(扉をノックする音) 【ものすごく媚びた声で】 「失礼しま~す♡ わああ、すごく素敵なお部屋ですぅ! アリカぁ、こんなに素敵なお部屋を見たの、初めてかもしれないですぅ!  あっ! おじさま、ごめんなさい! あんまりにもお部屋がきれいだったから、つい挨拶を忘れちゃいましたあ。許してくださいますか?  ……わあ、ありがとうございますっ♡ おじさまってえ、とってもおやさしいんですねえ……♡  今日だってえ、旅の途中で立ち寄っただけのアリカを、こーんなに素敵なお屋敷に招待してくれて、泊めてくれるだなんて……本当に素敵なおじさまですぅ。  アリサぁ、ずっとずっと冒険をしながら旅をしてるんですけどぉ、最近はもうお金が少なくなってきちゃってえ、どうしようかとおもってたんですよぅ……だから本当にたすかりましたぁ、ありがとうですっ」 【冷たいこえで】 (……なーにが、「当然のことだよ」、ですか。さっきからアリカの体をちらちら……ううん、これはもうジロジロとですね。いやらしい視線で見てるのがまるわかりですぅ。  噂通り、きしょくわるいスケベジジイみたいですねぇ……まあそのほうが、アリカにとっては仕事がやりやすくて助かりますです。  このスケベジジイが、この町で一番偉い人物だなんて世も末ですが……裏では魔族と手を組んで、違法な行いをしているのはもうわかりきっていることです。あとは証拠だけ……このジジイ、なかなか尻尾をつかませやがらねえです。  だからこのアリカが、このジジイの気を引いてる間に、ギルドの仲間に館に侵入してもらって、証拠を探ってもらうです。あいつらなら間違いなくやってくれるはずですよ、ちょっとおっちょこちょいなとこもあるやつらではありますが……  ま、とにかく! アリカは自分の仕事をするだけです、あいつらを信じて、ね。  ……それにしてもこのスケベ、ほんとうに視線が……確かに胸元を出す服をきてきたのはそのためなんですが、ここまできいていると、ちょっとどころでなくひいちまうです……) 【ものすごく媚びた声で】 「それでえ、夜分遅くにもうしわけないんですけどお、ちょ~っとだけ! おじさまに相談があるんですぅ。  ……約束通り、二人っきりにしていただけましたか? ……ありがとうございますですぅ! 約束を守れる男性ってぇ、すっごく好きなタイプですぅ……♥️  じゃあ、おじさま、座ってお話させていただきますぅ。  ……う~ん、でも、正面に向かい合ってすわるのは、こう……なにか、ちがうとおもいませんか? ……そうですぅ、ここからするのは、大事でぇ、秘密のおはなしですからぁ……おじさまのおとなりに、失礼いたしますねぇ♡  ふふふ……殿方の隣にすわるだなんて、はじめてですからぁ、緊張しちゃいますぅ。それにぃ、おじさまって、近くで見ても素敵な方ですね……♡  やっぱりぃ、おじさまになら、良いとおもいますぅ。  ……なにが、ですかって? それはですねえ………………」 【耳元でささやくような誘う声で】 「ね、お・じ・さ・ま。  アリカのことを……ネーデリン・アリカ・ノクルのことを、買ってはいただけませんかぁ……? ……はい、そーです♡  おじさまと、えっちなことをしますからぁ、お金がほしーんです♡  おじさまってば、さっきからアリカの胸元を……ううん、アリカのおっぱいばっかりみてますよねぇ♡ さわりたいんでしょ? アリカのぉ、おっぱい♡  おっきいですもんねえ、アリカのおっぱい♡   ……もちろん、たかいですよぉ。それに、契約書もきちんと書いてもらいます。  さきほどの名乗りでわかってるとおもいますけどぉ、アリカ、こうみえて貴族の家系ですから……それに、まだ、したこと、ないんですよ?  一人で旅をしてるとですねえ、アリカに無理やりえっちなことをしようとしてくるこわーい男のひと、たくさんいるんです。  みんなこわーい目つきで、アリカのおっぱいをみながら、おそいかかってくるんですよぉ。みーんなやっつけてきました。  アリカもいつかは旅を終えたら、おうちにかえって、貴族の結婚相手を探すんです。  ……ね、おじさま♡ アリカの将来の結婚相手よりもはやく……ほんとうは貴族の男の人だけがうばうことのできるアリカの処女、ほしくないですか?  生まれつき勝ち組だってことがきまってる貴族の人から、アリカの処女、うばいたくないですか?  ……もしおじさまがアリカのことをかってくださるのならぁ、アリカ、将来の旦那様には嘘をついちゃいます。まだしたことありません、って……でも、おじさまには嘘をつかないですよ? 正真正銘の、しょじょ、です♡  どうですかぁ……? 金額は……このくらいですぅ。もちろん現金一括払いですよぉ」 【うまくいっていて調子に乗っている感じです】 (ふふ……思った通りとまどってますねえ。そうでしょうそうでしょう。  払えなくもないけど、払ってしまえばこれからが本当に大変になる金額を設定してきましたので♡  それに、もし払うと言っても、この額の現金を一括で払うのには、まともな方法では難しいハズですぅ……そのときは、魔族に手助けを求めるにちがいありませんです。  もし仲間たちがうまくいかなくても、こっちでも証拠を探ってやれれば……それが一番ですからね。もちろん、その場合の契約書には、アリカに手出しができないようにするための条件がしこまれています……なんせ魔法の契約書ですからねえ。自衛の策もばっちしですぅ。  まあ……この契約書一枚つくるのに、それこそ悪魔の力を借りてはいますが……それはギルドを通した法的に問題の無い魔術の一環です。  高くついたし、色々と準備に手間取りましたが、絶対にうまくやってみせますです) 【すごく媚びた声で】 「ね、どうしますかぁ? ……たーくさん、なやんでいいんですよぉ。時間はたっぷりありますか…………ら? なんのおと……でしょう?  ……新しい魔法道具の音? はあ……最新の魔法道具で……ああ、そおなんですかぁ。やっぱりおじさまはすごいですねえ、そんなものまでもってるんですねえ。  でも今は……え? 屋敷の中にいる警備隊と連絡を取るための道具? ……え? ちょ、ちょっと……す、すこし話をしてくる?? え、ええ、もちろん、かまわない、です……」 【あせったこえで】 (な……そんな魔法の道具が? いやでも……落ち着いて。それだけなら別に、なんだってないはずです。  あいつらがそんな、つかまったりとか、しないはず、です……うう、はやく話をおわれです、なにをはなしているのですか……俺がいくまで絶対に手を出すな? なにをいって……) 【あせりのある媚びた声で】 「え、と……お、おはなしは終わったですか? じゃ、じゃあこっちの話のつづきを……え?  ア、アリカを買うのはやめにする……? な、なにがおこったん、ですか?  ……や、やしきに忍び込んだ女が捕まったから、そ、そいつらで、って……! 青い髪で、背の高い女と、目つきのするどい小柄な女、って……!」 【あせったこえで】 (ま、間違いないです! あ、あいつら、つかまっちゃったんですか……!? あいつらがつかまるなんて、そんなバカな……国城の最深部にだって忍び込めるやつらですよ!?  こんなちんけな屋敷の警備員につかまるなんて……まっ、まさか、ギルドの中に内通者が……? そ、それぐらいしか考えられないです!  い、いや、それよりいまは……今動けるのは、アリカだけです……あいつらを助けられるのは、アリカだかです! なんとかしてやらないと……!) 【あせりのある媚びた声で】 「ま……まってほしいのです! お、おじさま! な、なにを、って……その、えっと……  と、とにかく、その子達に手を出すのは、ちょっと、その、まってほしいのです……知り合いなのか? って……えっと………………  そ……そう、かも、しれないのです。……い、いや! ちがうのです! そうではないのです! けっして、その! おじさまがいうようなことは……! おじさまのいうように、ア、アリカがおじさまの気を引いてる間に、盗みを働こうとしただなんて! ちがうのです!   