【専門店ヤンデレ癒しボイス様】 仮タイトル 『癒し処 春風亭』 原稿 ※セリフの上の数字がバイノーラル収録時の立ち位置と距離になります。別でお送りする『アクア・アルタバイノーラル指示表』をご参照ください。 ※この執筆には『O's Editor2』を使用しておりますので、同ソフトであれば台本形式(縦書き)の印刷が簡単にできます。 ======================================================================= ※ヒロイン:宮村春香(みやむら はるか)、耳かき癒し専門店の従業員。年齢18歳。包容力のある見た目から大人びて見られることが多々ある。性格は大人しく、相手を包み込むような雰囲気を出しているが、年相応に焦ったりドジをしてしまうこともしばしば。お店自体は両親が経営しており、その関係で小さい頃からお客様と接する耳かき店員時代の母を見て、将来あのような癒しを自分も提供出来たらと母を一番尊敬し目標としている。数年前に足を悪くした父の為に経営に専念すると母は現役を引退したが、教育係として春香に指導もしている。聞き手(貴方)はそんな母の時代の常連客の息子。いつも癒されて帰ってくる親に興味を抱いて来店したのがキッカケに通うようになった。 ======================================================================= 【1】 《風の音や木々の揺れる音等》 足音↓お店の入口が開く音 玄関前に立っていると、遠くから声がする 17「すいません、少々お待ちください」 17〜1「大変お待たせいたしました、ようこそおいでに・・・あ、お兄さん。こんにちは、今日もいらしてくださったのですね」 1「ふふっ、お兄さんの顔を見れると今日も幸せな一日だなーと感じて、つい顔が緩《ゆる》んでしまいます」 1「こほんっ、失礼いたしました。ようこそ、耳かき癒し処《どころ》、春風亭《しゅんふうてい》へ」 1「本日貴方を癒しへご案内いたします、宮村春香と申します。どうぞ、お気軽に春香とお呼びください」 1「ちょっと、お兄さん。今真剣にやっているのでニヤニヤしないでくださいませんか?それに、まだここでは『はるちゃん』はやめてください」 1「お母さんに聞かれたら怒られてしまいますので」 1「どうぞお気軽に『は・る・か』とお呼びください」 1「それでは、立ちっぱなしでは疲れてしまいますので、中へお入りください」 扉を閉める音 1「お部屋のご案内いたします。お履物はこちらの靴箱にお入れください」 廊下を歩いていく 1「え?あ、はい。いつものお部屋です。今日もお兄さんが来てくれると信じて空けておきましたから」 1「さ、お足元に段差がありますのでお気をつけください」 1「どうか、されましたか?何か笑いを堪えているような・・・」 1「き、昨日の事を思い出しているのですか?あれは忘れてください、まさか注意を促《うなが》しておいて、その段差に自分で躓《つまづ》くだなんて思いもしなかったんです」 1「着物を着ていると少し動きづらいですからね、仕方がないことで決して私がドジとかそういうのでは・・・いえ、失礼いたしました。少々取り乱してしましました」 1「到着いたしました、こちらお部屋となります」 襖を開ける音 部屋の奥では部屋と外を隔てる襖が開いており、春から初夏へ移ろいゆく爽やかな風が入ってきている 部屋の中は自然の風と畳の香りがした 1「お客様に気持ちよく過ごしていただくために襖を開け空気を入れておきました」 1「どうぞ、春から移ろいゆく爽やかな風をお楽しみください」 1「さ、こちらへ。お茶をご用意いたしますのでご自由におくつろぎください」 部屋の中へ案内される 部屋の入口の襖を閉める 1「ふー、もう大丈夫ですよ?本当にご自由にしてくださって」 1「はい、はるちゃんです。ふふっ、私の事そう呼ぶお客様はお兄さんだけですからね?」 1「あ、すぐにお茶の用意しますね。今日座布団はどうされますか?私のお勧めは、お日様でポカポカになった畳の上に直《じか》に座ると季節の温かみを感じられて幸せですよ?」 1「ふふっ、では、座布団はさげておきますね。楽になさってください」 右隣に用具を一式居れた籠を持って、春香が座る 7「お隣失礼いたします。お茶は温かいのをご用意いたしますね」 7「春の風には温かいお茶が合いますので」 急須に茶葉を入れお湯を注ぐ春香 7「お茶の前にこちら、温かいおしぼりをどうぞ」 7「お兄さんのお好きな温度でご用意しておきました」 7「昨日は生憎《あいにく》の雨でしたので、少し熱めにご用意したのですが、熱すぎましたから。