反応が違うので……心地よさは先ほどとは異なっておるということじゃろうか』 『はてさて……此方の耳ではどのような反応をしてくれるのか……楽しみじゃ』 『むふふっ、此方の耳をこうされると……このような反応になるのか♪』 『もっともっと……其方の反応、妾に聴かせてみよ♪』 『そのゾクゾクするような声を妾が絞り出させているのかと思うと……とても高揚してしまうのぅ♪』 『ほれほれ、もっともっと聞かせてみい?』 『良い声じゃのう。女子のこのような声はいと漫ろ寒しなのじゃ』 『ほれ……もっと……もっとじゃ……♪』 『良き……とても良きじゃ……』 『むふっ、耳の外側でこんなに、なのじゃ……中を攻められたら……どうなってしまうのじゃろうなぁ?』 『ほーれ……次は……耳の中を……』 『むふふっ、そんなに心地よさそうにされてしまうと……妾も興奮してしまうではないか♪』 『なので……もっともっと……妾に心地よくなっているところ……見せてみよ? 聞かせてみよ?』 『むふふっ』 『そんな声を出して……本当にいやらしい女子なのじゃ♪』 『妾に耳を舐められるのが……それほどまでに心地よいのかのー?』 『むふふっ……そんな反応をして……』 『妾に耳の中を舐められるの……そんなに心地よいのかの?』 『むふっ♪ ほれ……たっぷりと快楽に身を委ねてみい?』 『ああ……たまらぬ……たまらぬのじゃ……その反応……たまらぬぞ……?』 『もう少し強く耳を攻めてみたら……どうなのじゃろうか?』 『むふふーっ♪ お主の反応……たまらないのじゃ♪』 『こっちの耳を強めに攻めたら……どのような反応をみせてくれるのじゃろうか♪』 『どちらの耳の反応も初々しくてとても素晴らしいが……こちらのほうが反応が宜しい気がするのう』 『ほれ……もっともっとたっぷりお主の可愛らしい声、聞かせるのじゃ♪』 『むふふっ……どうじゃ? 蕩けてしまいそうかの? 思う存分蕩けてしもうて』 『むふっ』 『ほれ、どうじゃどうじゃ』 『……ふぅ、本当に妾までぞくぞくとしてしまうような素晴らしい反応じゃ♪』 『……ふむ、妾……大分興が乗っておる。なので……特別じゃぞ……?』 『むふっ、驚いたかの? 疲れてしまうので長時間は無理なのじゃが……こういったことも出来てしまうのじゃ♪』 『両の耳を同時に舐められる気持ちは……むふっ、悪いわけがなかろう』 『両方の耳を舐められるなぞ……そのようなはあれむのようなこと、普通の女子は経験できぬぞ?』 『他の人間相手では感じられぬ快楽……しかと胸に刻み込むが良いのじゃ』 『妾のことしか考えられなくなってしまうじゃろう?』 『良いのじゃぞ? 何も考えられなくなってしまっても』 『お主は……どのように溺れて見せてくれるのじゃろうな、むふふっ』 『それどころか……何も考えられなくなっているのじゃろうか? むふふっ』 『そのまま……快楽の海に溺れてしまうと良いのじゃ』 『ほれ……思う存分……妾にお主のとても可愛らしいところを――』 //07_寝かしつけというのも中々に奥が深いものであるな……。(05:07) 「……ぐ、ぐぬぬ……し、舌と顎が筋肉痛なのじゃ……」 「それに……興が乗ってしまいとんと暫くぶりに分身の術も使ってしもうて……魔力も底を尽きかけているのであるぞ……』 「しかも……やはりお主は寝入っておらぬし……妾、一生の不覚なのじゃ……」 「……」 「……それにしても……お主は本当に寝入らぬな? 妾の寝かし付けにて眠らないというのは……余程のことのような気がしないでもないのじゃが……」 「妾、一応考えてはみるが……これ以上は寝かし付けの術を持たぬ気がするのじゃが……じゃが……」 「……ま、まあ、残りの魔力を使用してお主を睡眠状態にする程度であれば……出来ぬことは無いかもしれない気がしないでもないが……」 「……しかし、それは何とはなしに妾のプライドが許さぬ故、出来ればノーマルな感じの寝かし付けを……」 「……」 「……むっ? お主、何かあるというような感じじゃな? その顔、確実に何かあるというような顔付きじゃ」 「ほ、ほれほれ? いうてみい? ここまで来たのじゃ、お主の願望、余さず妾に吐露するのじゃ。魔力も少なくなっていてぐったりしている妾……今なら……お主の好き放題、じゃぞ……?」 「妾のような妙齢の女子を好き放題に出来るチャンスなぞ……なかなかないのじゃぞ……?」 「むふっ、むふふっ……そ、そうじゃそうじゃ♪ お主の好きなように……境内にたまに捨ててある薄き本のように妾を……」 「……」 「……な、なん……じゃと……?」 「妾を……抱っこして寝てみたい……じゃと……?」 「……か、構わぬが……妾を抱っこしただけで……お主は満足なのじゃろうかと……」 「……」 「……ま、まあ……お主がそういうのであれば妾は構わぬが……妾を抱っこしても暑苦しいだけかとー―」 「ふぁっ!? きゅ、急に抱っこされると……驚くではないか」 「……まったく……妾を抱っこしたいなぞ……お主は本当に変わった人間……じゃな……」 「……長いこと生きてきたが……妾を……抱っこして寝たいなぞ…………初めて……なの……じゃ……」 「まったく…………お主…………人間…………は…………」 「……まっ………たく…………おぬ…………し………」 「(寝落ち)」 //08_おまけ ぼたんさんの寝息トラック(07:58)