で、でもその、何かの間違いなのです、だから……え? ア、アリカよりも、おじさまの好みの容姿のようだから……お、犯したくてたまらない、って、い、いったんですか? そ、そんな……!  用がないならもういくって、ま、まってくださいです! え、えと、その……せ、せめて、今日は、その……アリカを、買って、ください、です…………」 【暗い声で】 (ここは時間を稼ぐしかないです……一日もあれば、あいつらなら自力で脱出するかもしれないです  それに……捕まえた盗人をこいつらや警備隊の連中がどうするかなんて、想像もしたくないです……) 【あせりのある媚びた声で】 「その、も、もちろん、お安くしますです……! だからどうか、その子達には何もしないであげてください……その、警備隊の人たちにも、そう指示してほしいのです……  どんなことでも……しますから…………  ………………だ、だめ!? ど、どうして……」 【怒りのあるこえで】 (こ、こいつ……タ、タダで犯せる自分好みの女がいるのに、どうしてそれに見劣りする女を、金を払ってだいてやらなきゃいけない、だなんて、いいやがったのです……!  ……このジジイのニヤニヤとした目つき……こいつ、こうなるようにしくみやがったですね……!?  そうともしらず、アリカ達はのこのこと罠にかかっちまったってことですか……くうう……!  ……でも、このジジイは、きっと、アリカに自分から色々とさせたいのです……そういうニュアンスを、会話に含んで……自分からおねだりしろと、そういっているのです……。きっと、そういうのが好きなド変態なのです。  でも、アリカは……それに従うしかないのです。あいつらに手出しをさせないよう、うまく約束をさせながら……) 【真面目な声で】 「……わかったのです。もう、いいのです。  あなたが、アリカにどういうことをさせたいのかは、わかったのです……その通りにするのです。  だから……契約をしてほしいのです。あの子達には手を出さない、他の警備隊にも手を出させない、きっちりとギルドまで送り返す、と……。  ……このことについて、ギルドに助けを求めないように契約させても、いいのです……無事に返してくれるのなら……  だから、どうか……!  …………えっ? い、いいのですか…………な、なんですか、この首輪は?  この首輪は……これを装着したものが、あ、あなたの、体液……唾液や、せ、せいえきを体内に取り込むと、色が少しずつ黒くなっていって、最後には崩壊する……そうしたら、全員をギルドに送り返す契約になっている……? もちろん、その間はアリカ達にそちらから手出しはしないし、衣食住は約束する……ほ、ほんとうにいっているのですか? なぜ……?  ……そうですか、自分からさせたほうが良い、ということなのですね……  ……確かに、この首輪にはそういった契約の魔法があるみたいですね……アリカも、魔法を少しなら使えますからわかるです……  やるかどうか、ですか? そんなの、聞くまでもない事なのです。 (首輪をつけるおと)  やるにきまっているのです。  ……じゃあ、体を清めて来い、と? わかったのです。  では、ここでまっているのです」 (扉がしまるおと) 【決意の声で】 (……すっかり、やられちゃったみたいです。  でも……この首輪を壊すことができれば、なんとかなる……こうやって希望をあたえて、思う様に人をあやつっているのですね……わかっているのです。あいつの思うつぼだなんてことは。  でも、いまの私にはこれしか望みがないのです……だから、一生懸命やるのです。  恥ずかしいとか、くやしいとか、きもちわるいとか、全部……我慢して、やるのです。  多分……この首輪をつけられているのは、アリカだけじゃないのです。同じような子達がたくさんいるのです。  だから、手を抜いたりしてたら、一生ここから抜け出すことなんてできないのです……むしろあいつが、アリカに夢中になっちゃうくらいにやらないとだめなのです。  ……がんばる、です)