わたしは、何をするために来たのか。どうしてここに居続けるのか。  ……ああ、もうなにも、かんがえられない。  ** 「はあっ、んっ」 「まだ欲しいのか? 貪欲な女だ。ああ、そうか。今日は排卵日、だからかな」  ぶちゅんぶちゅんと、腟の中で愛液が押しつぶされる音が何度も何度も鳴らされて、わたしは何度も何度も狂ったように頭を振る。ずんずんと力強くナカを圧迫されるたびに、押し出されるように声が漏れてしまう。こらえなければと思えば思うほど、容赦なくピストンは続く。 「はっ、恐ろしい、締め付けだ。これでは、間違って、ナカに、出してしまいそう、だっ」 「やあっ」 「ふっ、嫌がるふりだけは、相変わらずうまい」  伏せた顔を枕に擦り付け、激しいピストンと淫らな声を吸収させる。聞かれないようにしなければ。それだけを何度も頭の中で流し続ける。 「んんっ、ふうっ、はあん!」 「これで満足か? まだ足りないのか?」  何をされても、どこを責められても、わたしの体は素直に喜んでしまう。何度も重ねてきた行為で、堕落と快楽のどろりとした甘さを、覚えてしまった。 「も、もうっ、だめっ、あああ」  膨れ上がりすぎた淫欲に抗えず、絶頂へと駆け昇ろうとしたところで、熱杭が引き抜かれてしまった。 「っあ……」  ひくひくとナカが震えてしまう。イキかけていたから? さっきまであったものを求めて?  ぽっかりと空白になった場所は、せつなくて苦しくて、目尻が生暖かく濡れてしまう。  乱れた髪の毛を梳くように、温かで大きな手が頭を優しく撫でていく。 「泣くほど欲しいのか。淫乱な女だ」  うつ伏せだった体をゆっくりと仰向けに倒され、覆いかぶさってきた顔を見上げても、視界はぼやけていて、彼の表情から意図を汲むことはできない。  チュッと音がして、目尻にキスが落とされた。 「ここでやめたら、どうする? やめてほしかったのだろう? それとも、目的が果たせず、困るのかな?」  髪の毛をすくっていた手のひらは頬を包み、それから首元をなぞって、胸をやんわりと掴んだ。 「選ばせてやろう、たまには」  指先で胸の尖りをキュッとつねられて、ビクンッと体が小さく跳ねる。内腿に力が入ったけれど、それを簡単に割りさくように足が入ってきて、大きく広げるようにして体を密着させた。 「んっ、あん」  ぬちぬちと、音が立ちはじめる。まだなお硬い熱杭が、蜜を溢れさせる入口をなぞるように動いている。 「さあ、どうする?」  ビリビリと鼓膜から体の芯まで貫くような低音ボイスが、甘やかに、毒を染み込ませていく。  耳たぶをジュルリと吸われ、胸の先を強くしごかれ、熱杭が意地悪く蜜穴へ分け入ってくる。 「っ、ふぅ……ん、お、おねがい、しますっ」 「それだけでよかったのか?」 「っあ、ゆ、優一郎さん、お願いっ、いじわるしないでっ」 「っふ、まだ正直に言えないのか」  ぐりっと、襞を掻くように熱杭が埋め込まれて、声にならない悲鳴を上げてしまった。  奥まで穿つ杭に、仰け反った体はビリビリと痺れたままかたまる。 「さあ、どうしてほしい? 私にしてほしいことが、あるだろう?」  ぐっぐっと、最奥に押し込むような動きに、また涙が滲む。この涙のわけを、考えないよう、気付かないように、しなければいけないのに。 「……お願い、優一郎さん、欲しいの、優一郎さんがっ」  大きな手のひらが両頬を包み込む。誰もがきっと欲しがるその端正な顔が、甘くほどけていく。 「よく、言えた」  ゆっくりと近付いてきた唇が優しく啄んできて、それから舌がぬるりと入り込んできて、ひとつひとつ確かめるように歯列をなぞって、そして舌を擦り合わせて。 「んんっ」  ゆっくりと動きはじめた腰に、全身の毛穴が広がるほどの快感が弾けた。  強火のまま燻っていた体は、呆気なく絶頂へと駆け昇る。  腰の動きに連動するようにキスも荒々しくなり、ふいに離れてしまった唇の端からは、お互いの欲にまみれた呼気と喘ぎ声しか漏れない。 「ううっ」  絶頂を迎えた瞬間、抜き取られてしまった。お腹に白濁を散らす優一郎さんは、なにかに苦悩するような表情で。わたしまで錯覚してしまいそうになる。  排卵日じゃなければ。いや、排卵日でも、もう。  ああ、考えちゃだめ。これ以上は。 「まだここにいればいい。君の気が済むまで、私が相手をしてあげよう」  わたしの意思なのか、貴方の意思なのか。ふたりでここに留まるのは、誰の望みなのか。