しっかりその教訓を活かしております」 7「最近は天気がすぐれませんでしたが、久しぶりのポカポカ陽気です」 7「お兄さん、ここのお部屋から見る外の風景お好きですよね」 7「ふふっ、いつもお隣で見ていますから。わざわざ言ってくださらなくてもわかっていますよ」 7「はい、お熱いのでお気をつけて」 7「今日は本当に良い天気ですね」 7「--そうだ、まだ今日は聞いていませんでしたが、いつもと同じ内容でよろしかったでしょうか」 7「はい、承《うけたまわ》りました」 7「いつも同じ内容なので、つい聞きそびれていました。もっとしっかりしないといけませんね」 7「え?あはは・・・母からもよく言われます。春香は少しドジよねって」 7「私はそうとは思っていないのですが、やはり、そうなのでしょうか」 7「いつか、母のような立派な耳かき店員になりたいものです」 7「あ、はい。そうです。母は既に現役を引退してまして、このお店の経営へ専念しています」 7「元々は、父と母で立ち上げたお店のようなのですが、父が経営面、母が経営のお手伝いをしつつ耳かき店員としてやっていたそうです」 7「ですが、数年前に父が足を悪くしてしまいまして、母が経営に専念するということで引退しました」 7「だいたいその頃ではなかったでしょうか」 7「何がって、私とお兄さんがこのお部屋で初めて過ごした日ですよ」 7「もしかして、忘れちゃってましたか?あらっ、そんな忘れん坊さんなお兄さんなんて、空いたコップと冷めたおしぼり没収です」 コップとおしぼりを回収する春香 7「ふふっ、そんな慌てなくても大丈夫ですよ。お兄さんが忘れてないのわかってて言ってますから。昨日の段差の件で笑われたお返しです」 7「さてさて、今日もお耳掃除しちゃいましょうか。と言っても、昨日もしているのでどちらかと言うと膝枕がメインになってしまいそうですが」 7「---んー、そうですね。いつもと同じ感じの膝枕では物足りなくなってしまいますかね」 7「いえ、しっかり耳かきもさせていただきますが、膝枕がメインとなるならば、いつもと同じ普通の膝枕では少々物足りなさが出てしまうかと思いまして」 7「変化を持たせたいところですが・・・そうですね、今日は暖かな陽気ですし、少し大胆になってしまいましょうか。よいしょっと」 座った状態で足元の着物をはだけさせ、太ももが露わになった春香 7「どうでしょうか、少し恥ずかしいですが太ももを出してみました」 7「これで、いつもの様な着物の上からではない、生足での膝枕・・・なんちゃって」 7「ちょ、ちょっと大胆過ぎましたか?もしはしたないと思われるようでしたらすぐに直しますが---」 膝枕に寝転ぶ 3「わっ、びっくりした」 3「直すって言った瞬間にすごい勢いでお膝に寝転びましたね」 3「もー、お兄さんったら。そんなに慌てなくたって大丈夫なのに」 3「そんなに私の生足の感触を味わってみたかったのですか?」 3「ふふっ」 3「(耳元囁き声)エッチなんですね」 3「でも、そんなお兄さん。私結構好きですよ?可愛くて」 3「それに、自分の欲望に素直なのは良いことですから」 3「それでは、いつも通りに耳かきさせていただきますね」 左耳耳かき開始 3「それで、どうですか?必死になって味わいたかった生足の感想は」 3「温かい、ですか?ふふっ、それはお日様のおかげかもしれませんね」 3「着物の上からでも、このお膝はポカポカ温められてましたから」 3「ん?それと、なんですか?」 3「やわらかい・・・それは素直に喜んでよいものなのか複雑です」 3「女の子の柔らかさと言うのであれば良いのですが、過度な肉が付いてしまっている柔らかさであった場合、今日からご飯を抜かねばなりませんから」 3「ちゃんと、女の子のやわらかさだけですか?」 3「あっ、もう。確かめようとあまり頭を動かさないでください、耳かき中なんですから、めっですよ?」 3「本当にもう、イタズラっ子なお兄さんなんですから」 3「やっぱり、昨日したばかりなので綺麗ですねー」 3「お掃除というよりも、マッサージ感覚でやっていきます」 3「ここらへん重点的にしてほしいなどありましたら遠慮なくおしゃってくださいね」 3「---春が、終わっていきますね」 3「この時期の風や香りも大好きではありますが、どこか寂しさも感じてしまいます」 3「お兄さんはやっぱり、夏のほうが好きですか?」 