第5章 縁側での再会 旅館に再び訪れた貴方は、あの縁側で常盤涼菜に再会します。彼女は貴方の顔を覚えているようですが、名前は思い出せないようです。そこで彼女は記憶に残る貴方とのわずかな繋がりを口にするのです。「貴方のことを教えてください!」 ふぅ……今朝のお仕事も終わりましたぁ。 シーズンがずれているというのもありますし、この時期はゆったりとお仕事ができていいですね。 お客様ともたまにお喋りできる、これくらいの忙しさが丁度いいです。 …………そういえば、あのお客様は今どうしているのでしょうね。 名前がわからないせいで、今では彼とどのようなことを話したのかも朧げですけど、とても大切な時間だったことは覚えています。 それに、涼菜みたいな人と関われない人間が、恋愛だなんてハードルの高い妄想をしてしまうほどに、運命を感じたことも。 女の子のそれとは違う硬く太い指。 厚くて頼り甲斐のある胸。 顔はあまりカッコよくはなかったと思いますけど…… …………え? カッコいいだろって? …………わっ!!!! お、お客様いつのまに涼菜の背後に!? 失礼しました。独り言、聞かれてたぁ……って貴方は…… ……んっ…………急に抱き…………この感触、覚えています。 確かに覚えています。 遅い……遅いですよ………… あれから半年……涼菜はもう貴方のことを忘れかけけてるんですからね。 ……仕事で忙しくて休みが取れなかった? もう! 涼菜とお仕事どっちが大切なんですか? ……ズルくなんかないですよ。 ズルいのは貴方の方です。 こんなに涼菜の心を揺さぶって……もう絶対責任取ってもらうんですからね! ……責任ってそれは…………自分で考えてください。 そういうの、女の子に言わせるのよくないと思いますよ? ほらほら、貴方はどう落とし前つけてくれるつもりなんですかぁ? …………えっ? …………もう、そんな遠回りな告白ってあります? でも…………嬉しいです。おそらく、ストレートに言われるよりも、何十倍も。 涼菜も…………いえ、私も貴方が好きです。 初めて会ったあの夜から、貴方以外とこういう関係にはなりたくないと思っていました。 …………そのくせ貴方のことを忘れてしまうんですから、私は本当にダメですね。 でも、これから貴方はずっと私の側にいてくれるのでしょう? なら、安心です。それならきっと、私は……私を覚えていてくれる貴方を覚えていられますから。 さあ、あの日の夜からやり直しましょうか。 ここからが、私たちの再始動ですよ! …………貴方のことを教えてください!