3「いえ、お兄さんエッチなので、女の子が薄着になる季節のほうがお好きなのかなーと思いまして」 3「ふふっ、隠さなくても目線とかは案外気づかれるものですよ?」 3「この開けてる胸元とか、いつもチラチラ見ているではありませんか」 3「先ほど、太ももを露わにした時も、釘付けでしたよ?」 3「いえいえ、嫌だなんて感じません」 3「むしろ、私の脚でも魅力的に見てくださるのだなと、安心していますし」 3「もし、見られて嫌な相手ならば、そもそも露出させませんから」 3「まさか、誰にでもこういうことしてるだなんて思っていませんよね?」 3「一応言っておきますが、このお店は皆さんに癒しを感じていただいて、日々のストレスやお疲れを無くすお手伝いをするお店です」 3「初めてのお客様にこんな事したら、何か違うお店のように思われるではありませんか」 3「ですので、信頼できる方、そもそもお兄さんにしかこんなサービスはいたしませんよ」 3「私はこのお店を誇りに思っています」 3「初め、ここに足を運ばれるお客様の殆どが笑顔を無理なさっていたり」 3「どこか、暗い顔をされているお客様ばかりです」 3「そんな皆さんがお店を出るころには憑き物が落ちたようなすっきりされたご様子で、素敵な笑顔で『ありがとう、また来るよ』と言ってくださいます」 3「あの笑顔を見るたびに、ここで働いててよかった。もっとお力になりたいなと思わせてくれる」 3「それに、大好きな両親が大切に育《はぐく》んできたお店ですから」 3「下手なことをして、悪い評判は付けたくないのです」 3「あ、すみません。私ったらいきなりこんなお話を」 3「ついお店の事となると熱くなってしまうところがあるみたいで」 3「もっと何か明るいお話でもいたしましょうか」 3「そうですねー、今日はどんなお話が良いでしょうか」 3「お兄さんは、何か聞きたいこととかありますか?」 3「初めてのお兄さんの印象・・・ですか」 3「いきなりどうしたんですか?そんな事お聞きになって」 3「あー、今のこの特別な状況をなぜしてくれるのか・・・なるほど、そこから気になったのですね」 3「そうですね、初めての印象が凄く良かったから、だなんて一時の気持ちではありません」 3「ここに来られる皆様が素敵な方々ばかりですから」 3「確か・・・、初めてお兄さんがいらしたときは凄く挙動不審だったのを覚えています」 3「お店の扉を少しだけ開けて、中の様子を伺って」 3「さながらドロボウさんが今から盗みに入るぞって雰囲気でしたよ?」 3「私も少し怖かったですし」 3「そんな風だっけって、そうだったんです」 3「あの頃はまだ私も新人でしたので、主にお迎えを担当していたのですが」 3「あんな風に入られたお客様はお兄さんが初めてで、その関係で言えばインパクトはあったかもしれませんね」 3「なので、私もお声がけするのが遅れてしまって、焦って声をかけたら、お兄さんってばビクッてして壁に手をぶつけてしまっていましたよね」 3「え?忘れたんですか?あら、ご自分のお恥ずかしい記憶は忘れてしまうようですね。ふふっ」 3「そのあと、私が手のお怪我を介抱させていただいたんです。本当にお忘れです?」 3「え、ちょっ、お兄さん。あの時救急箱を盛大にぶちまけた事は忘れてくださいと何度も言ったはずですよっ」 3「私もまだお客様と接するのに不慣れで、そんな状況になったこともありませんでしたから」 3「早くお怪我を直してあげなきゃと焦ってしまったんです」 3「あの後音に気付いてやってきた母に裏で怒られたんですよ?」 3「とっても苦い思い出です」 3「ですが、あの時の焦らなくて良いよと先ほどまでの挙動不審ぶりが嘘のように優しくお声を掛けてくださったのが、とても救いでした」 3「なので、どちらかというとお兄さんとはお部屋で仲良くなったというよりも、あの入り口でのハプニングで仲良くなったという感じでしょうか」 3「ふふっ、そうですよね。もうお部屋にご案内する頃にはお兄さん、とても柔らかな笑顔でしたから」 3「今までお聞きしませんでしたが、こんな機会ですので・・・どうしてあの日はあのような来店のされ方を?」 3「このようなお店が初めてだったから、なるほど。確かにこの形式のお店は滅多に見かけませんから、不安にもなりますよね」 3「でも、それならどうして来てくださったのですか?」 3「当時お話していた印象ですと、特に疲れているからといった印象が無かったようにお見受けしましたが」 3「え?母の時にお兄さんのお父様が常連の・・・そうだったんですか」 3「難しい顔をして帰ってくるお父様がこのお店に通い始めてから明るくなったから気になったと」 3「それで、慣れてもいないお店に興味を持ってきてくださっていたのですね」 3「なるほどなるほど、ついにあの頃の謎が解けましたね」 3「そして、そんなお兄さんも今では立派なご常連と」 3「ふふっ、嬉しいんですよ」 3「親子揃って、世代を渡りお癒しできることが」 3「それだけこのお店を気に入っていただけるのはとても素敵な事だと思いませんか?」 3「それに、お互い親と子で繋がっている縁《えにし》、どこか運命を感じてしまいます」 3「もしかしたら、お兄さんと私は何か細い糸で結ばれていのやもしれません」 3「なんて、ちょっとロマンチック過ぎたでしょうか?」 3「あら?どうかされましたか?」 3「お耳が真っ赤になっていたので、気になってしまって」 3「今日は温かくはありますが、まだ涼しげな気温ですのに」 3「不思議なこともあるものですね・・・ふふっ」 3「え?私ですか?さて、どうでしょうか」 3「あ、だからと言ってこっちを振り向こうだなんてしないでくださいね」 3「今は耳かき中ですので」 3「そうです、耳かき中は私の思うがまま」 3「主導権はこちらにあります」 3「あら、どうしましょう。お兄さんは知らぬ間に悪い娘の術中《じゅっちゅう》にハマってしまっていたのですね」 3「え?可愛いから許す?あらまぁ、私が捕まえた人はお口が上手な私よりも悪いタラシさんだったようですね」 3「ついキュンときてしまいました」 3「そんなお口が上手なタラシさん?そろそろお耳の交代でもしましょうか?」 左耳かき終了 3「今から向きを変えていただきますが、一つだけ注意を」 3「今日は特別仕様での膝枕をしておりますので、その・・・いつもと少々服装の勝手が違います」 3「ですので、向きを変える際と終わった後は、なるべく下のほうは見ないで頂けますと助かります」 3「見えないとは思いますが、際どくはなっていますので」 3「下のほうをジッと見られるともしかして・・・という事態になりかねません」 3「・・・見ないでくださいね?」 3「はい、それではゴロンっとお願いします」 向きを変え、目の前の視界が春香のお腹あたりになる 少し下に目線を向けると、露出した太ももと、その先の暗闇が見えそうだった 7「お兄さん?女性は男性の目線に敏感なんですよ?」 7「初めのほうにもそんな話しましたよね?」 7「さて、ではお兄さんの今の目線は一体どこへ向いていたのでしょう・・・」 7「ふふっ、意地悪が過ぎましたね」 7「もし、どうしてもその太ももの隙間の先が気になるようでしたら」 7「少しだけなら・・・という展開には残念ながらなりま・・・」 7「ん?どうかされましたか?」 7「あー、太もものホクロですか。見つかっちゃいましたね」 7「そうなんです、こんなとこにちょこんとありまして」 7「おそらく、ここにコレがあるのを知っているのは私と」 7「そして、お兄さんだけです」 7「恥ずかしいので、言いふらしたりなんかしないでくださいね」 7「これは2人だけの秘め事です」 7「さ、そんな見ないでくださいと言った矢先に太ももの付け根のほうにあるはずのホクロに気づいてしまったお兄さん?」 7「いったい本当は何を見ようとしたかは全く見当もつきませんが、邪な何かを感じましたので耳からかきだしちゃいますねー」 右耳かき開始 7「え?いえ、耳かきで本当にそんな除霊的なことは出来ませんよ」 7「世界中探せばどこかにはいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも私にそんな特別な力はありません」 7「ただの普通な女の子ですので」 7「でもそうですね、何かそんな耳かきで出来る特別な力が本当にあるのだとしたら」 7「私には耳かきで皆さんの日常の疲れを掻き出せる、というところでしょうか」 7「近からずも遠からずといった所ではないでしょうか?」 7「今のこの雰囲気や、一緒に他愛もない雑談やお悩み相談」 7「膝枕やお日様の香り、自然の風」 7「複合的な要素は多々ありますが、その中でもこの耳かきという行為には自信がありますので」 7「これでも、毎日頑張って技術向上を目指しているんですよ?」 7「お兄さんが帰った後すぐに、ここが気持ちよさそうだったなーとか、このぐらいの力加減がお好きそうだったなーとか」 7「そんな風に日記に記して、その後は母からご指導いただいたりなど」 7「ふふっ、そんな頑張り屋さんには見えないですか?」 7「見えないところで努力をする、それが立派な耳かき屋の娘になるためには必要だと思いますので、努力は怠らないです」 7「日々の積み重ねが、お兄さんたちの癒しへ繋がっていますから」 7「感謝、してくれても良いんですよ?ふふん」 7「あ、そんな本当に感謝の言葉は言わなくていいんです」 7「あ、当たり前のことをしているだけですので、ごめんなさい、調子乗ってしまって」 7「つい相手がお兄さんだとこんな軽口も言えちゃうようです」 7「どうしてでしょうね、どこか包まれる優しがあるからでしょうか」 7「この人になら素直な私を見せても受け入れてもらえそう・・・だなんて、つい甘えているのかもしれません」 7「もしご気分害されるようでしたら言ってくださいね?」 7「今更って・・・もぉ」 7「でも本当に、お兄さんだけなんです」 7「こんな風にお相手ができるのは」 7「不思議・・・ですね」 7「きっと、少し前の話に戻りますが」 7「第一印象のとこからの長い積み重ねが」 7「私たちの雰囲気を作ったのでしょうね」 7「さっきはハッキリとは第一印象について言いませんでしたが」 7「素敵な方だな・・・と感じていました」 7「知っていますか?このお店は春風亭と言うのですが」 7「春風《はるかぜ》というのは春の日に吹く穏やかな風の事を指します」 7「ですが、春風には他の意味もあって」 7「新しい物事を始める、という意味もあるそうです」 7「まぁ、諸説あるので本当かどうかはわかりませんが」 7「この店にはそんな、春風が持ってきた新しい自分になって明日へ送り届けたい」 7「そんな意味があるようです」 7「疲れも、嫌なことも、癒しで取り除いて」 7「春風が運ぶ穏やかな新鮮な自分を」 7「そんな春風亭に春風がイタズラで運んできたんでしょうか?」 7「穏やかで、優しくて、暖かな・・・そんな人を連れてきました」 7「その人は、初めはどこかヨソヨソしくて、少し頼りがいがなさそうな雰囲気をだしていましたが」 7「次第に立派な春の陽気へと変わって温かく包み込んでくれて」 7「癒しを提供する私に何度も会いに来ては穏やかな風を運びに来てくれる」 7「春風が人になったのであれば、こんな方なんだろうなと」 7「まさに春風亭の名の通りなお客様がいらしたのです」 7「さて、それがいったい誰なのか・・・この続きは春風亭物語第二章に続くのですが購読いたしますか?」 7「ふふっ、最近はなんにでもお金がかかってしまう時代ですので、無料お試し版はここまでとなってしまうんです」 7「購読する場合は、そうですね」 7「対価として、お兄さんのお時間を頂いております」 7「ざっと残りの一生分くらいでしょうか?」 7「それだけ頂ければ、第二章をゆっくりとお聞かせすることも可能かもしれませんね」 7「ふふっ、どうされるかはまたいつかお伺いいたしますので、今はただ、この癒しに耳も身体も心も預けてください」 7「あー、難しい顔してますね?ダメですよ、今考えたら」 7「ちゃんと購読申請期間はたっぷり設《もう》けていますので、今難しく考えてしまったら春風もヨソヨソと泣いてしまいますよ?」 7「ふふっ、聞き分けの良いお兄さんは大好きですよ?」 7「---この春があけると、本格的に夏がやってきますね」 7「これはちょっとした愚痴になってしまいますが、熱くなるとこの格好は大変なんです」 7「着物は想像以上に暑いですから」 7「今でも胸元をあけて対策していますが」 7「さすがにこれ以上はだけてしまうと、それはもう大変なことになってしまいますから」 7「何かいい方法があればいいのですが、心当たりはありますか?」 7「いつも、ですか?いつもはお客様のいないところで空気を中へ送ったり、胸元の汗をぬぐったり程度でしょうか」 7「帯で締めているので通常よりは汗は出ないのですが、やはり多少は出てしまって・・・ベタつくと余計に暑く感じてしまいますしね」 7「そうですよ?胸の下あたりをキュっと帯で締めることによって、汗腺《かんせん》が締め付けられるので汗が出にくくなるんです」 7「舞妓さんなんて、一番わかりやすいんじゃないでしょうか」 7「お化粧が落ちないようにという意味もこめて、きつく締めてると聞いたことがあります」 7「やはり、なかなか難しいですね。今年も気合いでなんとか乗り切るしかないようです」 7「え?もし本当に辛かったら伝えてほしい・・・ですか」 7「ふふっ、ではその時はお兄さんにお願いしちゃいましょうか」 7「私が足元をはだけさせて、その隙間から風を送ってもらう係を」 7「・・・どうして少し期待した顔をされてるんですか?」 7「しっかり横顔でもわかりますからね?それに、あくまでもお兄さんもお客様ですので、そんなことはさせません」 7「癒しを味わっていただく相手に、ご奉仕なんかさせたらお店から追い出されてしまいます」 風が吹き、緑に染まった葉が頭にのる 風の音 7「あ・・・お兄さん。今の風で運ばれた葉がお兄さんの頭の上に乗りましたよ」 7「私たちがもう夏の話をしていたので、春が嫉妬したんでしょうか?」 7「まだ春は終わっていないぞって」 7「ふふっ、なんかお兄さん。たぬきさんみたいですね」 7「たぬきは人を化かすときに葉を頭にのせて変化する・・・なんて映画ありませんでした?」 7「はい、あの有名な。今まさにお兄さんがその状況です」 7「いったい私はどんな風に化かされてしまうんでしょ、ワクワクしますね」 7「・・・確かに、耳かきされている状態では何もできませんね」 7「では、また後にでもこの葉っぱをお兄さんの頭の上に乗せなおしますね」 7「期待されても何もできない?ふふっ、さぁーどうでしょうか」 7「お兄さんならきっと、素敵に化かしてくれると信じています」 7「今のお兄さんの角度からでは見づらいですが、先ほどの風で花びらも舞っていて、とても素敵な風景になっていますよ」 7「あ、もぉ。でーすーかーら、頭は動かないでください」 7「危ないですし、何気にくすぐったいんですよ?」 7「えぇ、今日は脚の上に直接ですから」 7「動かれるたびに髪の毛が私の足をくすぐってくるんですよ」 7「私が代わりにお伝えするので、それで我慢してください」 7「今、目の前にはピンクや白の花が舞っています」 7「そこに彩《いろどり》を足しに来たかのように緑の葉っぱが一緒に舞い始めました」 7「まるで、皆で踊っているかのように」 7「どうでしょう?伝わりましたか?」 7「あまりよくわからない・・・ですか」 7「すみません、伝えるのが苦手で」 7「光景も心情も」 7「伝えるというのは中々どうして、うまくいかないものですね」 7「えぇ、私にだって苦手はありますし、お話しすることもご奉仕の一つなのですが」 7「いまいち、苦手な所もあります」 7「私は元々、幼い頃。とても口数少ない子でして」 7「話すことが苦手・・・というよりも、話すことができない」 7「話すという行為に恐れを抱いていたのかもしれません」 7「当然、小さな私にも本当の理由はよくわからず」 7「とても大人しく、いつも周りの顔色を伺っていました」 7「そんなある日ですかね、母が色々な人と楽しそうに話していて」 7「来店した姿はどんよりとしていた人も、話しているうちに明るく変わったのです」 7「そんな光景をこそっと裏から覗いていた私には、その光景が明るく見えて」 7「少しづつですが、人とお話しすることを学びました」 7「そのおかげもあって、今ではお兄さんとたくさんお話しすることも出来ました」 7「本当は悪いことかもしれませんが、覗き見しててよかったと、当時のやんちゃな私に感謝ですね」 7「まぁ、その後ちゃんと怒られましたが」 7「---あ、桜」 7「まだ、咲いているのもあったんですね」 7「もう殆どが散ってしまったと思っていましたが」 7「えぇ、今ふと庭の桜の木を見たら僅《わず》かですが桜が咲いていて」 7「他の子たちよりも、のんびり屋さんな子たちなのでしょうか?」 7「もう今年の分は終わったと思っていましたが、大発見ですね」 7「え?あ、はい。桜は大好きですよ」 7「私の場合はたくさん咲いてる桜も好きですが、ああやって少しで頑張ってる1つとしても好きです」 7「お兄さんもよく見ているこの着物も、桜の柄なんですよ?」 7「あ、ちゃんと気づいてくれてたんですね。この着物がお気に入りって」 7「では問題です。もう一か所私がよく桜を付けているところがあります。それはどこで・・・」 7「ちょっと、お兄さん。フライングですよ」 7「ですが、正解です。そう、髪飾りです」 7「これは簡単でしたかね」 7「そうです。お母さんから頂いた桜の髪飾り」 7「私が一人前になったという証に、現役時代から付けていたこの髪飾りを譲って頂いたんです」 7「なので、私にとってこの桜の髪飾りは2つの意味でとても大切で」 7「これは、母にも内緒なのですが」 右耳かき終了 7「(耳元囁き)実はこの髪飾り。お兄さんの前でしか付けてないんですよ」 7「はい、耳かき終わりです」 7「え?今の言葉の意味ですか?さぁ、なんでしょう。伝えるのが私は苦手なので、お兄さんが自力で解いてください。2つ目の問題としておきますね」 7「さてお兄さん」 顔を春香のほうに向ける 1「お時間はまだ残っていますが、今日はどうなさいますか?」 1「昨日は頭を撫でさせて頂きましたが」 1「せっかくの特別な膝枕だから堪能したい・・・ですか」 1「本当に、もぉ・・・ふふ」 1「ではせっかくですから、お外が見えるように横に向いてはどうですか?」 1「私の顔を見上げているよりも、よっぽど綺麗かと」 1「・・・そこまで言っても私の顔を見上げているタラシさんは、ホント悪いお人です」 1「お顔が赤くなってしまいますので、向こうむいてください」 膝枕をしてもらったまま、外が見える向きへ身体と顔の向きを変える 3「---静か、ですね」 3「ただ、春の音だけ」 3「この付近は本当に何もありませんが」 3「私はこのお店から見える風景が好きです」 3「都会のようなコンビニも無くて」 3「バス停なんかも15分歩いた先に1個だけ、それも1時間に1本と何から何まで不自由ですが」 3「この不自由さが魅力だと思います」 3「殆どのお客様が車で来られる方ばかりですが」 3「車が無いお客様はわざわざこの15分の道のりを歩いて来てくださいます」 3「ですが、そんなお客様が口をそろえて言ってくださるんです」 3「この何も無いのが魅力だから、全然大変じゃなかったよって」 3「道中の季節に合わせて姿や動きを変える木々」 3「また、それこそ風や香り」 3「何もないからこそ、どんな色にも染まることができる風景」 3「私はこのお店からそんな、何もないからこそ色々な景色を見せてくる。ここが大好きで」 3「その大好きな物を、特別な人とゆっくり眺めることが出来る幸せが、愛おしく思います」 3「ふふっ、どうしました?またまたお顔が赤いように見えますが」 3「今日は大胆になっているせいでしょうか」 3「いつもよりもお兄さんにちょっかいをかけてしまっていますね」 3「あ、そうだ。頭に乗ってた葉っぱ、お兄さんの頭の上に戻しておきます」 葉っぱをお兄さんの頭の上に乗せる春香 3「これでいつでも私を化かすことが出来ますよ?」 3「さて、お兄さんはどのように化けちゃうのでしょうか」 3「・・・お兄さん?あれ、もしかして怒らせてしまいましたか?」 3「あの・・・あ、寝ていますね・・・」 ここからお兄さんを起こさないように抑えめの囁き声で ※耳元過ぎないように注意 3「んー、本当に寝てるのかな・・・もしかして寝たふりとか」 3「実は寝たふりをして化かしていたのだーとかそんな展開は・・・あ、無さそう」 3「ふふっ、ポカポカな陽気だから、本当に眠っちゃったみたい」 3「生足膝枕の効果でもあるのかな?」 3「初めはやりすぎたって思ったけど、凄く喜んでくれたみたいだし安心」 3「それにしても、こんなに可愛い寝顔しちゃって・・・身体だけ大きな子供みたい」 3「ツンツンってしたら起きちゃうかな?」 3「だ、ダメだよね。せっかく幸せそうに寝てくれてるんだから・・・」 3「---そういえば、結局気づいてくれたのかな」 3「それっぽい言葉とか行動は色々入れてみたけど」 3「もしかしたら気づかないかなー・・・それはそれでショックかも」 3「お兄さん、鈍感そうだもんなー」 3「ふふっ、でも、そんなお兄さんも---」 3「もうここに通う様になってくれてから結構日にちもたったなぁ」 3「思い返して見れば、初日のあの日から・・・」 3「でも、確信したのはお兄さんと過ごした癒しの日々のおかげ」 3「いつでも春のような暖かさを運んでくれた」 3「私の春風」 3「『春香』な私とは相性良いと思いますよー?どうでしょうかー?」 3「なーんて、起きてたら絶対に言えないや」 3「---あ、どうしよう。お兄さんの寝顔見てたら少し眠くなってきた」 3「うぅ・・・頭がカクカクするぅ・・・」 ここから耳元囁き 3「ん、お兄さんの顔が近い・・・」 3「だ、だめ。本当に寝ちゃう・・・」 3「あ、お兄さんのまつ毛、意外に長いんだ」 3「ふふっ、また一つ魅力見つけちゃった」 3「って、それどころじゃないよぉ」 3「今日お母さんとお父さん出かけてるからお店任されてるのにぃ」 3「うぅ、少しだけ・・・本当に1分だけ目を閉じたら起きよぉ」 3「そうすれば少しでもマシにぃ・・・」 3「すぅー・・・すぅー・・・」 寝息5分程度 その後フェードアウト ======================================================================= 【2】 3「うぅ・・・ん?あれぇ?お外が真っ暗にぃ・・・」 3「ふぇ・・・あれ・・・あれ?あれあれあれ??」 3「---やっちゃった・・・」 3「お、お兄さんっ。起きて、起きてください」 ゆっくり目を覚ます 3「本当に申し訳ありませんっ。つい私も眠ってしまっていたようで」 3「気づいたらお外が真っ暗で、その、あの・・・えっと」 3「ほ、本当に・・・ごめんなさい」 3「---え・・・外、ですか?」 3「あ・・・星空が、綺麗です」 3「今日はお店の電気をまだ点《つ》けていないので・・・」 3「電気を消すと、こんなにも違って見えたんですね」 3「この星空が見れたから気にしないでって、いや。その、そういう問題では」 膝枕から起き上がり春香の隣に座る 7「---どうしたんですか?突然起き上がって私の隣に座りなおして」 7「あっ・・・」 7「肩を抱き寄せるだなんて・・・そんないきなり・・・」 7「星空を見たいけど、まだ夜は肌寒いからって・・・なんですかそれ」 7「私は湯たんぽではありませんよ?」 7「でも、私のせいでご迷惑をかけてしまいましたので・・・今夜だけは、お兄さんの好きにしてください」 7「---今日のお帰りのご予定は大丈夫なのですか?」 7「あ、いえ。帰ってほしいとかではなくて、むしろ帰ってほしくない・・・でもなくて」 7「これ以上私のせいでご迷惑をおかけできませんから」 7「もし帰らなければいけないようでしたら、タクシー代は私が持ちますので・・・」 7「特に大丈夫・・・ですか」 7「なるほど・・・そうなのですね」 7「では・・・その、もう少し満天の星空を堪能されていきますか?」 7「はい、わかりました。もしまだ肌寒いようでしたら、もっと強く抱いてくださっても構いませんので」 7「散々お兄さんの事悪い人と言いましたが、本当に悪いのは私のようです」 7「お兄さんにご迷惑おかけしたのにも関わらず、今こうやって、綺麗な夜空を一緒に見られることを嬉しく思っています」 7「知っていますかお兄さん。冬の大三角形はとても有名ですが春の大三角形もあるんですよ?」 7「うしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、そしてしし座のデネボラを結んで春の大三角形といいます」 7「特にこの中で私はスピカが好きなのですが、スピカはなんと太陽よりもずっと明るくて・・・ってこんな話つまらないですかね」 7「---ここには何も無いといいましたが、夜にはこうやって一面を星というダイヤモンドで飾ってくれるんです」 7「ですので、ホントに少しですが星に興味を持った時期がありまして、色々調べたりしたんですよ」 7「今地球上で採掘されているダイヤモンドは、元々宇宙にあったものが地球が生まれる時に取り込まれて、長い年月を経てあのような綺麗な輝く物質になったと言われています」 7「なので、今見えている星もダイヤモンドなのではないかとか・・・そんな風に思いをはせたり」 7「私って結構ロマンチストなんです」 7「意外でしたか?そんなお顔をされていますので」 7「ん?どうしましたか?」 7「あー、まだほんの少し肌寒かったですか」 7「そうですね・・・私は思いのほかドキドキしているせいか暖かいので」 7「肩を抱き寄せるだけじゃ物足りないのでしたら、添い寝でもいたしましょうか?」 7「少し、失礼いたします」 身体をゆっくりと倒す春香 それと一緒に自分も丁寧に押し倒される 7「少々強引でしたでしょうか?押し倒させていただきました」 7「こうでもしないと、お兄さんは添い寝に同意して頂けないと思いまして」 7「それに、こう・・・」 身体を完全に密着させ口元を耳元近くまで寄せる春香 ここから耳元囁き 7「完全に身体を密着させて添い寝したほうが暖かいと思いますので」 7「い、いひゃがでしょうか?」 7「・・・大事な所で噛んじゃいました」 7「・・・ふふっ、中々雰囲気を作るというのも難しいですね」 7「この閉まらなさがドジと言われる所以《ゆえん》でしょうか」 7「今夜はこのままお休みになってください」 7「明日お好きな時間にお帰りになってくだされば問題ありませんので」 7「そしてまた、いつものようにご来店ください」 7「私は、いつでもこのお部屋でお兄さんがいらっしゃるのをお待ちしています」 7「ですが、もしワガママを聞いてくださるのであれば・・・」 7「・・・お兄さんに伝えているこのぬくもりが、冷める前に」 7「お早めに来てくださることを、祈っております」 7「ふふっ、なんだか・・・照れますね」 7「自分で言っておいてではありますが」 7「それでは、少しでもぬくもりが冷めないように」 7「ぎゅーっと、たっぷり温めさせていただきますね」 7「次のご来店を・・・心よりお待ちしております。お兄さん♪」 終